Pigeon Post - OKKO THE PIGEON GUILLEMOT 海鳩オッコ: projection, interview, edit, text|AIKO SHIMAZU 島津愛子: projection, interview, edit, design|Pigeon Post 記者チーム: projection, interview, text
thanks to: NORAYA ノラヤ (NAHO YAMAMOTO) for our "beloved" green pigeon
September 2, 2016 in Chicago, USA
L Ryo SHIBATA/Narumi TAKAHASI R
@ Fox Valley Ice Arena
►►► 美しきペアが、出会うまで。
2016年5月に高橋成美選手と柴田嶺選手のペア結成が発表されました。柴田選手の現役復帰、そしてペア初挑戦は日本中のスケートファンを驚かせました。注目のお二人のインタビュー前半では、気になるペア結成までの経緯や柴田選手のプロスケーターとしての生活について伺いました。
(以下、敬称略)
高橋: 高橋成美選手(2012年世界選手権で日本のペア選手として初めての銅メダルを獲得。24歳)
柴田: 柴田嶺選手(2002年全日本ジュニア選手権優勝、ペアに転向し7シーズンぶりに現役復帰。29歳)
► 「美しいライン」を極めることを目指し、ペア結成へ
——まず、結成の経緯からお聞かせ下さい。
高橋: 私は元々シカゴ(Fox Valley Ice Arena)で練習をしていて、パートナーを探してたんですけど、コーチであるステファニア(ステファニア・ベルトン)が、私の滑りを見ながら「この世の中に、ナルの綺麗なラインに合うパートナーが存在しないかな」って言っていたんです。それで、綺麗なラインといえば柴田嶺くんだったから「柴田嶺って人がいるよ」って、⋯ただ嶺くんも引退しているから冗談半分で言ったんです。そうしたら「今すぐメッセージしなさい」って言われて。「ダメだろうな」と思いつつも、勇気出して嶺くんに「ペアで一緒に滑らない?」ってメッセージしたのがきっかけでした。
——その高橋選手からのメッセージが届いた時、柴田選手はどのように思われましたか?
柴田: 複雑だったんですけど⋯。そもそもナルちゃんと知り合ったきっかけも偶然みたいなものでした。ずっと選手として知ってはいたんですけど、話したことはなかったんです。僕は去年の今頃に「Hot Ice」というイギリスのアイスショー(6月〜9月開催のイギリス国内公演)に出演していて、そこで(共演者として)知り合ったアメリカ人の女の子の家に、ナルちゃんがホームステイしていたんですよ。そこのお母さんがイギリスのショーを見に来て、DVDを買って帰って、そのDVDを見たら僕が出ていたので、ナルちゃんがフェイスブックで初めて連絡をくれた、というのが話すきっかけになりました。その時は全然ペアを組むということではなくて、「お互いがんばろうね!」という感じで、ただ単にフェイスブックで繋がったというだけだったんですけど。
柴田: そして今年の3月、僕がショーとショーの間にドイツから帰国している時に、ナルちゃんから「ペアをやらない?」という連絡が来ました。連絡をもらう前は、ペアをやることはまったく考えていなかったです。メッセージが来た時も、ゼロからのスタートだったので「どうしよう」と考えていました。ショーで女の子と一緒に滑るのは経験したこともあったんですけど、リフトは腰までしか抱えて滑ったことはなかったですし。でも、興味がないことはなかったので、「ちょっと時間もらえる?」と言って。
——決心したのは何がきっかけでしたか?
