Japan's Depth - Behind Japan galacticos Figure Skating Team #6 Akio SASAKI: A Showman Prodigy
Our Japanese correspondent Aiko interviewed Akio SASAKI 佐々木彰生選手 @ Kanagawa Skating Rink 神奈川スケートリンク.
thanks to: JAPAN SPORTS for photos, SEKKA for illustrations
by AIKO SHIMAZU 島津愛子
September 3, 2012 in Higashi-Kanagawa

佐々木彰生 Akio SASAKI © Japan Sports
2011-12SP"Ninja 忍者" @ All-Japan


ジュニア時代からフィギュアスケートファンの方に愛されてきた、日本チームが誇る稀代のエンターテイナー・佐々木彰生選手。彰生さんがフレンズオンアイス初出演を終えられた頃、前々から皆さんに頂いておりましたインタビューリクエストをようやく叶えてまいりました。彰生さんの愛する「神奈川スケートリンク」でのひとときをどうぞお楽しみ下さい。
お別れに、皆さんへのビデオメッセージとプログラムを御用意しております!


JS: 昨季の全日本では、たくさんの方が彰生さんのファンになられたと思うのですが、まずはその全日本の戦評と言いますか、御自身の自己解説をお願いします。

AS: 正直、「うまく調整出来てなかった」という⋯ 向こう(大阪・なみはやドーム)に行って、練習を含めてアクセルが1回も降りられなかったんで。まず一番は、そこですね。そのアクセルの不安を拭えなくて、そのままショート・フリーと行っちゃった。
ショート
("忍者")に関しては、その中でもうまくまとめられたかな、とは思うんですけど、フリー("牛使い")のほうは何やったかもあまり憶えてない⋯ (苦笑)

JS: 「⋯いっぱい転んだ。(黙)」というFS演技後のお話でしたけれども、でも!"PAKAPAKA△MOKUBA"から、フリップは転倒でしたけど、ルッツ・2A・コレオステップと盛り返して!

AS: ハイ!

JS: ⋯Japan Skates の twitter を、全日本から自分が書き込むようになったんですけど、全日本は、自分は留守番で更新作業をしていて、現地から随時御報告を頂いてそれを「ライヴなかんじリポート」として twitter でお伝えしていて。で、宇野昌磨選手が「最近誕生日だった」という情報を記者の方に頂いたので、それをどうしてもお伝えしたくて、【昨日今日(公式練習)とたのしく踊れていた、とのことです。最近誕生日だったそうで、全日本を満喫太郎。】って書いちゃったんですよ。

AS: (笑)

JS: その「満喫太郎」っていう言葉が、「満喫太郎」慣れされていない関西以外の方にハマったらしくて、「これ、ハネてるな」と思って自分も折を見て「満喫太郎」を twitter でカブセるようにしていて。それで、佐々木彰生選手のFS後に、【なみはやのお客さんは、転倒ラッシュの中、あきおショーを満喫太郎。】ってお伝えしちゃって(笑)

AS: (笑) 全日本のショートで、お客さんがものすごい盛り上がって下さって、それが地上波でも流れて。自分がまだまだ知られていない中、たくさんの皆さんにその演技を見て頂いて。(ジャンプで)失敗してもスタンディングオベーションをして下さる方もいらっしゃって。自分のファンの方もバナーを掲げて下さったり、「彰生参上」とか(笑) ⋯そういう応援に触れて、「ジャンプ云々じゃなくて、自分の良さはショートでは見せられたかな」と思いますけど。
でも、フリーに関しては、ものすごい緊張してしまって。正直、体力が全然持ってなかったんですね、

JS: どの辺からでしょう?

AS: ジャンプが3つ終わってスピン、ステップだったんですけど、ステップで全然動けていなくて。
⋯結局、ジャンプの出来に関わらず、あのフリーの「世界観」というか、自分の中で思い描いている演技は出来なかった⋯(苦笑) かなぁ、と思いますね。
そのストレートラインステップの前半/後半で変化を見せるように作っていたのに、「メリハリ」がなかったというか。ステップの中に入っているターンとかに追われたかな、という感じがあります。「踊る」っていうよりも、決められたものをこなす、っていうような。
でも、途中からは開き直って(笑)、最後のコレオステップはまぁ動いたかな、とは思いますけど。

JS: フリーの世界観ですが、自分は「アキオと牛のウェスタンコメディ」と想っているのですが、

AS: (笑)

JS: (笑) 御本人はどういうイメージでしょう?

