Becoming more beautiful, much stronger - Kent is on course!
Our Japanese correspondent Aiko interviewed Kento NAKAMURA 中村健人選手 @ 2012 Finlandia Trophy フィンランディア杯.
thanks to: Finnish Figure Skating Association, N..FJ for photos, PAJA for illustrations
by AIKO SHIMAZU 島津愛子
October 7, 2012 in Espoo, Finland

中村健人 Kento NAKAMURA © Japan Skates
Kento NAKAMURA @ 2012 Finlandia Trophy


Japan Skates が中村健人選手にインタビューをさせて頂くのは3回目になります。よろしければ是非、初見の方は1回目2回目のインタビューを御覧下さってから、このフィンランディアの健人さんに出会われますように。「目標」への歩みは一歩ずつ逞しくなっています。

☞ Japan's Depth #4 Kento NAKAMURA: A Coming Up Rose of Japan 2011年9月

☞ 冬季国体 インタビュー 2012年1月

JS: 今回のフィンランディア杯では、ショートで大惨事(54.14 9位)からのフリー復活劇(133.28 4位 総合7位)となったと思うのですが、御自身の自己解説をお願いします。

KN: 木曜日の練習に関しては、時差ボケも残っていましたし、初めてのリンクで体も動き切れていなかったので、先生方も僕自身もあまり(状態を)気にしてはいなかったです。最後のほうは動けるようになってジャンプも飛べていましたので、自分でも大した問題じゃないな、と思っていました。
ショートの朝は、比較的動きは良かったので、前日の練習でしっかり動いたことによって体が大分慣れて来たのかな、と。

KN: で、ショートの本番では、僕自身もどうして失敗したのか分からないほど「本番だけミスした」という形なので。調子もタイミングもまったく悪くないと感じていました。先生も最初「分からない」と。⋯多分、頭で考え過ぎちゃってる部分があったんじゃないかな、と。考えないでも「音楽に合わせて体が動く」状態ではなく、「こうしなければ」と考えてしまって。それが本番で大きく出てしまったんじゃないかな、と思います。

KN: ショートの演技が終わった時は信じられなかったです。自分がどうしてこういう動きになったのか⋯ 今までは想像がついていたんですけど、今回ばかりはすぐに思い当たらなくて。でも、終わっちゃったことは終わっちゃったことなので、落ち込んだところで点数も伸びるものでもないですし、そういった意味で、フリーに向けて切り替えはうまく行きました。

KN: 「少し体は鈍いかな」という感じもありましたが、フリーの朝の練習も曲かけの前はジャンプも決まっていましたし、6分練習も気になるようなミスもなく、少し精彩を欠いた程度で。ただ、6分間の使い方がうまく行ってなかったのは確かですね。四回転の練習が出来なかったという。まだ四回転がコンスタントではない状態だったので、ショートで順位を落としていたということもありましたし、「クリーンな演技を目指したほうがいい」ということで先生とも話し合って(冒頭の4Tを)トリプルにしました。(流れるジャンプでGOE+0.93) 前半のルッツが二回転になったり後半のジャンプで転倒してしまったり(3S-3Tの3T、3Lzからの三連コンボの3Lz)、もったいないミスが3つほど出てしまったんですけど、今大会を振り返ってみると、ショートとフリーの切り替えが良かったと思います。

KN: ショートでもところどころはしっかり出来た(3AはトランジションのMIFも入り GOE+1.33)、というのが踏みとどまった要因だと思います。ショートで3つも⋯(苦笑) コンビネーション(3Lz-3T)の1stでこけて、後半x1.1倍のstep-3Fも一回転になって、(フライングキャメル)スピンも no value、それで5コンポーネンツで6点代を揃えたということは、「⋯救われたな!」と(笑)
⋯随分前の僕だったら、ああいう失敗をしてしまうと「もうダメだ⋯」と考えてたと思うんですけど、フリーでは、すごく攻めたというわけではないですが、自分の戦い方で「今出来ることを安定してやろう」と思って臨んでいました。

