MACHIDA & MURA show Japan's "Core" strength
Our Japanese correspondent Aiko interviewed Tatsuki MACHIDA 町田樹選手 & Takahito MURA 無良崇人選手 @ 2012 4CC 四大陸選手権.
special thanks to: ROBIN RITOSS for superb photos
by AIKO SHIMAZU 島津愛子
February 11, 2012 in Colorado Springs USA

Tatsuki MACHIDA 町田樹 / Takahito MURA 無良崇人 © Robin Ritoss
Tatsuki MACHIDA / Takahito MURA @ 2012 4CC


☞ in English


JS: コロラドスプリングス(四大陸選手権の開催地)は「高地」ということで、標高の影響が話題に上っていることが多いのですが、実際、自分も2キロくらい走ってみて、意図しないところで急にストーンと乳酸が足に来た瞬間があって。町田選手、無良選手はいかがでしたか?

町田: 僕も、昨日(フリー)肺よりかは⋯ 体に来ましたね。

無良: 僕はもう、フリーは緊張して頭が真っ白になっちゃって、疲れもしなかった、というか⋯

町田: えー。

無良: (苦笑) 最中も疲れてない状態で、全然疲れることなく、最終的に疲れずに終わりました(笑) なによりも、「自分のイメージしている動き」と「体」が噛み合なかった、という。
他には⋯
(町田選手に:) 腕上がんなくなかった?

町田: 腕、手足に来ましたね。でも、皆同じ条件なので。

無良: ここがホームの人は別として(笑)

JS: 自分はここに来て痛めている足の筋の状態がいいので、びっくりしているんですけど、コンディション的にはどうでしたか?

町田: 僕は、怪我は今のところないので⋯

JS: シーズン序盤は怪我で苦しまれていたようですが。

町田: そうですね、でも、そんなに重い怪我ではなかったので。2,3週間くらいで治りました。試合(ネーベルホルン杯・9月21-24日)の公式練習で緊張した状態で臨んだら、アクセルのランディングで失敗してしまって、右膝と右足首をちょっと捻って⋯ 「捻挫」しました。今は大丈夫です!

無良: 僕は、体が軽い感じもしますし⋯

町田: (頷)

無良: でも、腰を元々痛めているので、気圧の変化が激しいと影響も出るのですが、それ以外は全然いいですね。


JS: 選手の皆さんは、普段は演技後や会見で試合の「感想」を求められると思うのですが、こちらでは、是非四大陸選手権の『自己解説』をお願いします!

町田&無良: ? (笑)

JS: こう臨んで、ああなって、こうだった。というような、戦評みたいな感じでお願いします。

町田: ショートはいつも通り緊張していて、5番滑走(パトリック・チャン選手の後)だったんですけど、スタート位置に着いた時、お客さんもすごくいい感じだったし、自分も「今日行けるな!」という変な自信があって(笑) 珍しいんですけど、最初から緊張することなく。やはり「ショート」ってミスが許されないものなので、いつもは2本目のジャンプ(3F-3T)が終わるくらいまで緊張しているんですけど、一昨日は最初の3Aから「絶対ミスることはない」という感じで、全部「even(落ち着いて、いつも通り)」で挑みました。3Aがキレイにハマって(GOE +2.0)、引き続き自信を保っていて⋯ 難しいな、「自己解説」(笑)

無良(&JS): (笑)

町田: ショートは、全体を通して気持ちよく、自分の伝えたいことを伝えながら滑れたかな、と思います。(国内外含めた自己ベストを更新する82.37で4位)

JS: 映像ではなかなか感じ取れないと思うのですが、特に、3F-3T(GOE +1.30)の3T・3Lz(GOE +1.30)のローテーションが、「信じられない」未曾有のキレで、会場が沸いていましたよ!

町田: (笑) エレメンツ、全部キレイでしたね。


Tatsuki MACHIDA 町田樹 © Robin Ritoss
2010-12SP"Dark Eyes" @ 2012 4CC


町田: フリーは⋯ やっぱり「緊張」で。(最終組の)「一番滑走」ということで、6分間も目一杯練習出来なくて大変だったんですけど、緊張し過ぎることはなく。でも、最初の四回転を転んでしまって、「もうミスが許されない」というプレッシャーと闘いながら、だったので。精神的にもきつかったですけど、諦めることなく「強い心」を持って出来たかな、と思います。(125.67のフリー10位で総合208.04の7位)
「四回転を入れたフリー」というのは体力を使うし、高地なのでなおさら使いましたし、まだまだ練習が必要だな、と思いました。⋯全然「自己解説」になってないですね(笑)

JS: いえいえ!