AS: 最初に、昨季のSPを"リベルタンゴ"にしようと思っていて、作ったんですよ!で、フリーを"牛使い"にしておもしろい方向にしよう、ということで。そしたら、ショートがいまいちうまくハマらなくて!(笑) それで、ショートを"忍者"に変えて。本当は、"忍者"のほうも("リベルタンゴ"同様)カッコイイ方向で進んでたんですけど、どうしても「斬られているイメージ」しか湧かなくて(笑) ひとつひとつのポーズはカッコイイ、キレイなもので、でも見てたらおもしろい、というものだと思うんですけど。
フリーは、最初からおもしろいものを作ろうと思ってたんで、
(牛を)こう引くところとか(振りをやって見せて下さる彰生さん)、お茶目な(笑)、

JS: (笑) ままならない感で。

AS: 衣装も、衣装なのにちょっと「ダサイ」というか(笑) 他の人は着ないような方向で行こう、と。

JS: ⋯"牛使い"は佐々木彰生選手らしい、ただ楽しいというのではなく喜怒哀楽の向こうにあるお笑い、「コミック・リリーフ(救いとしての笑い)」が感じられて。なみはやのお客さんは、ジャンプに失敗する中、踊りで皆を笑顔に出来る彰生さんに魅了されたと思います!

AS: そうかもしれないですね。ショートにしても、ミスしてもスタオベしてもらえたりとか。自分の場合は、ジャンプが良くても悪くても、ジャンプの出来に関係なく演技を評価して頂けている、それが武器だとは思っているので。

AS: 昨季は"忍者"がものすごく評価されて⋯ "牛使い"よりも"忍者"のほうが完成度が高かったと思います。今季は、それ以上のショートとフリーを用意してるんで!(笑)、一応。去年とは違うプログラムを見せられると思います。

(2011全日本のFS予定構成で、{3A-2T, 3Lz-3T, 3Lo, 3T // 3S, 3F, 3Lz-3T, 2A}という【構成表の時点でザヤック問題】、正解は、{3A-2T, 3Lz-3T, 3Lo, 3T // 3S, 3F, 3Lz-2T-2Lo, 2A}でした)


JS: 昨季のシーズン前は体作りに励まれていたそうですが、どういうことに取り組まれていましたか?

AS: 夏前から「基礎体力をつけること」をまず目標にして体力面の強化を図って、とりあえずすごい走ったり⋯ 夏場はランニング量も減らさず筋トレもしっかりやって、基本的に体幹の部分を鍛えるように。それによって、前に比べてジャンプの軸が細くなった感覚もありました。

JS: ランニングはどのくらいの距離を走られていましたか?

AS: ここ(「神奈川スケートリンク」)から家まで7,8kmあるんですけど、それを走って来て走って帰ったり。基本的に自転車で来るので、その道中を遠回りして行き来したり。それから、いつも走ってるコースがあるんですけど、それが4,5kmですかね。

JS: 腰痛に苦しまれた時期もあったそうですが、最近のコンディションはいかがでしょう?

AS: ここ最近は、滑れなくなるような怪我もなく。それは、「体を作ってきた」という成果だと思います。

JS: 東日本では、「3Aは降りられないジャンプじゃない」とおっしゃっていましたね。

AS: 去年の「(関東)サマートロフィー」でも降りて、あと、どこで降りたんだろう⋯ 東日本?何かの大会でも降りて。(: 東日本SP 3A GOE+0.60)

JS: 冬期国体のショートも!(: 転倒なし回転不足なし)

AS: 降りましたっけ?あんまり憶えてないんですけど(笑) 全日本は、まったく降りられなかったのは憶えてます(笑)

AS: で、ついこの間の「サマートロフィー(8月)」でもショートで降りて、3Lz-3Tも降りて、ノーミス出来て。点数はあまり伸びなかったんですけど、66点は出せたんで。シーズンに向けてこのペースで行けたらな、と思います。
⋯でも、やっぱり、ずっとフリーが弱いんで、もっとフリーのほうを固めていかなきゃいけないな、と。

JS: 冬期国体(1月末)は取材で練習から拝見していましたが、国体の頃よりも3Aの調子は上がっていますか?

AS: そうですね、アクセルの質自体もまったく別のようなものになってるんで!(笑) 徐々に確率とかも上がって来ていますし、いい方向に進んでいます。

JS: 国体の男子SPの前日の公式練習(SP)で、彰生さんはフリーの3Aも反復練習されてたんですけど、必ず、1本1本「投げ縄*」付で飛ばれていて。(*冒頭の3A助走中の拳を振るムーヴ。縄を投げて牛/3Aを捕まえるようなイメージの一連の振りになっている) 自分は、「あの縄、投げなかったらどのくらい決まるんだろう⋯」と思って見ていたのですが。

AS: (笑)

JS: (笑) でも、どうしても、アレありきでやられたいんだろうなぁ、って。

AS: ま(笑)、アレをやったほうが難しくは見えると思うんですけど、

JS: (笑) あんまり変わらないんですか?