JS: こちらではブライアン・オーサー、ジェスリン・ブライアンド両先生の指導を受けられていましたね。

KN: コーチは樋口先生なのですが、夏のカナダの練習でずっと僕の動きを見て頂いていたので、今回はお二方にお世話になりました。


中村健人 Kento NAKAMURA © N..fj
2012-13SP"Vizir" @ 2012 Finlandia Trophy


JS: その今夏のカナダ(「Toronto Cricket, Skating and Curling Club」)での練習についてお伺いしたいのですが、4Tの飛び方が変わりましたね。まっすぐ直線的に入っていたのから、ハビエル・フェルナンデス選手のようなカーブするフォームになっていますね。

KN: ハビエルとほぼ同じですね。ここではアンダーローテくらいしか回らなかったですけど、神宮ではもうしっかり回っていますし、今一番飛びやすい飛び方で。今後精度が上がって来たら、またまっすぐ飛ぶようになるか・このままかどうかはまだ分かりませんが、現時点ではこの形で確立させています。

JS: ジャンプの他にも、スケーティング、スピンと、たくさんの先生方の指導を受けられたそうですが、練習の雰囲気はいかがでしたか?

KN: カナダの先生達皆さんから、精神面・私生活の面でも楽しくあたたかく支えて頂きました。練習仲間とも「家族感」みたいなものがあって、でも、勝負する時は勝負したり。

JS: 練習時間は、神宮(「明治神宮外苑アイススケート場」)とは変わりましたか?

KN: 時間的にすごく増えたということではないのですが、質が変わりましたね。

JS: 神宮では、他にも多くの選手と練習されていると思いますが、リンクの人口密度的にはカナダはどうですか?

KN: (神宮よりは)少ないですが、たまに15人〜20人になる時もあります。リンクの雰囲気も大分違いますし、あまり圧迫感というのはないですね。互いのジャンプに拍手し合ったり励まし合ったりして、明るい雰囲気がそれを和らげてくれる、というか、練習しやすくなっていると思います。

JS: 練習内容で、例えばカナダでしかやらないような練習はありましたか?

KN: ⋯「ブライアンステップ」だとか(笑) ブライアン(オーサーコーチ)が引率して皆でやるステップがあるんですけど。違う先生の生徒達も一緒になって、曲に合わせてそのステップをやる時間があって。

JS: 「ブラジル体操」みたいな時間ですかね?

KN: ?(笑)

JS: サッカーで、皆で列を成して、走りながら歌い踊りながらアップする時間があって。

KN: そんな感じですね(笑)

JS: 「ブライアン体操」、見てみたいですね!(笑)

KN: (笑) 夏の間にはダンスレッスンもやって。ピラティス、バレエ、ヒップホップとか、毎日違う先生に教えて頂きました。最初はまったく動きが掴めなくて音楽にも合わせられないし大変だったんですけど、今までと違うことが出来たという点で、意欲的に取り組めました。皆で競い合って「誰が一番早く振りを覚えられるか」とか(笑)
⋯カナダでは、「全部楽しかった!」かな。良い環境で、シーズンに向けて良い準備が出来たんじゃないかな、と思います。


JS: スケーティングなんですけど、綺麗な形はそのままにスピードが出ていて、フリーレッグは見ているだけで心地よくなる滑らかさで、変わられたなぁ、と思って見ていたのですが。

KN: 夏のトレイシー(ウィルソンさん)のレッスンの成果だと思うんですけど、とにかくフリーレッグは気をつけるようにしていますね。ジャンプを降りた後の一歩目だとかが負けちゃったり、まだ直し切れていない部分はありますが⋯

