Pigeon Post - OKKO THE PIGEON GUILLEMOT 海鳩オッコ: projection, interview, edit, text|AIKO SHIMAZU 島津愛子: projection, interview, text, edit, design|Pigeon Post 記者チーム: projection, interview
thanks to: NORAYA ノラヤ (NAHO YAMAMOTO) for our "beloved" green pigeon
August 10, 2016 in Montreal, CANADA
L Aru TATENO/Rikako FUKASE R @ Gadbois Centre
本日、9月1日はアイスダンスジュニア日本チャンピオン・深瀬理香子/立野在組の結成記念日です。結成3シーズン目に入るお二人に、インタビュー前編では、カナダでの日々やトップアイスダンサーが集うモントリオールでの練習、世界ジュニア選手権フリー出場の目標を叶えた昨季についてお伺いしました。取材中もショーマンシップが随所に光ります。快活な深瀬選手と聡明な立野選手のかけあいにチームワークを感じながらお楽しみ下さい。
(以下、敬称略)
深瀬: 深瀬理香子選手(2014年秋からアイスダンスを始め、2014年・2015年全日本ジュニア選手権優勝 19歳)
立野: 立野在選手(2013年全日本ジュニア選手権2位、深瀬選手と全日本ジュニア2連覇 19歳)
► 「ずっと笑っている」リカコ&「何でも出来ちゃう」アル
——はじめに、お互いの人物紹介をお願いします。まずは、深瀬選手から見た立野選手についてお聞かせ下さい。
深瀬: 在は、最初に組み始めた頃は、私よりもずっと長くアイスダンスをやっていたこともあって、「こうしたほうがいいよ」とアドバイスをくれることが多かったです。見た目は⋯髪の毛がツンツン(毛束感)していて「オシャレな高校生だな」と思っていました(笑) 私の地元の埼玉の高校では見かけないような、オシャレしている高校生って感じでした。
立野: そんなつもりないんですけどね(笑) 組み立ての時は髪が短かかったので、バッキバキに固めてたんです(笑)
——毛束感重視で(笑) 今はどんな印象になりましたか?
立野: ださくなった?(笑)
深瀬: こっち(カナダ)に来てからはツンツンしてないです(笑)
立野: (笑) 何もつけてないですね、今はただ流している感じです。
深瀬: 一緒に練習していて思うのは、在は理解力がすごくあるんです。先生から言われたことを1回で出来ることが多いです。
立野: 振付を一度見せてもらったら大抵出来る、ということはあります。
深瀬: 「何でも出来ちゃう」んです。何でもすぐ覚えるし。新しいことに取り組んですぐ出来るのは、本当にすごいと思います!
——要領が良い、と。
深瀬: 練習以外でも常に「考えて」ますね。
——気遣いが出来る、と。
立野: 僕結構、「気にしい」なんです(笑)
深瀬: 技術的には、膝と足首が柔らかい選手だと思います。
立野: ⋯自分のは見えないからな(笑)
立野: 理香子は、トライアウトの前に同い年と聞いていたんです。で、実際会うとすごく幼く見えたんですよ(笑) ⋯(隣の深瀬選手に)すんげえ睨まれてるんですけど(一同 笑) 取材で第一印象を聞かれると毎回そう答えています。今は、「幼い」印象ではありません。
深瀬: !?そう?
——アイスダンサーとしての練習で変化されてきたのでしょうか?
深瀬: 顔は変わったって言われますね。
立野: 技術的には、アイスダンスは『リード(男性)とフォロー(女性)』がすごく大事なんですけど、理香子はまったく逆らうことがないのでリードがしやすいです。
深瀬: ⋯普通だよ(照)
立野: (笑) トライアウトで初めて組んだ時も、彼女から言わせると「何も分からないからついて行くしかない」ということだったんですけど、僕のリードについて来てくれていました。彼女は僕と組み始めてからアイスダンスをやり始めたので、最初はアイスダンスの技術はなかったのですが、『フォロー出来る・出来ない』でリードは大分変わってくるんです。
——では、トライアウトの時点で深瀬選手のアイスダンスの素質を見出されていたのですね!
立野: そんな感じだったと思います(照) ⋯(笑顔で聞いている深瀬選手に)なに笑ってんの、あなた(一同 笑) スケーティングは、最初はすごく膝と足首が硬かったんですけど、
深瀬: それは聞いてなかった(一同 笑)
立野: でも、こっちで指導も受けて、それが今は曲がるようになっていますね。表現の面では「ずっと笑っている」かな?