AS: 変わらないというか、自分の中では、(3Aに)入る時に考え過ぎちゃうんですよ、

JS: タイミングとか。

AS: そう、そうなるとどんどん硬くなっちゃうんで。アレをやって、ポンッと入ったほうが良く飛べたり。⋯それでそうしてたのか・フリーの練習としてそれをしてたのか、どっちか分からないですけど(笑)

JS: アレ、やったほうがよかったのですね⋯

AS: 今は、やってないですけど!(笑) 曲も変えたんで。

JS: サマートロフィーではフリーに四回転を入れる予定だったのでしょうか?

AS: 四回転の練習はずっとしていて、挑戦出来る試合だったので入れるように臨んでいたんですけど、全日本までは入れないと思います。その後の試合(インカレ等)では挑戦していきたいです。


佐々木彰生 Akio SASAKI © Japan Sports
2011-12FS"牛使い A Cowboy" @ All-Japan


JS: 小さい頃の彰生さんのお話なんですけれども、フィギュアスケートはどうやって始められましたか?

AS: 「横浜駅」行きのバスがあるんですけど、そのバスがちょうどここのリンクを通るので、それで初めて知ったんですね、それで「家族で遊びに行こうか」という話になって。そうしたら、2歳上の兄がまず教室に入って。それに自分もついて来て、お兄ちゃんが教室で習っている間 滑って遊んでる、って感じで。でも、「自分も教室入りたい」ってなるじゃないですか?(笑) それが「スケート」を始めたきっかけですね。
小学校一年生の終わりの頃に、「選手としてレッスンしないか」と誘って頂いて、そこから「フィギュアスケート」をしっかりやり始めた、という形です。それまでは、ジャンプを飛ぶわけでもなく、特別なことはやらなかったので。

JS: ⋯じゃあ、彰生さんは、ずぅーっとこちらにいらっしゃるんですね?

AS: ハイ!

JS: もう、家ですね。

AS: そうですね!トイレも自分ちの次に落ち着きますからね(笑)

JS: (笑) 彰生さんは、小さい頃から御自身のプログラムについて考えられていたのでしょうか?

AS: そうですね、ずっと⋯ 全日本に出るようになる前から、人とは違う演技ではあったと思います(笑) 例えば、ちっちゃい頃使ってた"ウェストサイドストーリー"で、ジャッジの目の前のフェンスに隠れて「ピョッ」って(実演)出て来たり(笑)
(最後にこちらの演技の動画がございます)

JS: (笑)

AS: (笑) だから、今に始まった演技じゃなくて(笑) 小さい頃から。

JS: ですよね!⋯16歳で自己を確立されている"コーヒールンバ"(2007-08SP)、もっとたまげたのは、16歳でコミック・リリーフを演出されている"ロボッツ"(2007-08FS)を拝見して、なんて深遠な兄さんだと思って。深淵があるな、って。今日お会いするのが怖くって!

AS: (笑)

JS: 彰生さんはどういう恐るべきお子さんだったのでしょう?

AS: (笑) いやでも、普通の子供だったと思いますよ、結構活発でしたけど。

JS: こう⋯ ある日、「こういうのやってやるぞッ!」って覚醒されたんですかね?

AS: どうですかね、うーん。⋯比較的、「自分の周りの先輩方に個性的な人が多かった」っていうのがひとつにはあると思うんですよ。それを見ていたので、自分が特別とも思っていなかったですし。同い年で言うと、土生浩貴(慶應大学)っていう選手がいるんですけど、非常によく踊りますし、そういう中で育って来ているので。
特別、こういうダンスを習った、とかいうこともないですし。特別何かをやったからこういうプログラムになった、ということではなく、自分のこのクラブ
(神奈川FSC)の感じがそうだったので。

JS: 小さい頃は、他には何がお好きでしたか?

AS: 車が昔から好きで。バイクとか乗り物が好きでしたね。電車とかも。でも、他はこれと言って、あんまりないですね(笑)

JS: 「こういう踊りが好きだ」とかございましたか?

AS: その時その時で⋯ 小さい頃最初に見たのが長野オリンピックだったと思うんですけど、そのくらいからスケートをテレビで見るようになって、その後くらいからもう、プルシェンコが圧倒的な力だったので、「プルシェンコすごいな!カッコイイな!」と思って見てたのは憶えていますね。本田武史君の"リバーダンス"も。その時はそういう風にいろんな選手に憧れて、だんだん大きくなってくると、もう大輔君(高橋選手)がトップに出て来て、「大輔君すごいな!大輔君みたいなスケートをしたいな」と思ったり。ステファン・ランビエールの色気だったり、エマニュエル・サンデュの独創的な、なおかつ、バレエ的に筋の通ったポジション⋯ そういう、ちょっと普通とは違う、アクのあるスケーターが昔から好きだったかもしれないです。
⋯最初に長野オリンピックで見た、フィリップ・キャンデロロ選手のストレートラインステップは、当時真似して練習してましたね!(笑)

JS: "ダルタニアン"の!