柴田: 友達や家族に相談したことですね。友達からは「なんでやらない理由があるの?」と言われました。家族は正直心配もしてて、年齢も年齢だったので「大丈夫?」と言われました。やはり、お金もかかることなので、資金面も含めて親はいろいろ心配してたんですけど、周りのスケーターの友達は後押ししてくれる感じでした。
——主にはどなたに相談されたのでしょう。
柴田: いろいろな方に相談したんですけど、一番相談に乗ってもらったのは、明治大学の後輩の望月梨早です。梨早は「Hot Ice」でも、ドイツ中心の欧州ツアーのアイスショー「Holiday on Ice」でも一緒だったんです。僕は元々シチズン(シチズンプラザ)で滑っていて、梨早は神宮(明治神宮外苑アイススケート場)だったんですけど、関東のスケーターは皆仲良くしてました。
柴田: 彼女と同じぐらい相談に乗ってもらったのは、宝塚歌劇団さんの演出家助手の町田菜花です。大学で知り合って、家族ぐるみで仲良くしてもらっています。東京滞在時(柴田選手宅は北海道・釧路)には彼女の実家で過ごさせてもらって、お母様にもお祖母様にもお世話になっているんです。彼女には、スケートとは別の分野の、違った角度の視点で「(挑戦を)どう思うか?」とか話してもらいました。
柴田: ペアを組むにも、トライアウトで試しにいろいろやってみて、本格的な決断はその後だったので、とりあえず「やるかやらないかは別として、トライアウトだけやってみるね!」と4月初めにシカゴに来ました。
——そして、トライアウト。滑った感覚はいかがでしたか?
高橋: 滑った感覚はすごく合っていました。お互い意識しなくても同じ動きをしてたり⋯特にサイドバイサイドスピンは合わせるのが大変なんですけど、そこまで苦労せずにシュッと合ってしまって、「これはすごい合ってるね」って。バッククロスの時の膝を曲げるリズムの間隔もまったく一緒だったので、スピードがすぐ出ましたし、スパイラルを一緒にやって、それがすごく綺麗だったのが一番感動しました。
柴田: 僕はペアがどういうものかも分かっていなかったので、トライアウトでは、それが良いのか悪いのかも分からないまま「あれやってみて」「これやってみて」と言われたことを黙々とこなしていた感じでした。でも、ナルちゃんとの性格的なフィーリングの部分はすごく合っていました。初めて会った感じがしなくて、気を遣わなくてよかったので、気持ち的に「一緒にいて楽だな」と思っていました。それから、ナルちゃんのポジションがすごく綺麗なことに感動して。その時はまだリフトも初めてで、先生に支えられながらだったので、綺麗にリフト出来ているかどうかも分からなかったんですけど。後で動画で見て、(高橋選手の演技は)「やっぱり綺麗だな」と思いました。
柴田: 3〜4日トライアウトした後、帰国してお互いに考える期間を取り、5月にペア結成を決めてシカゴに来ました。
——ペア結成の一番の決め手は何でしたか?
高橋: トライアウトの時はすごく合ってて、日本に帰ってからは友達として本当に仲良くなったので、会ったりお茶飲んだりして、すごく仲良くなりました。大親友になりました!
柴田: 仲良くなったのは1つの決め手です。あと僕にはもう1つ、4年前ぐらいにもオファーがあった、ということもありました。当時、僕は大学に通いながら、赤坂サカスでショーに出演したり一般の方に指導させてもらったりしていたんです(赤坂サカスリンク営業期間中、スケート教室が設けられる)。そこで連盟の方と滑る機会があって、「ペアやらないか?」と、ナルちゃんがパートナーを探していることを聞きました。ただその時はまだ学校もありましたし、海外のショーに出る前で、人と一緒に滑ることもあまりなかったので、その時点ではやる気にならなくて、というか。今回は、学校も卒業して、ショーとショーの間だったので考える期間も十分にあって、「逆に、やらない理由もないかな」と。
高橋: ペアを組むのが決まった時は、飛び上がるほど嬉しかったです!