深瀬: 私?そうなのかなあ?(笑)
立野: 僕は滑っている時に笑わないので、その辺はリスペクトしています。笑顔、踊ることや表現面が良いんじゃないかなあとは思います(照)
深瀬: ふむふむ(笑)
——他にもっと!という感じで(笑) お人柄でも。
立野: (笑) 順応性があると思います。こっちに来てからも「すぐ慣れたな」と思いますし。
深瀬: そうかな?そうだろうな(一同 笑)
立野: 日常の面で、行動力もありますね。僕はインドア派で全然外に出ないんですけど、理香子はむっちゃ外に出て行きます。こっちでも、散歩とか。
深瀬: そう?
立野: だから、あなたは普通に思うかもしれないけど、すごいことなの!
深瀬: 分かった(一同 笑)
——バイタリティーがある、ということで(笑)
► 「ローマン先生に習いたい(立野選手)」「在について行く(深瀬選手)」と2人で来たモントリオール
——カナダに拠点を移した経緯についてお聞かせ下さい。
立野: 大半僕から説明しますと、僕が中学校1年生の夏にフランスのリヨンに短期で練習しに行って、そこでローマン・アグノエル先生と知り合ったんです。樋口先生(日本で指導を仰ぐ樋口豊コーチ)に紹介して頂きました。その後もずっとローマンに習いたいと思っていたところ、ローマンがこちらのリンクに拠点を移すことになり、僕もここを選んだという感じです。
立野: ローマン先生に習いたいと思った理由は、振付です。振付が独創的だったり素敵なので。彼の個性が見えるというか、彼の振り付けた生徒を見ると「ローマンが振り付けたんだろうな」というのが分かる振付が多いですね。実技で指導されますし、習いたい・振り付けて頂きたいと思いました。
——具体的に「これを見て心を決めた」という作品はありますか?
立野: イザベル・デロベル/オリビエ・ショーンフェルダー組(フランス)の"ピアノ・レッスン"(2007-08FD)です。
深瀬: 私は、在について来ました(一同 笑)
立野: 強引に、じゃないですよ、合意の元です(一同 笑)
深瀬: 私はこちらの先生や選手達の名前は知ってたんですけど、それ以外の情報はないままコーチが「樋口先生のお友達」で在が「行く」っていうから(笑)
立野: 俺がわがままみたいになったな(一同 笑)
深瀬: 樋口先生も「良い先生達で、2人のことを安心して預けられる」と言われていたので(笑)
——カナダでの生活はいかがでしょうか?
深瀬: 私は、英語もフランス語も分からなくて苦労しています。
立野: モントリオールはカナダ(英語圏)でもケベック州なのでフランス語圏なんですけど、若干訛りのあるフランス語なので、フランス語が分かる人でも聞き取りにくいこともあります。でも、英語が通じる場合もありますし。
深瀬: ペアのリンクがあるところ(モントリオール島東部)は英語が全然通じないですね。
立野: 練習では、スケートの専門用語があるのでそんなに不便はないです。理香子も「分からない」と言っていますが、そんなに分からないわけではないので!
深瀬: 分かってないよ(笑)
立野: って言ってるだけで、自信がないだけなんです(笑)
深瀬: 分からなかったら、先生方が別の言い方で教えて下さいますし。在にも助けてもらいます。
立野: 僕は、雰囲気で話してるんですよ(笑) 主に英語です。フランス語も、日常会話は分からないですけどスケート用語は分かります。リヨンではローマンもフランス語で指導されていましたし、リヨンにいた時は、僕は全然英語を喋った覚えはないです(笑)
——フランスに行けばフランス人の方は英語では話してくれないですね(笑)
立野: そうなんです(笑) ローマンは、僕ら2人の指導は理香子が分かる英語で、僕には時々フランス語で話されますね。先生達と一緒にフランスから来た生徒もいるし、チーム全体の指導はフランス語です。
——暮らしの上で困り事はありますか?
深瀬: 私はないです!