町田: (無良選手に:) 難しいわ(笑)

JS: 無良選手には、「ショートの公式練習で着氷にほとんどターンが入っていた4Tを、本番で決めた!」という自己解説からお願いします!

無良: ジャンプ全てに言えることなのですが、ここに来て、自分のイメージするローテーションと実際の体の動きがまったく合わない、という状態が続いていて。結局それが変わることなく、フリーではむしろ悪化してしまった状態で臨んでしまった、という。
ショートの冒頭の4T-3Tは、ある意味「無心」になって「いつもやっている4Tの動き」としてフッと一瞬にしてイメージしたものが、ああいった結果
(GOE +1.57)になって。

JS: 「無心」で!⋯フォーム・タイミング等 意識をせずに?

無良: 例えば、練習でどれだけ疲れていても「体が(4Tのフォーム・タイミングを)憶えている」というように。公式練習や6分間でどれだけ失敗してしまおうと、4Tに関してはあまり問題視していませんでした。
4T-3Tがきっちり決まって、3A
(+1.57)、3Lz(+1.00)にしても精神的な余裕がすごくありましたし⋯ 最後のステップの途中で引っかかってしまった!(笑) という面もあったのですが。(CiSt2 +0.36) でもそれが、「疲れ」の影響ではなく、動かそうして必死になって「もっと動こう!もっと動こう!」とした結果、足がついて来なくて変なところに引っかかった、という形だったんですけど。
ショートに関しては、「失敗してしまう」というプレッシャーが完全になかったので、本当に今シーズンで一番良いショートが出来たんじゃないかな、と思います。
(国内外含めた自己ベストを更新する83.44で2位)


Takahito MURA 無良崇人 © Robin Ritoss
2011-12SP"Red Violin" @ 2012 4CC


無良: フリーは、朝の公式練習・6分間練習・本番と、どれを取っても「自分の感覚じゃない」という⋯

JS: でも、朝の練習では、最終組の中(チャン・無良・高橋・町田・D.テン選手)で一番無良選手が4Tを決めていた、とお見受けしましたが。

町田: うん。

無良: それは「動きが たまたまハマっている」だけで。自分が「想っている」ように動けていないので、自分の中では(決まっても)全然、いいジャンプとは思っていません。
ほんっとに、朝から練習を重ねるごとに、どんどんテンションが下がってきちゃって。「テンションが下がっている」ために、「このコロラドでフリーを滑り切ることへのプレッシャー」も増して。それに加えて「動きの調子が悪い」というので、どうにも緊張感を抑え切れなかった、という。
緊張していても、いざ曲がかかって滑り出したら、ある程度吹っ切れる面もあるんですけど、今回の場合は、最後の最後まで頭が真っ白になって⋯ 「自分がどういう風にジャンプを飛んで」という解説が出来ないくらいの⋯(苦笑)フリーでした。
(133.72のフリー6位で総合217.16の5位に)

JS: お二方共、大変よく分かりました!ありがとうございます。


JS: 町田選手無良選手は今季からアメリカで練習されています。「変わる時っていうのは、向こうからやって来ない。自分が動かないと なんにも起こらない。」と自分は思っているのですが、そういった『転機』が昨季から今季にかけてお二人にあったのかな?と。

町田: やっぱり、いい成績を残そうと思ったら「運」も必要だけど、その「運」っていうのは、多分努力している人間が掴めるものだし、「自分から変わっていかないと。」周りの環境の変化や周りの力を待っていたとしたら、多分遅いし、自分が掴みたいものを掴めないと思うので。よく考えて「自分の信じた道を進む」じゃないけど⋯ 「自分から目指して」変えていかないといけないかな、と思います。

無良: まず、アメリカに来ようというきっかけのひとつとして、昨季から今季のオフの間にスケートの面で気が大分滅入っていて。今シーズンに向かっていくにつれて「なにか変わるだろう」とあまく考えていた部分もありましたが、最終的にギリギリになって「このままじゃいけないな」ということで、いろいろな先生方の勧めもあってコロラドに練習に来ることになりました。
最初のうちは「プログラムを滑りに来た」だけの感覚だったんですけど、ここで練習している選手には、パトリック・チャン選手とかジュニアのトップ選手もいて、その練習環境が自分の意識を変えさせてくれた、という部分がすごく大きかったです。
振付師のトム・ディクソンさんが本当に最後の最後まで親身になっていろいろと教えて下さったことも、「シーズンを通して何回も何回もこっちに来る!」という気持ちにさせてくれました。
「自分から動かなきゃいけない」と思うことと先生方のアシストのおかげで、全日本くらいからやっと「自分のスケート」というものがある程度完成して来ました。こっちに来たということはすごくよかったなと思っています。

JS: アメリカは皆笑顔でいいなぁ、と思っていて。日本だと、自分はへらへらしててもへらへらしてる人は見かけないんですけど、

町田&無良: (苦笑)

JS: 私はアメリカの方の笑顔がうれしくて!お二人はアメリカでの毎日はどうですか?