► 過密日程とバス移動でヘトヘト、海外ショースケーター事情
——お話をお聞きしていると、柴田選手は、海外でのアイスショー出演の経験が現在に大きく影響されているように窺えます。プロスケーターとして活躍されていた、海外のアイスショーでの日々について、少し教えて頂けますか。
柴田: 僕が出演していたショーのうち、「Holiday on Ice」に関しては、期間は短くて4ヶ月から長くて7ヶ月ぐらいです。オランダでリハーサルがあり、ドイツを中心に欧州各国を巡ります。1週間ごとに街が変わり、荷物を持ってバスで移動というのが基本です。そのバス移動も長い時では13時間になります。
高橋: すごいですよね。
柴田: 「Holiday on Ice」のイギリス公演に行った時は、ドイツからフランスに行って、フランスの港から船に乗って、どこかの街で1泊してという感じだったので、20何時間かかって移動しました。移動で皆疲れちゃうんです。ショー自体も多い日で1日3回公演で、多い時は「6パック」って言って、3回公演が2日続きます。その後は皆、「うわー」って感じで(笑)
——移動だけでなく、公演も過酷ですね⋯!
柴田: その間の生活もホテル住まいになって、部屋も2人でシェアします。ホテルに朝食はついているんですけど、それ以外の食事は外食になっちゃったりとか。でも、皆仲良くて家族みたいな感じになります。
——演目にも、海外ならではのものがあるのでしょうか。
柴田: 個人のプログラム以外に群舞もあり、そこで学んだことが多かったです。いろんなジャンルの音楽で滑らないといけないので。ワルツ、ヒップホップ、クラブミュージック、クラシック、サンバだったり。「出来ない」とか言ってられないんです、やらないとクビになっちゃうので(笑) 各公演後には"correction(修正)"と言って、「ここがダメだった」とか「ここが良かった」とか評価を受けます。「つま先が汚い」とかそういうことまで逐一言われます。僕は元々笑顔で滑るのが苦手だったんですけど、公演をやってきて、笑顔で滑ることに慣れました(笑)
高橋: 今は常に笑顔で(笑)
——そのプロスケーターとしての経験から得られたのはどんなことでしょうか。
柴田: ショーには毎回お客さんがいらっしゃって、そのお客さんのために滑ります。競技者としてやっていた時は、『自分の技をどれだけ決めるか』という意識の方が頭の中で強かったんですけど、ショーでは、もう技とかよりも『どれだけ表現をしてお客さんに伝えるか』というのがメインなので、そこでショーマンシップを学んだと思います。
► 出会うべくして出会った「チーム・シカゴ」
——高橋選手は、ペア結成前にはどのような練習をされていましたか。
高橋: 1人でやっていたのは、パートナーがいなくても『自分のスキルを高めること』。個人として上手くなるようにという練習をしていました。スケーティングスキルであったり、ジャンプやスピンであったり。バレエもその期間一生懸命やりました。あとは、パートナーはいないんですけど、バレエのバーを使ってリフトのポジションやデススパイラルのポジションを練習したりもしました。
——あの細いものに乗られていたのですね!それでは、リフトのポジションがさらに美しくなっていますね。
高橋: はい!そうなれるようにがんばりました。
——今シカゴを練習拠点にされていますが、高橋選手がシカゴを選ばれた経緯についてお教え下さい。
高橋: 昨季、ロシア人のアレクサンドル・ザボエフ選手と短期間なんですけど組んでいて、その時からこちらで練習していました。元々試合でずっと一緒だったイタリアのステファニア・ベルトン(ベルトン/ホタレック組)が、今は私達のコーチなんですけど、彼女とすごく仲が良くて。NHK杯でも常に一緒に出ていましたし、世界選手権でも同じグループで滑ったりとか、本当に昔から彼女の滑りを見ていました。いつも心の底から踊っていて。ロックニー・ブルーベイカーもアメリカのペアスケーターなんですけど、すごい選手だなと思っていたその2人が結婚して、一緒にこちらのリンク(Fox Valley Ice Arena)でコーチングを始めたので、そこに弟子入りをしたような感じです。