立野: 僕はウォシュレットがなくて困ってます(笑)
深瀬: (笑) 私は使わないな。でもお店に「おにぎり」がないです(笑) お菓子も日本と違うし。それからコンビニで「お弁当」が買えないんです。お惣菜はスーパーに行かないと買えないですし、コンビニでは「snack(お菓子)」しかないです。
立野: あとは⋯慣れたんですけど、バスの運行がバラバラですね。30分に1本の時間帯もあったり。
深瀬: 10分遅れで来るならまだいいんですけど、10分前に出ちゃう時もあって。
立野: 時刻表通り、時間調整して待っててくれないんです。それは今でもたまにイラッとします(笑)
深瀬: それに、冬場は雪で工事が出来ないので夏場に工事があって、夏季と冬季でルート変更もあるんです。今日も違うバス停から乗って知らないところを通って来て、「リンクに着くのかな?」と不安でした(笑)
立野: ルート変更で、バス停で待っててもスルーされたり。そっからはリンクまでダッシュですよね(笑)
——想像していた都市とは違いますね(笑)
立野: 日本じゃこんなことはないですね(笑) バスにスルーされても、まあ歩けない距離ではないので「軽いアップにはなるかな」と。でもモントリオールは良い街なんですけど!
深瀬: 大分のんびりしています(笑) 治安は他の外国の都市に比べても良いと思うんですけど、日本じゃないからいろんなことが違ったりして最初は慣れなかったこともありますが、(立野選手に)今は慣れたね?
立野: 慣れました。
Rikako FUKASE/Aru TATENO @ Gadbois Centre
——1日の練習についてお教え下さい。
立野: 氷上練習は3〜4時間確保出来ています。その内、2時間半ぐらいはレッスンで見てもらえているので。それ以外は自主練なんですけど、こちらのリンクのボスのパトリス・ローゾン先生から、前日の夜に翌日の練習メニューとスケジュールが送られて来るんです。「この時間はパターンダンス」とかエレメンツを指定されていたり、「フリーをパートごとに区切って練習」とか、日によって細かく全部決められています。ですから自主練でも困ることがないというか。
深瀬: 書かれている通りに従って、頑張ろうと。
立野: こちらでは全部管理されている感じです。日本では自主練も自分達で組みますし、先生との話し合いでその日に「じゃあこれをやろう」ということもありますね。パトリスの自主練のメニューは「これが出来ないからこれをやらせよう」という意図も大分見えるような⋯(深瀬選手に)俺らよくあるよね?(笑) 僕ら本当にスピンが苦手なんですよ。ずっと「スピン」「ツイズル」というメニューがあって⋯それが無言の圧と言いますか(一同 笑)
立野: オフアイスではジムでのトレーニングとバレエがあります。
深瀬: それも決まっているんですよ。
立野: ジムもバレエも大抵週2回入ってますね。ジムでは筋力をつけるというよりはスタミナをつけるサーキットトレーニング(間を置かず複数のエクササイズを行う有酸素運動)をやっています。僕自身は、体が小さいので、そのジムとは違う、リンク内のジムでトレーナーをつけて週2回ウェイトトレーニングもやっています。
——時期による練習の変更はありますか?
立野: バカンス明け(世界選手権後)は、氷上練習で基礎が多くなります。「パターンダンスを一からやりましょう」とか「ターンを正確にやりましょう」とか。技術面で練習量は多くなると思います。
——女子選手はウェイトコントロールも大変だと思いますが、深瀬選手は食事の面で気を付けていることはありますか?
深瀬: こちらに来てからは自炊をしているので、より栄養管理には気を付けています。食べなさ過ぎて怪我を招いてもいやだし、でも考えて食べないといけないから難しいですけれど。
——リフトがあるから「より体重を軽くしよう」とか、アイスダンス転向前後で変化はありましたか?
深瀬: アイスダンスになっても同じなんですけど、怪我をしたくないのでしっかり食べなきゃいけないけど・痩せてないといけない、という。栄養素が偏ったりしてもよくないと思って、サラダ食べて、たんぱく質のお肉やお魚も食べて、朝だったら炭水化物を食べなきゃ燃焼するものがないし。
立野: 朝弱いからね。
深瀬: (笑) 朝は多少甘い物を食べて血糖値を上げて動けるように。
——何か「これは作ってよかった」というお料理はありますか?