AS: ハイ!キャンデロロは、見せ方がうまくて、「こういうポーズを取れば、自分は外からこう見えていて、会場はこう盛り上がる」というイメージをするのがものすごくうまいと思います。

AS: ステファン・ランビエールにはアオーレ長岡(9月15-16日)で久々に会える!と思って。ランビエールが自分の演技を見て「すごいじゃん」って言ってくれることを目標に、今いろいろと頑張っています!
(アオーレ長岡で、「良かった!」と気に入ってもらえたそうです)


JS: 恐るべき16歳のシーズン(2007-08)以降なんですけれども、不調の日々があったと思うのですが。その頃についてお聞かせ下さい。

AS: 「不調」というか⋯ "コーヒールンバ"と"ロボッツ"の時(2007-08シーズン)よりも、年々年々、技術は上がって来ていたんだけれども、例えばそのシーズン、(トリプルを)5種類降りてないと思うんですよね。「調子が良いから、今日はフリップを降りた、ループ、サウコウを降りた」とか。多分、基本的にトゥループとルッツだけに助けられて、そのシーズンにポーンッと上にあがっちゃったんで。
その次の年は、他のジャンプも降りられるようになったけれども、確実性がない中で構成に入れちゃってるから、不安要素ばっかりになってミスが多くなった、という。

JS: 構成が難しくなったんですね。

AS: でも、入れて行かないともう、勝てないんで。"コーヒールンバ"の点数なんて、全然出てないんで。

AS: あのシーズンに急にポーンッて成績が上がって、正直精神的に悩んでた部分もありました。やっぱり、「トゥループとルッツとあと2種類」とかそんな実力で世界ジュニアまで出てしまって。その時町田(樹)君は不調だったんですけど、でもそれでも「自分よりは町田君が(世界ジュニアに)出たほうがいいんじゃないか」とか、ものすごいプレッシャーもあったんです。成績が上がると、周りも「頑張って!」とか(笑)、言ってくれるじゃないですか、でも、その結果と自分の実力が比例してなかった。そこで、自分が気持ち的に負けちゃってたかもしれない、その後の2,3年は。
でも、ジュニアグランプリのチェコ大会
(2008-09シーズン)で3位に入ってるんで、あの辺りから取り戻して来ましたかね。ただ、全日本のような大きい舞台へとシーズンを進んで行くにあたって、最後まで気持ちを保てる強さがなかったかな、と。試合を重ねる度に調子が悪くなっていってたので。

JS: そこから、2010-11シーズンのオンドレイ・ネペラ・メモリアル杯で優勝されましたね。

AS: あの時は⋯ ものすごく、5コンポーネンツで評価して頂いたんですよ。フリーで70点(PCSが)出てるんで。それでも技術の面では、あの時も、正直自信はなかったかもしれないです。たまたま良かっただけで⋯(苦笑)
まぁでも、あの大会で優勝出来たのが、ほんと大きかったですね。

AS: ⋯あの時のフリーは"エレクトリカル・パレード"でしたね(笑)

JS: ミッキーの!(笑) あの曲、普通だったらお子様向けなプログラムになるけど、

AS: そうですね、あれを選んだ時も「この歳(19-20歳)でエレクトリカル・パレード使うやつ、いねぇだろう」と思って(笑)、先生と相談して決めたんで。

JS: 大人のおとぎ話みたいで、もう「クラウン(ピエロ)アクト」の域で。一人シルク・ドゥ・ソレイユですよ!

AS: (笑)

JS: ⋯16歳のシーズンから今まで、長かったですか?

AS: うーん⋯ 長かったと言えば長かったですね、やっぱり。あのシーズンに全日本ジュニアで2位に入って世界ジュニアに出られて、アイスショーにも出られて⋯メダリストオンアイス・ドリームズオンアイスと出られて。⋯言ってみれば、アイスショーというのは「日本のトップスケーター」が出る世界じゃないですか、そこを一回体験してるんで(笑)、⋯アイスショーに出られないとかそういう時期は、やっぱり悔しかったですね。「絶対あの場所に戻ってやる」と思って練習してたのに、大事な試合で成績が残せない、という。

