thanks to: JAPAN SPORTS for their whole-hearted works on photos
Pigeon Post - SAKIKO USAMI 宇佐見咲子: projection, interview, text, illustration, photos, video|AIKO SHIMAZU 島津愛子: projection, edit, design
November 8, 2015 in Osaka
Satoko MIYAHARA @ Kansai University Ice Arena
14-15シーズン、全日本選手権を制し、シニア移行して初めての世界選手権で見事銀メダル。15-16シーズンも素晴らしいスタートを切り出場試合全てで表彰台。グランプリシリーズ開幕戦のスケートアメリカでもメダルを胸に輝かせた後の11月8日、既にNHK杯へと向かって練習に取り組まれていた貴重な時間を割いて、宮原知子選手がインタビューに応じて下さいました。
終始柔らかく湛えられた宮原選手の微笑みを思い浮かべながらお読み頂ければと思います。
SM: 宮原知子選手
PP: インタビュー/テキスト Pigeon Post 宇佐見咲子
PP: まず、スケートアメリカの表彰台おめでとうございます。
SM: ありがとうございます。
PP: USインターナショナルクラッシック、ジャパンオープン、スケートアメリカと、シーズン序盤から素晴らしい演技で完成度が凄く高かったです。どのような思いで今シーズンを迎えられていますか?
SM: 毎年同じように、毎回の試合をきっちり、自分の出来ることをこなすようにトライしています。
PP: 今シーズンのSP"Firedance"の選曲の経緯をお聞かせ下さい。
SM: 先にFSの"ため息"を決めて、それからSPを作ることになったので、FSとは全く違う種類の曲にしたいということで、この曲を選びました。
PP: "Firedance"というのはスパニッシュギターのフラメンコですが、ケルト音楽の「リバーダンス」の中の1曲となっていますね。調べたところ、昔、ケルトの王国はスペインの方にまで広がっていてそこからフラメンコが生まれたという説があるそうで。「いろんな文化が繋がっている」というイメージがある曲を日本人の宮原選手が滑られるということに深い意味を感じるのですが、振付のトム・ディクソンさんから何か「こういう風に滑って欲しい」というような願いはありましたか?
SM: キビキビしているけど明るい曲なので、「笑顔が絶対必要」と言われて、あとは、メリハリとか、強い感情とか、燃えるような情熱みたいなものも必要だと言われました。
PP: 凄く情熱を感じるプログラムで。宮原選手は静かに情熱を燃やされるタイプですよね。
SM: そう⋯ですね(恥ずかしそうな微笑み)。
PP: それをここでは爆発させるように表現されてると思うのですけども、ご自身で演じられていて、ステップなど細かいニュアンスで感情を表現される時に高揚感はありますか?
SM: ステップはSPの中でもとても好きな部分なので、ステップを踏んでいて凄く楽しいです。
PP: 「観(見)る者全員虜にしてやる!」という表情もありますね。"ポエタ"(2013-14FS)も素晴らしかったです。フラメンコ、凄くお似合いだと思います。改めて、このプログラムを宮原選手からご紹介頂いて宜しいですか?
SM: SPは、強い曲で、強い女性を表現出来ればと思っています。今まであまり滑ったことのないような種類なので、「こういうジャンルも自分は出来ます」というのを、観ている方に伝えたいと思っています。
2015-16SP"Firedance" @ 2015 Skate America
PP: FS"ため息"は、フランツ・リストの美しい旋律を巧みに表現されていて、トランジションも昨シーズンより多く、ステップも複雑に入れていらっしゃいますよね。
SM: はい。
PP: そして、表情もビックリするくらい大人になられていて。振付のローリー・ニコルさんからどのようなアドバイスを受けられましたか?
SM: そうですね、「曲をよく聴く」ということと、あと、このFSのテーマが「初恋」なので、FSの演技をしている時に、必ずどこかに好きになった男性の姿をイメージして滑るようにするともっと表現しやすくなるということを教えて頂きました。
PP: 以前、「どこに男の子がいるかを感じながら見て下さい」と仰っていましたね。
SM: はい。
PP: 素敵ですよね。1本の素敵な洋画を観終わった気持ちになります。
SM: あっ(頷き)。ありがとうございます。
PP: 衣装を、シーズンインする前のアイスショーの時と競技の時で替えられたのですけど、元から違う風に作られていたのですか?