——続々と、有力選手がベルトン/ブルーベイカー夫妻の下に集まり始めているようですね。
高橋: そうなんです。2人共すごい熱意のあるコーチで、技術的にも本当に素晴らしくて。年齢的にも若いコーチなので、実技での指導も受けられますし、タブレットを使った映像解析も取り入れています。だから皆集まって来て、そのチームメイトと一緒に滑っていても刺激になるし、お手本にしたり相談し合ったりして、すごく良い環境です。
柴田: ちなみになんですけど、僕もステファニアとロックニーと、ジュニア時代に一緒にグランプリ(ISUジュニアグランプリシリーズ)に出場していました。僕が16歳ぐらいから彼らのことを知っていて、彼らを元々知っているからこの環境にも結構すぐ慣れたというのもあります。
——出会うべくして、皆が出会ったといいますか。
柴田: ドラマティックですね(笑)
高橋: ドラマティックだよね。本書きたいぐらいだよね(笑)
L Rockne BRUBAKER, Ryo SHIBATA/Narumi TAKAHASI,
Stefania BERTON R @ Fox Valley Ice Arena
►►► 美しきペアが、始動する。
続いては、アメリカ・シカゴでの練習、新プログラムやアピールポイントについて伺いました。世界でも指折りの高橋選手の美しいリフトのポジションをキープする秘訣や、「リョウにはペアスケーターの血が流れている」というコーチ陣の言葉に、記者一同「ほお⋯」と唸りました。
Ryo SHIBATA/Narumi TAKAHASI @ Fox Valley Ice Arena
► ペアスケーターをつくり上げる、トレーニングと食事
——1日の練習についてお教え下さい。
高橋: リンクにいるのは、大体朝8時入りの夜6時終わりです。ウォームアップから始まって、スケートして、バレエが入ったり、またスケートして、休憩して、スケートして、オフアイストレーニングしたりして、なんだかんだで1日結構な時間リンクにいます。
——シカゴのリンクにはそれらの施設がすべて整っているのですか?
高橋: 1階にリンクがあって、2階がジムになっていて、またその奥にバレエ用のスタジオが入っています。
高橋: 昼休みは外で太陽に当たったりして、バドミントンしたり。お昼ごはんにお弁当を持っていくんですけど、ハチに狙われながら食べたりしています(笑)
一同: (笑)
高橋: ハチがすごく多いんですよ(上の写真はその広場)。
——コーチ陣のステファニア・ベルトン/ロックニー・ブルーベイカー夫妻の指導にはどんな特徴があると思われますか?
高橋: やっぱり、第一に若い先生なので、いつもスケート靴履いて自分で動いて実技で見せてくれますね。スロージャンプも実際にスローしたり、リフトも上げながら教えてくれたりするので、本当にイメージがしやすいです。タブレットの映像も使いこなして教えてくれるので、すごく助けになります。
——夫妻の指導体制はどのようになっているのでしょうか。
高橋: 2人同時のレッスンもたまにあるんですけど、大体は午前中にどちらかで午後はどちらか、みたいな。リフトやツイストは男性がメインなので、ロックニーが教えることが多いです。ステファニアはスロー(ジャンプ)や、それ以外にもプログラムのトランジション、アーティスティックな部分も指摘してくれるので、2人ですごくバランスの取れた指導をしてくれます。
——オフアイストレーニングの体作りについてお聞かせ下さい。
高橋: 私達は、「ウイダートレーニングラボ(森永製菓株式会社・ウイダーによる、栄養管理とトレーニングの両面でのアスリートサポート)」さんについてもらっていて、作って頂いたメニューを計画通りにやっています。私は、基本的には体幹トレーニングや、体のコーディネーションのトレーニングがメインです。嶺くんはパワーをつけるために重いものを持ったり⋯。
柴田: そうですね。ウェイトトレーニングで、重りを持って筋トレという感じです。
——ペア選手としての食生活について伺います。
柴田: ウイダートレーニングラボでは栄養指導もあり、「こういうものを食べた方がいい」とか教えて頂いたものを基本的には食べるようにしています。でも練習から帰って来て疲れてたりすると、そこから作るとなると大変なので、作り置きをしています。