AS: それで、もっと「自分を売り込んでいかなきゃいけない!」というか、「自分の良さを見せられる場所」を求めて、今回フレンズオンアイスの自己推薦枠で応募してみたり。そうしたらアオーレ長岡のほうも呼んで頂けることになったりして。
そういう面では、昨季は、成績はあまり良くなかったけれども、スケートファンの方々が求めるものを2つのプログラムで出せたから、こうやってアイスショーに呼んで頂けるんだな、というひとつの自信にはなっています。
あとはほんとにジャンプだけだと思ってるんで、アオーレ長岡・ブロック大会とシーズンが進んで行きますが、昨季からの成長を見せられたらな、と。


佐々木彰生 Akio SASAKI © Sekka
2010-11FS"Electrical Parade"


JS: 2009-10FS"Rodrigo y Gabriela Compilation"なんですけど、あの時期に Rodrigo y Gabriela を聴いてた日本人の方ってあまりいないんじゃないかな、と思っていて。どこで見つけられたのでしょう?

AS: 自分の振付の佐藤操先生がすごく音楽にお詳しいのと、自分も「ヴィレッジ・ヴァンガード(通称: ヴィレヴァン)」っていう雑貨屋さんでCDをよく探すんですよ。で、そこに置いてあったんですよ、確か。それで自分も知っていました。

AS: いつも、曲に関しては、先生が何十枚と(笑)、持って来てくれて、「これだ!」っていうやつを選んで。

JS: "Rodrigo y Gabriela Compilation"には、Led Zeppelin の"Stairway to Heaven"も入っていて、ギタリストトリビュートみたいな編集になっていますね!あのプログラムの曲が欲しいくらいです!

AS: (笑) 先生のおかげです。

JS: で、今季のSPは、The Prodigy 使われるんですね?

AS: "Voodoo People"です。

JS: そう、だから、琢哉さんとかぶってるんですよ!まさかのブレイクビーツ(Breakbeats)かぶり!*近藤琢哉選手のSPは Freakniks "Uncivilized World (feat. The Chemical Brothers)"

AS: あ、らしいですね〜 ⋯って、自分そんなに詳しくないんで。先生が持って来た曲なんですけど。自分が、「テクノでもないトランスでもない」曲で、

JS: それがブレイクビーツ(又は Big Beat)なんですよ!

AS: そういう、「思いっ切り、ずっと踊ってるような」曲を一回やりたい!って言って、そしたら持って来て下さって。

JS: ヒップホップダンスと共に発展してきた音楽がブレイクビーツでありヒップホップ(音楽)で、だから琢哉さんも「ヒップホップ(音楽)からブレイクビーツも聴くようになった」とおっしゃっていましたよ。近藤選手は御自身で選ばれているのですが、⋯琢哉さんのブレイクビーツは見られましたか?

AS: 見ました、見ました!この前のサマートロフィーで。

JS: 踊り的にはかぶってない、らしい⋯

AS: 全然かぶってなかったですね!

JS: 一安心!

AS: だからもう⋯ 最初、ビビッたんです!(笑)

JS: 曲が似てるから!(笑)

AS: (笑)「曲、おんなじようなのらしいよ」って聞いてたんで(笑) うわー、と思って。せっかく、こんな「人がやらないような」曲選んでんのに、こんな関東でかぶってたらやってらんねぇな!って(笑)

JS: 絶対、世界でもお二人だけですよ(笑) 最初に琢哉さんに曲名をお伺いした際に、【今季の全日本のアイスには、まさかのブレイクビーツが流れます!】って twitter で速報したくらいですから!「選曲の時点で偉業」って。

JS: 彰生さんのブレイクビーツはどんなスタイルでしょうか?

AS: 「ポッピング(Popping ヒップホップダンスのジャンルのひとつ)」が基本、⋯かな?(笑)

JS: 習いに行かれましたか?

AS: 基本的には、振付の操先生が勉強して来て下さって。

AS: 昔から先生にバレエの基礎的なものを教えて頂いたり、先生がいろんなダンスを踊って見せて下さるんです。

AS: 僕のプログラムは、ちっちゃい頃から全部先生に作って頂いていて。踊りに関しては先生の振付ですが、ステップひとつにしても相談しながら作っていくので、非常にやりやすいと思います。

JS: 今季の新プログラムについて、御自身のプレビューをお願いします。

AS: SP"Voodoo People"は、「今まで誰もやったことのない」というか、高橋大輔君が"白鳥の湖"のヒップホップver.を使われた時のようなインパクトを与えられるようにしたい!と(笑) 「こんな競技の演技は見たことがない」というものに仕上がると思ってます。
FS"Gypsy Dance"は、"コーヒールンバ"じゃないですけど、ほんとにカッコイイ踊りで情熱的なプログラムに仕上がってると思うので、また、ショートとフリーで違った佐々木彰生の演技を見せられると思っています。
フリーの曲は「フラメンコ」と付いたアルバムから選んだのですが、フラメンコっぽくない。っていう感じなんですけど(笑)、曲調的には⋯フラメンコのリズムではあるんですけど、メロディーがしっかりしてるんで。キレイで情熱的なメロディーです。
踊りの種類としては、ショートとフリーでまったく違うんで、自分の中では楽しんでやれています。ショートは、踊りの部分で日々研究してやっているのと、フリーは、「大人の色気」というか⋯ そういうものをうまく出せないんで(笑)、シーズンインまでにはそれをしっかりやりたいです。


