DAISUKE ISOZAKI 磯崎大介選手: projection, text, edit, copywriting (P2), handwriting
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thanks to: JAPAN SPORTS for "lovely" photos as always
August 12, 2015 in Osaka
2013-14FS"Alice's Adventures in Wonderland"
@ 2013 All-Japan
☞ P1 ► 磯崎大介を "識る"
Key Word #1: 文武両道
Key Word #2: Ice Ballet Dancer
Key Word #3: British Skating
☞ P2 ► 磯崎大介が "手懸ける"
Work #1: 振付 - 3日ルール
Work #2: 練習 - "More ○○"
Work #3: プログラム - 足跡
PP: プログラム制作についてお尋ねします。プログラムの曲選びはどうなさっていますか?
DI: 幼い頃から毎年自分で選んでいます。何百アーティストから何百アルバム、何千曲と聴いてビビッときたものを選んでいます。
シーズン中に「この曲が使いたい」と思うこともあれば、終わってから必死に探すこともあります。
PP: 曲を選んでも、「この曲どうなの?」と先生から突っぱねられることはありますか?
DI: ありますよ(笑) ありますけど僕を想ってのことだと思います。「どうしてもやりたいんだ」と何度も交渉してやらせてもらっています。
Daisuke ISOZAKI, Yoshinori ONISHI Aug. 12, 2015
DI: そうやって自分で選んだ曲でも「ダメだ」と、変えることはあります。自分の振付の仕方という領域に入ってくるんですけど、僕には「3日ルール」というのがあるんです。曲を初めて聴いた段階から編集・振付まで3日以内に終えないと何も浮かばなくなってしまうんですよ。編集に時間がかかってしまったら、曲を聴きすぎてしまって感性が逃げて行ってしまうんです。だから急いで曲を編集して、体が自然に動くうちに振り付けてしまわないと分からなくなってしまいます(笑) 振付が出来なかった時は改めて曲から選び直します。
自分で振付をしない場合は編集に時間を取ります。
PP: ご自分で振付する際に参考にされることは?
DI: バレエ、コンテンポラリーダンスも観ますし、もちろんスケートのプログラムも研究します。たくさんの振付師さんの作品を観て勉強しましたね。
PP: 振付で気を付けられていることは何ですか?
DI: スケートは会場全体360°から見られるじゃないですか。ジャッジの方々へのアピールはもちろんなんですけど、会場全体にメッセージが伝わるように、振付の位置関係・方向を気を付けています。ジャンプの場所やトランジションも面白くなるように工夫します。
要するに「自分の良さがどうすれば一番出るか」をひたすら考えて創ってるんですね。
PP: その振付は一気にインスピレーションでやってしまうわけですよね。
DI: 計算しつつ感性で動きます。
PP: 3日間でそれをやってしまうんですよね?
DI: いや、3日間じゃないと出来ないんです(笑) 出来る時もあるんですけど。でも3日以内に作ってしまった方が間違いなく良いものが出来ます。
磯崎大介振付プログラム
12-13FS "I AM EUROPE" (by Chilly Gonzales)
13FS "Amapola" (by Pascal Comelade)
13FS "IVORY TOWER" (by Chilly Gonzales)
13-14FS "Alice's Adventures in Wonderland"
14EX "The Mad Hatter's Tea Party" (by Joby Talbot)
14EX "Affectionate Unselfish, Scenery With the Bosin" (by sokif)
14-15SP "Beethoven's 5 Secrets" (by The Piano Guys)
PP: 昨シーズンのフリー"Aranjuez"はコンテンポラリーダンサーの金子礼二郎さんに振付を依頼されたそうですね。フィギュアスケートの振付師の方々との振付の違いはどういうものでしたか?
Daisuke ISOZAKI, Reijiro KANEKO 2013
DI: 動きが違うじゃないですか。それが良さでもあって難しさでもあります。新しいスケートのあり方や新しい動きを提案したかったのでお願いしたんです。
陸上での振付からスケートへ変換するのは自分でやりました。全てが当てはまるわけではなかったので、それに対しての工夫の仕方は難しかったです。なるべく陸上と同じようにするにはどうしたらいいのか悩みました。だからこそ面白いものが出来て、良さと難しさが混在していました。
PP: ダンスばかりをやろうとするとスケートにはまらなかったりして、違和感のある作品になってしまうこともあると思うんですけど、どういう難しさがありましたか?