高橋: 私への栄養指導は、「炭水化物をメインに、ミネラルとビタミンもきちんと取って、バランスの良い食事を」というのがルールです。炭水化物は、エネルギー源としてきちんと取らないといけないです。怪我の防止としては、低脂肪の乳製品を取っています。
柴田: 僕も基本的には一緒で、「バランス良く食べて下さい」というのが大前提にあります。炭水化物と主菜・副菜とか。
高橋: 不足分をプロテインで補うという感じです。
柴田: プロテインは、運動後30分以内に取るように言われています。ただし、たんぱく質も本当は食事から取る方がいいと言われているので、お肉とか、お米にも含まれていますし、出来る範囲で考えながら食べています。
高橋: アメリカはお肉も乳製品も安くて充実しています。フルーツもいっぱい食べられますし。でもうちら2人、基本的にお米命なので(笑) こちらで炊飯器を買って炊いてます。
柴田: ウイダーさんから、「ウイダーインゼリー」やプロテインとかアミノ酸のタブレットも支給されています。日本出国時にスーツケースいっぱいのウイダーの写真を撮ったので、よろしければ僕のインスタ(Instagram@ryochin.skate)で御覧下さい(笑)
——高橋選手は、パートナーがペア未経験者ということで、練習の進め方を変えられているのでしょうか?
高橋: 嶺くんとやっていると「未経験者」とやっているという感じはまったくしなくて⋯なんだろう。
柴田: いいんだよ、本当のこと言って(笑)
一同: (笑)
高橋: だって、ステファニアとロックニーが言っていたんですけど「リョウにはペアスケーターの血が流れている」って!
► 言葉にせずとも通じ合う、ペアのパートナーシップ
——ペア競技の魅力をどこに感じられていますか。
高橋: ペア競技はやっぱり、2人が本当の意味での『チーム』としてつくり上げていくものなので、出来た時の達成感だったり、励まし合って2人でよろこびを分かち合ったりとか、そういう部分でやっていてよかったって思うことはたくさんあります。
柴田: リフトやスローイングもあるので、そこがシングルよりもダイナミックで、シングルとはまた違う、おもしろい部分なのかなと思います。あと、滑ってみて改めて分かったのが、2人で滑るのは1人で滑るのとは違って難しいんです。どれだけ2人の動きが合っているかとか、どれだけ自然にスケーティングが入れ替わるかとか、そういう部分もシングルとは違っていいなと思います。
——トランジションでもユニゾンを意識しなければなりませんね。
高橋: トランジションが一番難しいんです!
柴田: そうなんですよ。
高橋: エレメンツに響くので。
柴田: トランジションがずれると、そこからすべてがずれるので。リフトのタイミングもずれて上がらなかったりとか。
——エレメンツのミスは、実はその前から始まっていることもあるんですね。
高橋: エレメンツの入りで、決まるか決まらないかっていうことも分かります。
柴田: でも、逆に合わせようとしすぎてもだめです。
高橋: そうそう。
柴田: 滑っていて思うのが、「自然に合う」のが一番。一緒に練習していくうちに勝手に、だんだんなんとなくお互いを分かっていく。手の握り具合とかで。
高橋: それ分かる~。
柴田: 「こっちに行くんだな」って、相手の動きがなんとなく分かるようになります。言わなくても、次何やるかとか、なんとなく分かる。
——パートナーシップを築ければ、それ以外のことにも取り組みやすいですね。
高橋: それあると思います。
柴田: パートナーシップの大切さは、滑っていて一番感じます。
——現在、ペアのトップ争いでは、エレメンツの難度が上がってきています。その流れの中で、それぞれのチームが目指すものは変わってくると思います。この戦況をどう見られていますか?
高橋: すごくおもしろいと思います。ペアのエレメンツのレベルが上がれば、御覧の皆さんも注目されると思うので。私達も、目標が高くなればなるほどモチベーションが上がります。それが刺激になって、自分達にとってもいいことだと思います。
——将来的にやってみたいエレメンツはありますか?