JS: この Japan's Depth シリーズの1回目は近藤琢哉選手で、その記事の中で「彰生の演技が好きで、ああいう風に出来たらな、と思います」とおっしゃっていたのですが、

AS: (笑) うれしいですね。

JS: 今日9月3日は琢哉さんのお誕生日ということもありますし、是非彰生さんからも、近藤琢哉選手評をお願いしたいのですが。

AS: 琢哉、いっこ下なんですけど、あいつもあんまり年上だと思ってないだろうし(笑)、昔からすごく仲良くしてて。練習もたまに一緒にしたり。琢哉がここに来たり、自分も大学の授業と授業の間だと神宮(明治神宮外苑アイススケート場)のほうが近いんで、靴持って神宮に行って琢哉と一緒にジャンプの練習したり。

JS: 琢哉さんは「二人共、ジャンプ飛べたらいいのになぁ」ってお話しでしたよ。

AS: 点数の大半はジャンプなんで(笑) そこで稼がないと。⋯そうやって、二人で切磋琢磨して頑張って来て。あいつが頑張ってるのも知ってるし、あいつも自分が頑張ってるのを知ってると思うんで⋯ 「二人で、最後笑おうぜ!」(笑)って感じですけど(照)

AS: あいつ、人間的にもすっごいイイヤツなんで(照) ⋯ほんと大好きです!(笑)

JS: (笑) ひねくれたところまで見通せる眼差しと、それに相反するような、まっすぐな精神性を持った方ですよね。

AS: ハイ。スケーターとしての魅力としては、個性的な演技をするんですけど、⋯あいつの演技を見て、気持ち的にほっとする、っていうか⋯ なんて言うんだろう⋯ 「演技から人の良さが出ている」というか。そういうのは、「あいつすごいな!」って思います。

☞ 近藤琢哉選手 2011年6月のインタビュー


JS: 2月に、ここ神奈川スケートリンクで"コーヒールンバ 2012"を披露されましたが、私はそれをどうしても見たくて!でもその時、自分は四大陸選手権の記事作成で馬車馬のように頑張ろうと思ってたので、twitter で【自分は記事に馬車馬りますので、神様、どうかお願いします。: 明日の神奈川スケートリンクでの佐々木彰生選手の「コーヒールンバ」を、多角的に映し録って下さって、それをどこぞのTube等にルンバして下さる妖精さんがたくさんいらっしゃいますように。】ってお願いして!

AS: ⋯(笑)

JS: そしたら、なな・なんと!どなたかアップロードして下さってて!(akio sasakiで検索) しかも、その動画で、彰生さんの魂が弾ける箇所のメインどころ(1:27-33辺り)が真正面で抜かれてて!twitter で【神様、妖精さま、本当にありがとうございました。】ってお礼をお伝えしたんですけど、

AS: ⋯(笑)

JS: アップロードされた方、彰生さんだったんですよ!(笑)

AS: (笑) そうです。自分で上げた、というか、自分は載せ方が分からないので後輩に頼んで上げてもらって(笑)

JS: 「ファンサービス」の一環だったのでしょうか?

AS: ひとつには、せっかくやるんだったらいろんな方に見て頂ければ、というのもありますし、もうひとつは、「自分の演技を見たい」というのがあるんですよ。「確認したい」というか。だから、YouTubeとかに誰かが自分の演技をアップしてくれると、非常にうれしいんです、選手としたら!(笑)

JS: 5年後の"コーヒールンバ"は変わりましたか?

AS: 基本的にはまったく同じことをやって、でもところどころ変わっていて。ジャンプでも、今やるとしたらルッツ(3Lz-3T)・フリップ(step-タノ3F)・アクセル(2A)だろうと思って。ステップの途中、「ロンデール」っていう足を上げるところ(1:35辺り)を入れたのは、その時「大輔君のロンデールがカッコイイ!」っていう話を先生としていて。「じゃあ入れてみよう!」って。

JS: 当たり前ですが、2007と2012では彰生さんの姿形が違うし、振りの手数は同じでも、"ま"や関節の使われ方が違っていて、踊りの描写力が増している!とお見受けしましたが、御自身に感じられる変化はございましたか?