町田: 日本だと、周りは知っている人ばかりだし、なんか周りの目を気にして⋯ それが良い面もあるんですけど。練習で調子が悪かったりすると、周りを気にしてどつぼにはまっていっちゃう自分がいるのですが、アメリカって、個人個人が自分に集中しているから、練習でもあまり周りに目を向けない傾向にあるので。「周りを気にせず自分に集中出来る」という意味では、すごくアメリカが好きです。
私生活はまた別です。週末は土曜日にちょっと滑って、後はオフなのですが、皆で映画館に行ったりディナーに行ったり。誘ってもらってたのしくやらせてもらっています。

無良: コロラドの場合は、個人個人が集中している面もあるんですけど、逆に、パトリックが四回転を飛べば周りも沸くし、周りを気にかけて「皆でテンション上げてやって行こう!」という雰囲気があって、それは日本にはない、というか⋯ 日本でも「皆で練習しよう」という姿勢はあるのですが、やっぱり、こっちの人と日本人では大分テンションが違うので(笑)


Takahito MURA 無良崇人 © Robin Ritoss
2011-12FS"Four Seasons Tango" @ 2012 4CC


JS: 日本男子シングルには、高橋選手織田選手小塚選手という「三強」の上三人がいて、さらに羽生選手がいて、そして町田選手無良選手村上選手という分厚い三人がいて、その下には中村選手をはじめとした大学生やジュニア勢が続いています。ということで、実はこの分厚い三人が日本男子チームの「核」になっていて、村上選手含めお二人の存在が日本男子全体の強さになっているのかな、と思っているのですが。

町田: 層的にも「core(中核)」ですからね(笑) 僕らが頑張ることによって上にも下にも刺激を与えられる!⋯んですけど、その分、真ん中は大変なんです(笑) 一番大変な、(無良選手に:) ね? 立ち位置だけど、仰る通り、自分で言うのもなんだけど多分、日本選手を強くしている要因なのかな?とは思いますけどね⋯ でも、大変ですよ、立ち位置(笑)

JS: ソチオリンピックまで、その大変な立ち位置が続く、と。

無良: 日本全体で考えると、僕らは、出来るだけ「上にくっつく」「上を抜かす」。そういう風にしていくべきなのかな、という感じはします。最終的に、ソチの前の全日本で、最終グループの6人・次のグループの上位に「誰が入ってもおかしくない」、「見ている人がほんっとに興奮するような試合が出来るようにしていきたい。」高橋選手織田選手小塚選手羽生選手というトップ意識の強い人達がいて、ここに「どれだけ自分達が絡んでいけるか」ということが日本のスケート界にも刺激になると思う部分もあります。やはり、どちらかと言うとフィギュアスケートは「女子」というイメージがすごく強いので。「男子の注目度を上げる役割」ということも考えながら、僕ら皆で上を目指して行けたらいいんじゃないかな、と。

JS: 冬期国体で、下の大学生は、来季はお三方が「さらに上を行くからもっと練習しないと」って話されていましたから、既に効果が出ていますよ。

町田: (笑) 僕らにも上がいるわけですし、その上にも上がいて。

無良: 僕的には、なんですけど、僕らの上が抜けちゃうと「目標がなくなった」という感じがすごくするんです。海外を見ればさらに上はいるんですけど、日本国内の身近なトップ選手の層に出来るだけ早い段階でくっついて行けるようにしたいな、と思います。


Tatsuki MACHIDA 町田樹 © Robin Ritoss
2011-12FS"Don Quixote" @ 2012 4CC


JS: お一方ずつ別々の質問なのですが、町田選手のFS"ドン・キホーテ"では「Loveがテーマ」ということで⋯ 日本男児として、そう易々と言えないことじゃないか、と!

町田: (笑) 振付師が、「ステファン・ランビエール」さんということで。で、バレエの"ドン・キホーテ"の演目自体も「Loveがテーマ」だし、それに忠実ではないんですけど、そこから着想して作ってあるので。
僕はいつも、プログラムにテーマをつけていて⋯ そのほうが滑りやすいので。今回は「愛する人に気持ちを伝える」という。ストーリーは、最初はお互いが意識していなくて、僕は「いい子いないかな?」と探している。途中から「この子いいなぁ。」とアプローチかけて、最後はハッピーエンド、というプログラムなんですけど、それを伝えられるように、もっと曲をかけて練習していきたいと思います。

JS: こちらのお爺さんが、その物語に「ヒュー」って指笛を鳴らされていましたよ!