高橋: うーんどうだろう。今年じゃなくて将来ですよね?ツイストの4回転はやってみたいですね。
柴田: スローの4回転はやってみたい。
高橋: スローもやりたい!4回転結構好きですね、私達。
——ダイナミックさが違いますね。2回転から3回転でも、受ける感じはすごく違いますけれど、3回転から4回転だと別次元な感じがします!
高橋: しますします!
——お2人から、これからペア競技を目指す若い選手達に何か一言アドバイスを頂けますか。
高橋: 「ペアはお互いに思いやる心を持つことが一番大切」だから、そこを大事にして下さい。
柴田: 僕も似たような感じなんですけど、「自分が怪我しても、何かあった時に女の子を守るっていう気持ちを忘れないで」練習してほしいなと思います。
► 2人で音楽に入り込み、美しく揃ったラインで魅了するペアに
——今季のプログラムを御紹介下さい。
柴田: ショートが"タイスの瞑想曲"で、フリーがオペラ"トゥーランドット"です。今年デビューなので「皆知っている曲」で、と。
高橋: 振付師はショートがニコライ・モロゾフで、フリーはジェイミー・ワイト(Jamie Whyte 2005年イギリス選手権アイスダンスジュニア優勝)です。
——デビューシーズンにいきなり、最も難しいとされるグループ5のリフトがショートプログラムの規定となりましたが、どのようにリフトを習得されてきましたか?
柴田: もちろん最初はなかなか上げられなかったんですけど、先生に支えてもらったりして、徐々に徐々にやっていきました。力もそうなんですけど、上げるタイミングがすごく重要で、まずオフアイスでナルちゃんとたくさん練習して、ナルちゃんが跳ぶタイミングと自分が上げるタイミングを掴めたら、急に氷上でも出来るようになりました。
——リフトを上げた後、安定して支えるにはどのようなことが必要でしょうか?
柴田: 筋肉でアジャストするというか、支えている側がバランスを取らないといけません。支えながらも、滑って回転もしないといけなかったり。毎回同じになることは絶対ないので、上げている腕の筋肉とフットワークで常にバランスを取りながら、ちょっとずつちょっとずつアジャストする、みたいな。
——高橋選手の、美しいリフトのポジションをキープする秘訣をお教え下さい。
高橋: リフトは、実は男性の方がすごく大事です。男性の手の角度だったり、土台のしっかりした感じが、自分の中では60%を占めるぐらい大事だと思っています。残りの40%は、「つま先がとにかく遠くに伸びている」ように意識すること。ポジションは、頭は真上でつま先は真横、「全部遠くに引っ張られる」イメージです。それには、お尻の筋肉を鍛えたりします。
柴田: そんなコツ、教えちゃっていいの?(笑)
高橋: いいの!(笑) 理解するのと出来るのは、また違うから。
——鍛錬の賜物ということですね。それでは最後に、新シーズンに向けて、課題とアピールポイントをお願いします。
高橋: 今年の課題は、新しいチームなので1日1日を大切に、今自分達が持っている力をプログラムでどれだけ全部、「120%」出せるかということです。アピールポイントは、音楽がかかると2人ともノリが出せるので、音楽に入り込んで滑る2人の表現に注目して頂きたいです。
柴田: 今年始めたばかりなので、今練習していることをしっかりと本番でクリーンに決めることがまず1つの目標です。アピールポイントは、2人のユニゾンや揃っているラインです。それから、僕とナルちゃんのトレードマークは体の柔らかさで、振付でもその柔軟性を観てもらえたらなって思います。
——お二人の御活躍を心からお祈りしています。
柴田: 僕達、Amebaさんでブログをやっているので(「柴田嶺&高橋成美オフィシャルブログ Powered by Ameba」)、そちらもよろしければ御覧下さい。
Narumi TAKAHASI/Ryo SHIBATA @ Fox Valley Ice Arena
——最後に、ファンの皆さんにメッセージをお願いします。
☞ Narumi TAKAHASI/Ryo SHIBATA 高橋成美/柴田嶺組 in Chicago September, 2016