深瀬: えー(笑) 「豆腐ハンバーグ」はこの前作りました。お豆腐だけのも挽肉を混ぜたものも作ります。でもお豆腐もこっちで買うと高いです(苦笑) 日本の物は高いですね。
立野: あ、栄養に気を付けると高くつきます、やっぱり。
深瀬: こっちで買うとさらに高くなります。
立野: 物価は日本より高いですね。
► アイスダンスコーチングチーム「モントリオール」
——世界のアイスダンスファンが知りたい、モントリオールの練習体制なのですが、パトリス・ローゾン/マリー=フランス・デュブレイユ/ローマン・アグノエル/パスカル・デニスコーチはそれぞれどのような役割になっているのでしょうか。
立野: まず、ウォームアップ(氷上)は4人が日替わりで回しているような感じです。
深瀬: グループレッスンで練習の一番最初にあります。
立野: 「これをやるように」と指示があって全員でやるんですけど、それも先生によってやり方は全然違いますね。
深瀬: 今日はパトリスだったからエッジワーク、みたいな。
立野: 彼らに"担当"というものはないと思うんですけど、4人共まったく違う教え方をされます。「パトリスはこう言ってたのにマリーはこう言い始めたぞ」っていうこともあります(笑)
——なかなか厳しい展開に(笑)
深瀬: 2人(現役時代に)組んでたのに(カナダ選手権4連覇、世界選手権銀メダリスト)!全然違う!って(笑)
立野: でもそれはそれで、「パトリスはこう言ってたけどマリーの言うほうがやりやすいぞ」ということにもなって。
深瀬: 結局はそれが繋がってたりするよね。同じことなんですけど、教え方が違う。
立野: そう、ローマンにもパスカルにも各々の教え方があって、自分に一番合ったやり方を見つけられます。教え方が違うと飲み込みも違うので。
深瀬: 自分の分かりやすい教え方を選べます。結局、全部同じことを教わるんですけど。
立野: そこへ行くまでのプロセスが全然違いますね。
立野: パトリスは主に技術面で、エッジワークを指導されます。
深瀬: エッジワーク専門、というか、
立野: 教えるのがうまい。
深瀬: そうなんだよね。
立野: パトリスはステップの手直しもされます。振付が力強い。なんか「カクカク」しています(一同 笑) 昨季のショートの課題にマーチが入っていたんですけど、マーチがすごく「パキパキ」してマーチらしさが出るんです。パトリスの振付も「これはパトリスだな」と分かる。
深瀬: ローマンの振付も分かるんですけど、パトリスも「ここはパトリス」と分かります(笑)
——ポージングがキメキメみたいな(笑)
深瀬: そんな感じです、「絶対先生でしょ」って(笑)
立野: マリーは、2人のユニゾンが主ですね。技術面も教えられますが、マリーは特に「lean(倒す)」=上体の傾きやフリーレッグのマッチングについて言われます。あとは、マリーは振付が素敵ですし。振付の手直しもされますね。
深瀬: ステップ全部変えられたりする(一同 笑)
立野: 僕らのイメージとしては、マリーは振付と見映えを見て下さる、という感じです。
立野: ローマンは、話しているように振付がすごいですし、
深瀬: マリーとパトリスの先生だったからね。
立野: そう。僕が感じるのは、表現力に関してむっちゃ言われますね、「もっと踊りなさい!それじゃ何やってるか分からない!」と。
深瀬: 「技術はいいからとりあえず踊りなさい!」って。
立野: 「技術は後からついて来る!」と。
——名言が出ましたね!
立野: (笑) 多分そんなことを言われていると⋯僕らの印象としてはそんな感じです。
深瀬: 私がアイスダンスを始めたばかりで何も分からないからかも(笑)
立野: (笑) とにかく「踊れ」って言われます。ローマンは、教えてるのにすごく踊ってます。僕らはローマンの現役時代の演技を生で観たこともないんですけど、教えてもらいながら演技を観てるって感じです。ほんっとに、すっごい綺麗なんですよ、ローマンの動きも。マリーもそうです。
深瀬: 指先も表情も演技しながら教えられます。私だけかもしれないですけど、笑った時に目が細くなるので、演技中にそうなるとローマンが「笑う時に目を開けろ!」って(一同 笑) 普通に笑ってたら目が細くなるからしょうがないんですけど(笑)
立野: 俺も目めっちゃ細くなる。
深瀬: 目なくなるじゃん(笑)
立野: うるせえ(笑)
深瀬: (笑) そういうところまで教えてもらえます。
立野: そう、言い方は悪いですけど、表情はすごくうるさく言われます。あとはもちろん、技術も教わります。ちょっとしたコツなんかも言われますし。「ホールドを大きく!」とか、よく注意されますね。
深瀬: ハリが足りないと「しっかり張って!」とか。しっかり張ってないと2人の距離感が崩れてしまうので。
立野: パスカルはスケーティングですね。よく言われるのは「glide(滑るように移動する)」=一歩の伸びですね。
深瀬: 「グラーイド、グラーイド」って。基礎を教えるのが上手です。
立野: 彼はシンクロチーム(Les Supremes 昨季カナダ王者)も教えているので、スケーティングの基礎的な指導は得意だと思います。選手の精神的なケアもされますね。
深瀬: パスカルが一番気にかけて下さいます。
立野: 先生方は、演技の前に緊張していたら「普段通りに」「元気に」と送り出して下さって、励みになります。⋯パスカルと理香子はハグしていますね(笑)
立野: 技術面では全員がしっかり見て下さいますし、そこが大前提で、4人がすごくバランスが取れている感じです。
深瀬: それぞれ得意分野があると感じます。
——先生方の現役時代の動画は見られますか?
