Pigeon Post - TAKAFUMI たかふみ: projection, interview, text, translation, photos|AIKO SHIMAZU 島津愛子: projection, translation, edit, design
thanks to: ROBIN RITOSS for splendid photos, NORAYA ノラヤ (NAHO YAMAMOTO) for our "beloved" green pigeon
December 4, 2015
昨季、ISUグランプリファイナルや欧州選手権で表彰台にのぼるなど、大活躍だったセルゲイ・ヴォロノフ選手。スケーターとして、また人間としての自分について、練習後のお時間を頂戴し語っていただきました。
SV: セルゲイ・ヴォロノフ選手
PP: インタビュー Pigeon Post たかふみ
► 決して諦めず、自分を信じて前に進んで行くしかない
ジェフリー・バトルに託し、今季は違う自分を見せたかった
PP: ロシア杯後すぐにNRW杯(ドイツ)に出場されましたが、それは予定通りだったのですか?
SV: 当初は考えていませんでしたが、取り組むべき課題もありましたので。
ショートはクリーンに滑ることができましたし、満足しています。フリーは転倒もありました。ロシア杯でも滑りこなせていなかったんですけど。
(シーズン序盤の不調は)振付の遅れや今までと違うことをやっている影響もあるかもしれませんが、決して諦めず、自分を信じて前に進んで行くしかありません。
PP: 今季に向けて強化してきたのはどんなところでしょうか。
SV: ジャンプもそうですし、スピン、滑り⋯全て万遍なく力を入れました。
PP: 今季のプログラムは、ジェフリー・バトルさんの振付ですね。
SV: 昨季のオフからジェフリーにプログラムを作ってもらいたいと思っていましたが、彼は多くの選手の振付をやっていますし、なかなか時間が取れず、プログラム作りも数日間で行いました。その中でよいプログラムをつくってもらい、感謝しています。
僕は、どのスケーターとも違う、ジェフリーのスケートに憧れていました。ジェフリーは毎回「これまでに見せたことのない姿」を見せてくれるなと、現役の頃はうらやましく思っていました。そんな彼の多彩な面が好きです。振付師としてももちろん素晴らしいです。ジェフリーはいろんなスケーターのイメチェンをしましたよね、だから僕も、と(笑) 今季は違う自分を見せたかったんです。
► 15-16シーズン|プログラム自己紹介
【SP"Butterflies and Hurricanes(by MUSE)" 振付:ジェフリー・バトル】
SV: この曲は、振付の時にジェフリーがいろいろな曲をかけていて、ふと流れてきたんです。すぐに気に入りました。歌詞も素晴らしいです。好き過ぎて、聴き始めの頃は取り憑かれたように聴いていました(笑) ジェフリーのプログラムのエレメンツは、ジャッジの位置から見映えがするようにそれぞれ配置されているんです。
SP"Butterflies and Hurricanes"
@ 2015 Cup of Russia
【FS"映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』より" 振付:ジェフリー・バトル】
SV: フリーの曲選びは難航しました。映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』の曲なのですが、映画の物語を下敷きにしたものではありません。「二面性」を見せたプログラムです。前半の速いパートでは、アメリカのギャングの世界のイメージで、辛辣な現実とそれに懸命に立ち向う姿、みたいな。そういう風にステップとかでも表現しています。後半のスローパートでは、かつての幸せや愛した人への想い、そういった哀愁を表しています。今を生きる私たちの「二面性」というか。気持ちがすさむと思い出が救いになることもありますね。
ただ、昨季のプログラムに戻すつもりでいます。結局のところ、自分は自分で、ジェフリーと同じようには滑れないということが分かったからです。
FS"Once Upon a Time in America"
@ 2015 Cup of Russia
► 我慢強く・意志固く・モチベーションを高く
「フィギュアスケートが人生の全てというわけではありません」
PP: 何か、長く現役生活を送る秘訣はありますか?
SV: 今のロシアには、プルシェンコ選手をはじめ、自分より長く選手生活を続けているスケーターもいますし、自分はただその後を追ってきただけです。
もし自分の中に何か秘訣があるとすれば、「我慢強さ」「意志の固さ」「モチベーション」の3つだと思います。
PP: 現在の男子シングルの流れをどう見られていますか。
SV: 今トップを走っているのは、間違いなく羽生結弦選手だと思っています。彼に1回でも勝ったことがあるというのは、嬉しく思います(笑) その他にも強者揃いの中で、若い選手では中国のボーヤン・ジン選手が力を出してきましたね。彼の4回転を昨年のグランプリファイナルで観ていましたから、期待していました。宇野選手も素晴らしいスケーターだと思います。ロシア国内でも、ピトキエフ選手やコリヤダ選手など、若手が伸びてきました。ジュニアでも4回転を入れないといけない時代です。男子シングル全体のレベルは、間違いなく上がっていると思います。
PP: 目指しているスケーター像についてお聞かせ下さい。
SV: スケーターというよりも、目指している人物像というのはあります。成功や幸福を掴む人間になることが目標です。幸せという点では、今でもそうかもしれません。周りに家族や支えてくれる人々がいます。もちろん、スケーターとしてより多くの種類の4回転を跳びたいという気持ちはありますが、フィギュアスケートが人生の全てというわけではありません。引退後、スケートと全くかかわりのない仕事に就く選手も多くいます。今回ロシア杯のエキシビションの解説をさせていただきましたが、解説自体が好きなので、そのような仕事も面白いですね。
► ロシア選手権に向けて
『己に克つ』
SV: 特にどこを強化する、ということはありません。他の大会と変わらない準備をしていきたいと思います。変わるのは、フリーを昨季のものに戻すことくらいです。
目標は『己に克つ』ことです。順位の目標はありません。もちろん(昨季銅メダルだった)欧州選手権や(フリーで崩れた)世界選手権へ行きたいという気持ちはあります。そのような結果も、まずは己に克つことで自ずとついてくるものだと思います。
PP: 日本のファンの皆さんにメッセージをお願いします。
Sergei VORONOV
SV: 日本のフィギュアスケートファンの方々は本当に熱心で、グランプリシリーズであれだけ超満員というのは、他のところでは見られないことだと思います。
またプレゼント、特にお手紙をくださるのは、皆さんぐらいです。お返事を出すのはなかなか難しいのですが、全部読んでいます。
僕のことを、いい結果が出ているときだけではなく、苦しいときも応援してくださり、とても感謝しています。(日本語で)「アリガトウゴザイマス」。