DI: 振付をお願いした時は、むしろなるべくスケートのことを考えないでダンスとして振り付けてもらうようにしました。違うものを作りたかったからです。何が難しかったかと聞かれれば答えるのは難しいんですけど、氷上で出来るものもあれば出来ないものもあるので、振り付けてもらっている間はやってみないと分からない感じでした。だから、氷上で出来るものは残して、出来ないものは近い形で残しました。でもその変換の作業に上手く対応出来たのは、その前のシーズンから自分で振付をしていたという経験があったからだと思います。
2014-15FS"Aranjuez" @ 2014 All-Japan
PP: イギリス留学の際にマーク・ハンレッティ(Mark Hanretty)さんに振付を依頼されたそうですね。
DI: 友人の紹介でマークさんのことを知りました。YouTube で彼の動画を観て一目惚れして、お願いした、というわけです。
☞ [Mark Hanretty OFFICIAL YouTube channel] Stepping Out with Mark Hanretty
PP: マークさんのどういうところに一目惚れしたんですか?
DI: 初見は「紳士や!」と。紳士なブリティッシュスケーティングだと思いました。スケーティングもダンスもどちらも一級品の美しいものを持っていました。
PP: マークさんから受けたアドバイスはどういったものでしたか?
DI: 「More Posture 姿勢を美しく」「More Knee Bend もっと膝を曲げて」「More Extension もっとつま先まで伸ばして」という3点でした。それを徹底的に言われました。
Mark HANRETTY, Daisuke ISAZAKI 2015
PP: マークさんともそうですけど、他の振付師の方との制作では、ご自分のアイディアを出されることはありますか?
DI: 基本的には出さないです。というのも、それは振付師さんの作品だからです。ですが、より良いものを作りたいという考えは共通しているので、振付師さんのお許しがあれば時々出させて頂きます。
PP: 他の選手に振り付けることに興味はありますか?
DI: もちろん、引退して機会があれば是非やりたいと思っています。
PP: 是非見てみたいです!
PP: これまでに組まれた振付師の皆さんの他に、興味がある振付師の方はいますか?
DI: ローリー・ニコルさん、いいですよね。動きが新しいし面白いし、でもちゃんとルールのことも押えていて上手いなあ⋯と。彼女の作品はたくさん観て勉強しました。
PP: 特に好きなものはありますか?
DI: デニス・テン選手の作品が好きですね。
PP: 今シーズンのショートプログラムについて教えて下さい。
2015-16SP"Mas Que Nada" @ 2015 SummerCup
DI: タイトルは"Mas Que Nada"。振付師はマーク・ハンレッティさんです。コンセプトは彼から頂いたものなんですけど、「たくさんの鳥の群れがあって、その中の1羽がお前だ」と。「1羽だけスペシャルでクレイジーでアーティスティックな鳥がいる。それが Daisuke なんだ」と強く言われました。
マシュケナダは僕の一番大好きな曲なんですよ。何百回・何千回聴いても飽きないんです。実は違うアレンジで以前(2009-10・12-13シーズン 振付:萩原華乃さん)にも使ったことがあるのですが、最後にもう一度踊りたくて選びました。マシュケナダは僕の音楽なんです。
プログラムはとってもハードです!!!クロス(足を交差してストロークを行うこと)が1回か2回ぐらいしかありません。常にステップを踏んでいるプログラムなんです。
PP: サマーカップで演技を拝見した時に、どの方向に滑っていくんだろうかと驚いたんですよ!
DI: イギリスで練習していた時にマークさん以外の先生からは「これはエキシビション用?ショート用?」と言われました(笑)
PP: ちょっと型から外れていますよね。
DI: クレイジーですよね。好い意味で。
DI: ちなみに、振付は最後にロビン・カズンズさんから手直しを頂いてるんですよ!彼のレッスンも lovely でした。彼のお墨付きですので、自信を持ってお届けしたいです。
2015-16SP"Mas Que Nada" @ 2015 SummerCup
PP: 今シーズンのフリーについても教えて下さい。
2015-16FS"Pascal Comelade Medley" @ 2015 SummerCup
DI: タイトルは"Pascal Comelade Medley"です。アヴァン・トイ・ポップというジャンルの巨匠、パスカル・コムラードさんの音楽をメドレーで編集した曲になっています。これは以前からずっと使いたくって、温めていました。
⋯実を言うと、彼の音楽は小さな大会で一度だけ使ったこともあるんです。自分の作品の中でも大好きなプログラムでした。
自分らしさが最も出る音楽だと思っています。そんなわけで最後に彼の音楽を選んだんです。
メインのコンセプトは『足跡』——自分のスケート人生をしっかりと残して去りたいという気持ちからこのコンセプトは出来上がりました。キーワードには、「影絵」・「走馬灯」・「巡礼」などが挙がります。タッチは影絵で、走馬灯のように、過去の思い出をひとつひとつ拾っていくんです。拾って⋯ばばばって投げ捨て⋯置いていく⋯⋯うーん、足跡を残すんです。
最後の曲は、イエス・キリストが自ら十字架に向かって歩いた道を表したものです。彼が自分の命をかけて後の人に何かを伝えようとした姿に思いを馳せ、「では、私のここでの役割はなんだろう、私が置いていきたいものはなんだろう」と考えました。
振付は宮本賢二さんです。昨シーズンもお願いしたかったんですけどスケジュールが合わなくて、今年やっと叶いました。憧れの振付師の方にお願いすることが出来て嬉しいです。
PP: 賢二先生はそのコンセプトについて何とおっしゃっていましたか?