JS: 流れる水みたいに、健人さんがスーッと流れて行っていますよ。

KN: (笑) ありがとうございます。そういう風に言ってもらえるようにやってきたので。ブライアンにも「膝が柔らかい」と言ってもらえるので、そこが武器じゃないかな、って。たまに硬く使っちゃうとステップがうまく行かないので、これからもっと膝を自在に操れるようになれば、と。それがもっと上達する鍵なんじゃないかな、と思います。

KN: (ジェフリー)バトルとも一緒に練習をしていたんですけど、彼のスケーティングというのは、本当に、「ジャンプがなくてもいい」って思えるくらい感動する、美しいスケートで。毎回魅入っちゃってましたね。自分の練習を忘れてしまう時もあったり(笑) それくらい、彼のスケートというのは惹き付けるものがある。「フィギュアスケートってこれだよな」っていうのをあの人に見た、という感じがします。

JS: (織田)信成さんも「練習に魅入ってしまう」とおっしゃっていましたよ。そんなバトルのスケーティングを表現するとどういうものでしょう?

KN: 音楽がなくても、動きから音楽が伝わってくるような。エッジさばきから曲が聴こえてくるような、もはや音は要らない、そんなスケーティングになっているんじゃないかな、と僕は思います。


中村健人 Kento NAKAMURA © Paja
2011-13FS"Symphony No.3 (Saint-Saens)"
@ 2012 Finlandia Trophy


JS: FS"Symphony No.3 (Saint-Saens)"ですが、冬季国体の取材では、「サン=サーンスがこの曲を生涯最高傑作にした理由が分かれば」と、演奏家や指揮者みたいに根っこからクラシックに取り組まれていましたが、⋯紐解けましたか?

KN: 彼自身は管楽器を好んでいて古典様式に固執していた、と思うんですけど、最終的に「現代様式とのコラボ感」と言いますか、「否定しながらも(音楽の変遷を)認めている」っていうのが曲に表れていて⋯ なんて言ったらいいんですかね(笑) 偉大な方なんで、「彼」って言っていいのかも分からないんですけど(笑) ⋯"彼が求めている音楽性、それが時代の流れの中で、自分の色を失わずに新しくなっていく。" それを突き詰めた形が、この「オルガン」だと思うので。それが「最高傑作」という所以だと思います。

KN: 僕の中では、これまでスケートを続けて来て、「自分が今出来る最高のスケートを出すためには、この曲が最高なんじゃないかな」って思ってるんで。

JS: 2年目のオルガンでは「強弱を出したい」とおっしゃっていましたね。

KN: パートパートで曲にイメージを付けるようにしていて。僕のイメージは、最初のパートでは、今までの「弱い自分」をスケートで表してる。曲想は「もがいてる」ようなイメージが強いんじゃないかな、と。
中盤のストレートラインステップからは、その弱い自分を認めた上での「スケートが出来ることへの感謝の気持ち」。柔らかい曲想によって思い起こされた、弱さを認めた上でさらに自分の課題を見つけていく、「明るく受け止めている」というイメージで。
後半のアクセルが終わってからは、「強い自分」。今までの経験を活かした上での「新しい自分」を力強く表現してる。
そういう緩急のイメージを頭の中で作っていることで、それが演技にも反映しやすくなっていくと思います。最近はそういう工夫をしています。


JS: 「コンセプトはミステリアス(笑)」というジプシー音楽のSP"Vizir"の振付はデイヴィッド・ウィルソンさんですが、ウィルソン先生の初指導はいかがでしたか?

KN: 「終始楽しくやりました!」って感じですね(笑) 頭の回転も技術も物凄いんですけど、なによりも御本人がお茶目な方で(笑) パッとイキナリ曲に入って真剣になったかと思えば、急におどけて見せたり。ずっと緊張を保っている、というのではなく、切り替えがハゲシイ(笑) キチッとやって和やかに、またキチッとやって和やかに、みたいに両面が織り交ぜてあって、「何時間でも教えてほしいな」という。レッスンが最後まで楽しい、そんな印象ですね。

JS: そんな緊張と緩和の連続シークエンスの最中、「こうやってくれ」みたいなオーダーはありましたか?