SM: そうです、あの、元々2つのイメージがあって⋯衣装を作って下さる方のイメージと、ローリー先生が「こういう風にして欲しい」というイメージと2つありました。今シーズン始めのほうにたくさんショーにも出させて頂いたので、「せっかくだから2つ作ろう」っていうことで、両方作りました。
PP: 淡い色のショーでの衣装も、濃い色の競技での衣装も、どちらも素敵ですね。
SM: ありがとうございます。
PP: ダブルアクセルからのトリプルトゥループのコンビネーションが2回入っていて大変だと思うのですが、とても綺麗に跳ばれていて。FSのジャンプ構成は、スケートアメリカで跳ばれたものが今のベストだと考えられていますか?
SM: ありがとうございます。そう⋯ですね、3回転‐3回転のコンビネーションを入れる構成も練習はしているので、その時の試合ごとの調子によって決めることにしています。
PP: 今現在、ご自分をどのような選手だと捉えていらっしゃいますか?
SM: そう⋯ですね、うー⋯ん、試合では、まあ、凄く大きなミスというのはあんまりしないんですけど、やっぱりまだ練習のほうが良い演技というか、良いジャンプが跳べるので、もっとこう⋯緊張に負けないというか、もっと試合で「自分の演技」を出せたらいいなと思っているので、まだ改善する点はあるかなと思ってます。
PP: 通し練習は今も変わらず、1日何回も行っていらっしゃいますか?
SM: はい。
PP: 凄く体力おありですよね。
SM: (微笑み)そうですね。
PP: 宮原選手のスケーティングそのものにも凄く感動するんです。"戦場のメリークリスマス"(2013-14SP)の冒頭のステップなど、今見ても涙の池が出来るくらい感動するんですけど、あの綺麗なスケーティング自体にはどのような想いを込められていますか?
SM: スケーティングは凄く色んな先生から⋯海外の先生からも習ったりして、そういう習ったことを大事にきっちり出来るようにしています。滑らかに、こう、スピードは出ているけれどもあんまり強く力で押してるように見えないように、自然に滑れるように気を付けています。
PP: 今シーズンのエキシビション"Pennies from Heaven"での、ジェフリー・バトルさんとの初めての作品創りはどのような感じでしたか?
SM: ジェフリー・バトル先生ご自身が踊るのが凄く上手で、もう、見るだけで勉強になったので楽しかったです。
PP: 「雨の中も楽しんでしまう!」という明るい表情をとても出されてて、あの辺りもバトルさんの指導などがあったのですか?
SM: はい、そうです。あの⋯「楽しく軽やかに滑るように」と言われました。
PP: 本当に全部、プログラムごとに違う顔を出されてて凄い、と思います。
SM: ありがとうございます(微笑み)。
PP: ステファン・ランビエールさんが振付されたもうひとつのエキシビションの"翼をください"、こちらは宮原選手の選曲だとお聞きしましたが。
SM: そうです、あの、日本語だとあまりにもちょっと分かりやす過ぎるというか。
PP: 一部だけ日本語が入っているんですよね。
SM: はい、なので英語版で、でもちょっと「あ、この曲知ってるな」みたいな、そういう「日本人の方がすぐ分かってくれるような曲で滑るのはどう?」ということで、先生と話してこの曲がいいかなと思って。
PP: 日本人の心も大事にされてるのですね。
SM: はい。
PP: スケートアメリカのエキシビションで宇野昌磨選手が宮原選手のコールを担当されていましたが、あれはどうでしたか?
SM: ふふっ(笑)
PP: (宇野選手の持っている紙が透けていて)「シー イズ ⋯」ってカタカナで書いてありましたけど(笑)
SM: (笑) そうです(笑) なんか、急に昌磨君も言われたみたいで(笑)
PP: あっ、そうなんですか(笑)!