AS: ステップとかは、今やると簡単なものだったりするので(笑) あとは、歳を重ねて大人っぽさが増してるんじゃないかなぁ、と(笑)

AS: でも、しっかりとやり込んだ演技ではなかったので(苦笑) 自分の中でも前の演技の印象がすごく強いんで、それ以上のものが出来たかどうかはよく分からないんですけど、個々の技術は上達していると思います。

JS: ハタから見ている分には、魂が弾けっぱなしの16歳、から、抑揚を生み出す21歳のコーヒールンバだなぁ、と。

AS: (笑) そう感じて頂けたなら成功ですね!(笑)

JS: どちらも違った魅力で、甲乙付け難いです!(笑)

JS: "コーヒールンバ 2012"の実現までの経緯をお願いします。

AS: シーズンが終わって、リンクの模範演技をお願いされたんですけど、バイト中に踊らなくちゃいけなかったんですね、そのバイトは、「貸し靴所」ってあるんですけど、あそこで貸し靴を出してて、

JS: !!⋯彰生さんが!?

AS: (笑) ハイ。このリンクでバイトもさせて頂いていて。

AS: で、"忍者"の衣装って着るのが大変なんですよ、パーツが分かれてて⋯ で、「めんどくさい」と(笑) でもだからと言ってフリーを踊るほど元気はないんで(笑) 「じゃあ昔のやれば」っていうことになって、で、やはり一番印象に残ってたのが"コーヒールンバ"だったんで、「久々にやります」ということになり。お遊びだったんですけどね(笑)

JS: 5年越しの"コーヒールンバ"に何か意味があったほうが、ファンの方にはうれしかったでしょうけどね(笑) 彰生さんには、昔からのファンの方が大勢いらっしゃいますから!

AS: そうですね(笑) ⋯うれしいことに。そんなに成績残せてないのに!今回のフレンズオンアイスも、ファンの方に「千秋楽に出して」と言って頂いて、最後の日に昼公演夜公演と両方滑ることが出来たり。(自己推薦枠のため出演者発表がなかったところ)大きなお花が届いていたり。全日本でも、おっきい手裏剣を投げて下さったり、

JS: フリーのキスクラでツノをもらった彰生さんが、あきおトナカイと化して、MVP選手みたいにおっきい車のカギ抱えてましたよ!

AS: そう(笑) 「車好き」とか⋯ そういう風に自分について調べて下さって、自分のことを考えて下さるのはものすごくうれしいです。
「模範演技」というのは、一般のお客さんに、リンクで練習しているスケーターが演技をお見せするというちょっとした機会なんですけど、たくさんのファンの方に来て頂きました。ファンの皆さんには本当に感謝しています。


佐々木彰生 Akio SASAKI © Sekka
SP"Coffee Rumba 2012" @ Kanagawa Skating Rink


JS: 昨季の冬期国体で、大会期間中の個別取材として、彰生さん(チーム神奈川)のインタビューは時間的な調整がつかなかったのですが、チーム東京の近藤琢哉選手中村健人選手にお話をお伺い出来まして、そこで、「日本男子は、高橋・織田・小塚選手という上三人、そして羽生結弦選手、また次に分厚いコア(core)3: 町田・無良・村上選手がいて、そこへ大学生の皆さんやジュニア勢が続いている」と。それで、「近藤選手中村選手とそのコア3が違うのは、やはり練習ではないでしょうか?」ということをお聞きしたら、琢哉さんも健人さんもお二人共「そうだと思う、これから練習を増やしていく!」とお答えだったのですが、彰生さんは練習量等増やそう、と思われていますか?

AS: 他の選手がどのくらい滑ってるか分からないのですが、「量的には劣ってはいない」と思います。でも、その人達に勝たなきゃいけない、ということはその人達以上に練習しなきゃいけないわけで。
自分は、「練習環境がどう」とかではなく、ジャンプとか技術的な面で、そんなに器用で才能がある選手だとは思ってないんで⋯
このスケートブームの中、ものすごいスケート人口が増えてリンクが昔より混むようになったということはありますけど、自分も大学生になってからは自分で授業を組めるから、平日昼間にも練習することだって可能なわけですし、だから決して「練習環境が悪い」とか「練習時間が少ない」ということはないです。

AS: 自分はとにかく、「このリンクから世界に出るんだ!」ってずっと思っていて。このリンクが好きですし。
神奈川県のリンクは、今は「新横浜
(スケートセンター)」とここだけなんですけど、「横浜でスケートやってる」と言ったら「新横?」と真っ先に言われるくらい新横浜のイメージが強いので、⋯ちっちゃい頃からそれも悔しかったですし(笑)「横浜で練習してる」と言えば「神奈川(スケートリンク)で彰生君と練習してるの?」って言われるくらいになりたいな!と。

AS: で、「海外に行ったら上手くなるのか」と言われれば⋯ 例えば、「この先生からこの技術を学びたい」→だから海外に行く、と、自分もそう思うんなら行きたいですけど、「今自分がやるべきこと」というのがあると思うんで、それはここでも可能なことです!