DI: 「任せとけ」とおっしゃって下さいました。
PP: プログラムの中で何度か曲調が変化するじゃないですか。この音楽ではこの表現という風に、明確にテーマを設けられていますか?
DI: うーん。全体を通して、「自分の歩む道の途中で、何かを見つけて離れちゃって⋯出会って別れて⋯」の繰り返し⋯。ぼんやりとしたイメージはこんな感じです。ごめんなさい、この辺りは感覚的な部分が大きくて。パスカル・コムラードさんの曲をたくさん聴いて考えているので、答え・理由ははっきりとあるはずなんですけど、言葉にするのは難しいです。
PP: 壮大なプログラムになっていますね!その作品の世界観を演技で出していくっていうのは、また難しいですよね。
DI: 難しいからまだ出せていないと思うんですよ。作ったのが7月末だったからまだ10日ぐらい(インタビュー当時)しか経っていないので、必死に練習してベストな形で全日本に出せたらいいですね。
PP: 楽しみです!
DI: 賢二先生から「このプログラムでもっと僕を有名にしてくれ」と光栄なお言葉を頂きました。是非多くの方にこのプログラムを見て頂き、新たなスケートの可能性を感じ取って頂きたいです。
2015-16FS"Pascal Comelade Medley" @ 2015 SummerCup
2015-16FS"Pascal Comelade Medley"
@ 2015 Kinki Regionals
☞ FS衣装について 磯崎選手のTwitterより (1) (2)
PP: それでは今シーズンの抱負をお願いします。
DI: とにかく悔いのないように。想いはプログラムに込めています。「自分のスケーターとしての足跡を残せたら」という気持ちでラストシーズン走ります。
PP: ファンの皆さんにビデオメッセージをお願いします。
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PP: 最後に、磯崎選手が教えられることもある、大学に入ってからスケートを始めた「学生スケーター」についてもお伺いしたいです。
DI: 彼らはすごい勇気がありますよね。大学に入ってから、今までやったことのない新しいことを始めるのって、そう出来ることではないと思うんですよ。
PP: 同志社大学スケート部の皆さんはどういった環境で練習されているのでしょうか。
DI: 彼らは一般にイメージされるような部活動と同じ形でやっています。練習メニューもあるし、基本的には全員で部としてまとまってやっています。
同志社大学にはスケートリンクがなく、部活動は毎日しているわけではないので、いろんな所に散らばって各自で練習をしています。僕も自分の練習があるし、常に見てあげられるわけではないので、時々動画を送ってもらってそれに対してアドバイスをしたりしてます。出来るだけのサポートはしているつもりです。
学ぶこともたくさんあります。僕も長くスケートを続けてきて、楽しかった経験がないわけではないけれど、辛かった経験がほとんどなわけです。そんな、純粋にスケートを楽しむことを忘れてしまっている中で、彼らのスケートを楽しむ姿は、自分に大事なことを思い出させてくれました。僕がたまたま小さい頃からやっていて、彼らがたまたま大学から始めただけで、どちらが偉いとかはないじゃないですか。だから僕が持っている知識や練習方法は共有するし、彼らから教えてもらうことも多いんです。そんな風にお互いに支え合っているのがスケート部の良いところだなと思います。
PP: 学生スケーターの皆さんが新しいことを出来るようになる姿を見られると、当時のご自分を思い出されますか?
DI: そうですね。それに、嬉しいですね。教える時にも、自分はどんな風に教えてもらったかをなるべく思い出して指導するようにしています。
PP: 学生スケーターのシーズンの日程は?
DI: シーズンの始まりや終わりは僕らと変わらなくて、メインは冬です。一番大きな大会は「全日本インカレ」で、皆、3級を取ってそれに出場することを目指しています。大学生から始めてもダブルジャンプが跳べるようになる選手もいるし、面白いと思うので是非彼らにも注目してほしいです。
Daisuke ISOZAKI @ 2015 SummerCup after FS