KN: 「こんなの出来る?」みたいなことはありましたけど⋯ とにかく、あるパートがいったん出来ても、次の日のセッションでは急に変わったり。イキナリ、全部が変わってみたり。

JS: !

KN: そのムーヴが出来たとしてもそれが振付に入るかどうかは分からなくて、先生の感覚で、常にブラッシュアップされながら完成していきました。

JS: 期間としてはどのくらいで完成しましたか?

KN: 最初の振付の期間は1週間くらいでしたが、その後カナダの夏の練習ではほぼ毎週どんどん変えていって。

JS: 「ジプシー」のイメージとしてはどういう演出がなされたのでしょう?

KN: デイヴィッド曰くは「僕はこんな人ですよ」と知ってもらうためのプログラム、ということで、「何が始まるのかな?」ってワクワクするような、「ゾクッ」と来るようなものにした、と。

KN: このショートで目指すのは、「パーフェクトな演技」。それに尽きます。これからは、「ミスをしない」というのが大前提の戦いになっていくと思うので。その中で、いかに自分はこういう点で他の選手とは違うんだよ、というのを見せられれば。僕の場合はスケーティングだったり感情表現を武器にしたい、という思いがあるので、その「自分のスケート」を見せたい。そのためにはパーフェクトな演技をしないと、「自分のスケート」という売り物自体が映えて見えないので。
「中村健人の演技ってのは、こういう演技だよね」って皆さんに知ってもらう。で、「もう一度見たい」と思って頂けるように。結果も欲しいんですけど、スケートをやっている以上は、これだけの人前の舞台に一人で立つんで、すこしでも僕の演技を知ってもらって、気に入って頂けたらな、と。


中村健人 Kento NAKAMURA © Paja
2012-13SP"Vizir" @ 2012 Finlandia Trophy


JS: オリンピックの前のシーズンになります、今季の抱負をお願いします。

KN: ソチオリンピックまで残り1年半を切ったところです。はっきり言って、ソチオリンピックは「難しい関門」。日本にこれだけ素晴らしい選手がたくさんいて、その中で勝ち抜くというのは相当厳しい戦いになる、そう理解しているんですけれども、でも、それを目指さないで勝負するよりは、「とにかくやり切る」。今もらっているチャンス、この一試合一試合をしっかりやり切って、まずは「自分のベストを出す」ということが、自分の実力を見せるという意味でもすごく大切なんじゃないかな、と思っています。

KN: 僕の今年の目標は、まずは「(日本開催となる)四大陸に出たい」。目標を持って努力するのと、「どうせ⋯」っていう気持ちで目標を持たないで努力するのでは、絶対に、間違いなく「目標を持ってやったほうがいい」と思いますし、「可能性」なんていうのは、誰でも「0%」なんていうことはないので。

KN: とにかくこの1年半をやり切った上で、ソチオリンピックに出場出来たら、「目標が実現した」ということになるのですが、その「目標に向けてのプロセス」をしっかりと進んで行けたなら、目標のためにがんばって来たことやこれまでの努力も、間違いなく、これから先に続く長い人生に活きてくると思うので。

KN: このフィンランディアでは、その目標に向けてのせっかくのチャンスを自分で無駄にしてしまった面があったのですが、これから試合も続いて行くので、一試合一試合自分の成長を見せていって、自分の実力を上げていければ、と思っています。


中村健人 Kento NAKAMURA © N..fj
2011-13FS"Symphony No.3 (Saint-Saens)"
@ 2012 Finlandia Trophy


JS: 最後に、皆さんへのメッセージをお願いします!

☞ Kento NAKAMURA 中村健人選手 @ Finlandia Trophy フィンランディア杯 on October 7, 2012