JS: 今季大学四年生の彰生さんですが、進路についてはどうなさるのでしょう⋯

AS: とりあえず「オリンピックに出る」っていうことを目標に小さい頃からやって来てたので、もちろんソチまでは続けたいと思ってますけど、

JS: オォーッ (嬉)

AS: ⋯でも現実的に、自分の家庭環境とかいろいろ考えると、このまますんなりソチまで続けられるような環境ではないんで。本当に、「今シーズンが勝負だな」っていうのはあります。
今シーズンに結果を残せば、スポンサーさんなり支援先を積極的に見つけられる、というか、自分でも探せると思うんですけど、今のままだと、⋯もちろん、自分はどっからどう見ても「企業的に価値がない」。結果を残せてないし。やっぱり今シーズン結果を残して、堂々と(笑)、⋯御支援御協力をお願いすることが出来ればな、と思って。本当に今シーズンが勝負ですね。
今シーズン次第で「
(競技を)続けるか続けないか」とかいろいろ今後のことも考えなきゃいけないと思いますけど、とりあえず、もちろん「続ける」「オリンピックに行くんだ」という気持ちではやっています。それがソチになるのかその後になっちゃうのかよく分かんないですけど(笑) 今やることをやって、まず成績をしっかり残そう、と。

JS: ⋯本当にうれしいお言葉で。絶対皆さんよろこばれます!

AS: (笑)

JS: 競技を「続ける」のは難しいのでしょうか。

AS: スケートってものすごいお金がかかる競技なので。

JS: どのようにかかるのでしょう?

AS: とりあえず、靴関係⋯ 用具が結構高いんですよ、自分の靴だと、靴だけで8万とか9万とか、それを年間2足くらいですかね、エッジもまた何万、として⋯ あとは遠征費ですね。自分の旅費+先生の旅費、それが×何試合とありますし。それに、衣装代、練習のリンク使用料、レッスン料とかかってきます。⋯そうすると、ものすごい金額になるんですよ!

JS: スポンサーを探さないと!

AS: そうなんですよね。自分の家庭の場合は、そんなにゆとりはないので⋯(笑) 本当に必死になって探さないと、って。

JS: ⋯インターネットで、いつでもどこでもどなたにでもこの記事をお届けしますので!

AS: (笑)「支援して下さる方は、こちらまで(テレビショッピングみたいに電話番号のテロップを指し示す仕草)」って感じで(笑)

JS: (笑)「0120-神奈川スケートリンク」まで!

JS: ⋯自分は、「かしこい人」というのは「何が大切か」を分かっている人だ、と思っていて。それが彰生さんかな、って。「何が大切か」分かっているから、御家庭のことも深慮されながら成長されて来たのかな、と想っているのですが。今の彰生さんの、周りの皆さんへの想いをお願いします。

AS: 小さい頃から母親が働いて、そのお金でスケートをやらせてくれて、で⋯ (笑顔で話される彰生さん)こんな長い間そうやって支えてもらって、スケートが出来てるんで。それに、自分の先生達にも、公私に渡ってものすごく犠牲を払って自分のことを見てもらっていたり。だから⋯ 「このままじゃ終われない」。⋯っていうのもありますし(笑)

AS: 母親も車が結構好きで「いつかは(トヨタ自動車の)クラウン!」ってずっと二人で言っていて(笑) でも、自分のせいで軽(自動車)になっちゃったんですね(笑)、だから、とりあえずクラウンを買ってあげなきゃいけない!っていうのもありますし(笑) ⋯結果を出して、いろいろ返さないと!っていう(笑)

JS: 競技引退後の進路として考えられていることはございますか?

AS: 具体的にはあまり考えてないですが、将来的には「スケートのコーチになりたいな」っていうのがあるんですよ。自分の二人の先生に出会えて、その二人の先生に見てもらえたからこそ、こうやって今自分が夢を見られている、スケートでの夢を見させてもらっているので。


佐々木彰生 Akio SASAKI © Japan Sports
2012-13SP"Voodoo People" @ 2012 Friends On Ice


JS: 最後に、皆さんへのメッセージをお願いします!

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佐々木彰生 Akio SASAKI © Japan Skates

► Akio SASAKI 佐々木彰生選手 @ Kanagawa Skating Rink 神奈川スケートリンク on September 3, 2012


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