立野: マリーとパトリスの演技は動画でよく見ますね。最後のフリーダンスの"At Last"(2006-07)とか。オリジナルダンスも素敵だと思います。
深瀬: めっちゃ踊ってます。パトリスもカッコイイけどマリーがすごくカッコイイ。
立野: 女性がすごく目立つように作ってあります。
深瀬: そう、強そうな!
立野: パスカルは「これ僕の」と見せてくれたこともあります(一同 笑)
深瀬: 「先生達こんなことやってる!」「こんな振付してる!」と、先生達の演技が例えば新しいリフトの参考にもなったりします。先生達は旧採点時代の選手なんですけど、今でも通用するようなリフトばっかりなんです。マリーとパトリスのリフトは有名ですし、パスカルも派手なリフトをやっていると思いました。
► ひとつひとつステップを踏んだ15-16シーズン
——昨季、シーズンに入ってからは先生方からどのようなアドバイスがありましたか?
立野: ここに来た当初は、僕らは周りの選手から比べたら「何してるの?」っていう感じでまったく踊れていなかったんです。だから「とにかく踊りなさい!」「passion 出して!」と言われましたね。
深瀬: 「passion」は言われましたね。
立野: あとは、ジュニアなんだから怖がらずどんどん押しなさいと。押す=スピード出すことを言われたかなと思います。
——「押す」というのはスケーターの皆さんからよく聞かれる表現ですが、英語では何と言うのでしょう?
立野: 「プーーーーーッス!プーーーーーッス!」と。
深瀬: それはフランス語だよ(笑)
立野: すみませんでした(笑)
——(笑) フランス語で push は pousser(動詞の命令形は pousse 「プッス」)なんですね。
立野: 他には「ターンを正確に」と。
——レベルに直結しますね。
深瀬: グランプリ(ISUジュニアグランプリシリーズ)の前、夏頃は「押して押して押して」だったのにトルン杯(2016年1月・ポーランド)の前になったら急に「エッジワーク」と言われて(一同 笑)
立野: 大会ごとに目標が違いましたね。
深瀬: そうだね。初戦のオーストリア杯(ISUジュニアグランプリシリーズ・2015年9月)に関しては、とにかく「世界ジュニア出場のミニマムスコアを取るように」と。「ターン」とか「キーポイント」について注意されていました。特に、ショートのミニマムスコアを取るのがフリーよりも難しいから。
立野: 「キーポイント」はよく言われましたね。
深瀬: トルン杯もエッジワーク重視で。
立野: 直前にミッドラインステップがまるまる変わったんですよ、要素1つ全部が(笑)
深瀬: びっくりしたよね!パトリスが変えました(笑) 2週間前に「全部変えよう!」って(一同 笑)
立野: こっちのほうがレベルを取りやすい、と。
深瀬: 私達が得意なステップが多く入っています。その先生達の作戦が当たったんです!
立野: レベルも取れて点数も上がりましたね(オーストリア杯を8.06点上回る)。
深瀬: 世界ジュニアでの目標は、トルン杯でレベルが取れたので、次はGOEとPCSを上げようと。
立野: そこを重視しただけあって、世界ジュニアではGOEもPCSも上がりました。トルン杯よりも判定が厳しかったことやトルン杯前のようなレベルへの取り組みではなかったこともあって、レベルの取りこぼしはありましたけど。
深瀬: スピンは、練習した甲斐あってレベルも取れました(レベル4でGOE+0.43)!(立野選手に)ね?
立野: なんで俺に言うの!(一同 笑)
深瀬: 昨季を振り返ると、それぞれの試合でそれぞれ違う目標だったけど、その目標を全部達成したことが良かったかなと思います。
立野: ひとつひとつステップを踏んで世界ジュニアまで繋がった感じです。
深瀬: 昨季一番の目標は世界ジュニアのショート通過だったから、そこが達成出来てうれしかったです。
インタビュー後編ではアイスダンス談義が弾み、日本のアイスダンスの現状、未来に懸ける想いも伺います。
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