SM: あの、凄い、何か⋯面白かったです(笑)
PP: 笑えて滑れないみたいな(笑)(注:さすがの宮原選手なのでそうはなりませんでしたが)
SM: (笑)
Satoko MIYAHARA @ Kansai University Ice Arena
PP: 振り返りの質問になりますが、4歳から始められて、「フィギュアスケートを極める」という道を選ばれたきっかけは何でしたか?
SM: そうですね、ずっとスケートが好きで、楽しくて続けて来ました。実際に「いつからか」と聞かれれば、「気付けば」という感じなんですけど。自然にそうなっていました。小学3年生の時に初めて国際大会に出て、その時ぐらいから「国際大会に出たい!」というのは凄く思うようになりました。
PP: 2015年世界選手権で銀メダルを獲られて。あの時はとても緊張されましたか?
SM: そうですね⋯。
PP: シニアに移行されて初めての世界選手権で、パーソナルベストを更新されての銀メダル。どう緊張を乗り越えて戦いに挑まれたのですか?
SM: その時は、リンクが自分に合っていたというか。滑りやすくて。あの、もう、気持ちもその調子の良い勢いのまま行けたので。
PP: 会場とフィーリングが合ったということですか?「この会場なら行ける!」というか。
SM: そうですね。良い緊張感を持って滑ることが出来た、という感じがします。
PP: あの時の"ミス・サイゴン"、マスターピースとして語り継がれると思います。
SM: ありがとうございます(笑顔)。
PP: 現在の女子シングルの全体の流れをどのように見ていらっしゃいますか?トリプルアクセルを跳ぶ選手も増えたりして。
SM: はい。だんだんレベルも上がって来てると思いますし、海外の選手も日本の選手も皆凄く上手というか本当にレベルが高いので、自分も負けていられないなという感じです。
PP: きっとベスト・プログラムをお聞きするなら今季の作品だと思いますので、これまでの競技人生のベスト・パフォーマンスをお伺いしても宜しいですか?
SM: 2015年世界選手権のSP("魔笛")です。2014年全日本選手権も良かったかなと思います。
PP: ご自身の感情とかも、全部入れられた感じでしたか?
SM: そうですね、次のジャンプのことをあんまり考え過ぎず、自然に滑れた感じです。ジャンプも自然に気持ちよく入りました。
PP: この15-16シーズンを、どのような目標を持って過ごされたいですか?
SM: 先シーズンより、技術的にもそして表現面においても、観客の方や(TVで)見ている方に「上手くなったな」と思って頂けるように滑りたいのと、あとは「自分のベスト」をしっかりと出せるようにしたいです。
PP: あまりピーキングとかは考えていらっしゃらないですね?
SM: ピーキング⋯あんまり、考えたことはないですね。毎回、きっちり出来たらそれが一番なので。
PP: 演技からも伝わります。では最後に、将来の夢や希望を教えて頂いても宜しいですか?
SM: 将来は、やはりオリンピックには絶対行きたいので、「夢」というよりかは「目標」として考えたほうがいいのかなと思うんですけど。オリンピックでメダルを獲れるように頑張りたいです。
PP: 最後に、ファンの皆さんにメッセージをお願いします。
☞ Satoko MIYAHARA 宮原知子選手 @ Kansai University Ice Arena 関西大学アイスアリーナ on November 8, 2015
取材後記
約束の時間、関西大学アイスアリーナクラブハウス。受付にて控えめな気配をふと傍に感じて振り返ると、とても小柄で可愛らしい少女が微笑みを浮かべて立っていました。彼女が身に着けているのは、日本代表公式サプライヤーであるミズノのジャージ。そして何よりも、テレビでさえ一度見たら忘れ難くなる大きな瞳。間違いありません、宮原知子選手です。
目の当たりにした華奢さに、「こんなに小さな身体で、宮原選手はあの大きく力強い表現を生み出しているのだ」と考えると、彼女が今まで見せて来られた演技の数々がさらに途轍もないことに思え、その瞬間既に感動を禁じ得ませんでした。
宮原選手はとても表情豊かに、次々と答えて下さいました。謙虚な雰囲気の中にも負けず嫌いな芯の強さがあり、どの質問にもにこやかに応対して下さいました。トップアスリートの育まれた精神性の高さに、改めて頭が下がる思いでした。(宇佐見咲子)