町田: (笑) 振付が外国の方なので、独特なのかな?と。

JS: 無良選手には3Aについてお伺いしたいのですが、私はGOEやレベル要件について書かれてある要項が大好きで!

町田&無良: ?(笑)

町田: 好きなんですか(笑)

JS: もう、トイレに貼ろう、という段階に来ています!

町田&無良: (笑)

JS: その要項のジャンプのGOE(8要素)のうちの2項目で、「高さと幅」と「エフォートレス(effortless: 簡単に行っている)」というのがあって、私は、無良選手の3Aはその2種類あるんじゃないかな、と思って拝見しているのですが。

無良: ああ⋯ ある意味、分けてるんですけど⋯ 入り方の違いもありますし。前半の間は、余力もあるので「インパクトのあるジャンプを飛ぶ」ということを意識して。後半になるとだんだん疲れてきて、(後半2本目の3Aの)さらに後のほうにもジャンプが残っているし、最後まで動き切らなければいけないという状況なので、出来るだけ力(effort)を使わないような「まとめるだけで飛ぶ」アクセル、というその2種類、と言った感じです。

JS: やっぱり、「震撼の3A」と「さり気ない3A」の2種類あるんですね!

JS: 私は、あの採点表の紙が出るのも待ち切れないんですけど、

町田&無良: (笑)

JS: あの紙がもっと世に出たら、もっと多くのスポーツファンがフィギュアスケートにはまると思うんですよ。

町田: (笑) でも、見方とかも難しいし。(ルールが)社会に浸透してないから。⋯確かに、トップ選手はあれがキレイですよ、あの紙全体が!(笑) トップ選手は、(GOEの)マイナスもないし、レベルも取れているし、キレイな紙を作ることが出来るので。それが課題ですよね、「どれだけキレイに(採点表を)しっかりまとめることが出来るか」というのが。

JS: あの紙、よく見られますか?

町田: 試合が終わった後、ですね。映像と照らし合わせて、はじめて意味を成す。「なんでこの要素にいっぱい+がついているのか」とか、要項とも照らし合わせて反省して。


JS: 最後に、今季を振り返って、また、来季に向けて、ファンの皆さんへメッセージをお願いします。
(大会規定により、おなじみのビデオメッセージが録れませんでした)

町田: いつも応援ありがとうございます。皆さんの声援やあたたかいお手紙を頂くことによって、「失敗してもまた頑張ろう」という気持ちになれます。今季はこれで終わりましたが、山あり谷ありのシーズンで、嫌なこと辛いこともたくさんあったんですけど、ファンの皆さんのおかげでこうして乗り越えて来れましたし、逆に、良い瞬間も共に味わえているので、スケートをやっていて幸せです!
来シーズンは、今シーズンの反省をちゃんと活かしながら、「自分が羽ばたけるように。」これからオフになりますが、来シーズンのための準備をして、活躍出来るように頑張りたいと思います。


Tatsuki MACHIDA 町田樹 © Robin Ritoss
2010-12SP"Dark Eyes" @ 2012 4CC


無良: コロラドのような「遠路はるばる」という場所まで応援に来て下さる方もいらっしゃって、すごくありがたいですし、観に来られない方もテレビで中継を見て下さっています。そういったファンの皆さんの応援が、「やる気」にもなりますし、逆に、めげている時には「力」になります。いつも感謝しなきゃいけないと思っています。
今シーズンは、GPSに出場していなくて、
(ISUの)B大会のほうで全日本まで転戦して来ました。プログラムに取りかかるのが遅かったので、全然仕上がってこなかったのですが、全日本ではある程度の目標を立てて、ショートは失敗してしまいましたがフリーは四回転にしてもプログラムの内容にしても「自分が出来るもの」は満足に出せたと思います。その自信とショートの反省が、今回の四大陸のショートの内容に繋がったと思います。
「自分が変わるためのきっかけ」として「コロラドに来ることになった」というところからスタートした、その時点の自分と、今四大陸を終えた自分は、意識的な面も動きにしてもジャンプにしても明らかに違います。その今の自分を「最低ベース」として考えて、来シーズンを通してもっともっと上に行けるように、またコロラドで練習を積んでいこうと思っています。来シーズンに向かって頑張ります!


Takahito MURA 無良崇人 © Robin Ritoss
2011-12EX"Neutron Star Collision" @ 2012 4CC