Nobu can see clearly now
Our Japanese correspondent Aiko interviewed Nobunari ODA 織田信成選手 @ Umeda station 梅田駅.
thanks to: JAPAN SPORTS for photos, PAJA for illustrations
by AIKO SHIMAZU 島津愛子
January 26, 2012 in Osaka

Nobunari ODA 織田信成 © Japan Sports
2011-12EX"I Can See Clearly Now" @ 2011 DOI


☞ in English


JS: まず、皆さん一番気にされている、左膝の怪我の状態について、お聞かせ下さい。昨季のインタビュー(3月末)の時点では、もう痛めていたとのことですが。

NO: 初めて膝が痛くなったのは、去年のユニバーシアード(1月末)の1週間ほど前で、3日前くらいから痛みは激しかったのですが、出場して(総合223.15で優勝)、帰ってから世界選手権までの間に時間もあったので、休みながら治療して、良くなったんです。それから練習して、3月末の世界選手権に間に合うかな、という状態で。膝に痛みはあるにしろ、我慢すれば滑れるし、体の調子もすごく良かったので、膝に負担をかけずに練習は出来ていました。

NO: 世界選手権(4月末)後に治療しようということで、一ヶ月ほど休んで、ちょうど6月に入った頃から滑り始めたんですけど、すぐに痛みも出てしまって。我慢すれば滑れるんですけど、その時の目標が「完治させること」で、シーズンが始まる前にきちんと治したいな、ということで、7月はまた休んで、8月くらいから練習を再開したのですが、2週間また休んで⋯ という繰り返しで、やっと「ジャンプを飛ぶ」という段階がGPSに間に合った、というかんじでした。それで、中国杯(初戦・11月初旬)を終えて(総合227.11/2位)、かなり負担があって⋯

JS: フリーのキス&クライで、膝が"weird,(様子がおかしい)"とバーケルコーチにおっしゃっていましたね。

NO: 痛かったり緩和したりという、痛みの波が激しくて、ケアはしていても、「痛み具合」が朝起きてみないと分からない、という状態で。それにすごく悩んでいたのですが、フランス杯(中国杯の2週間後)では、その悪い波にぶつかってしまって。(ジャンプの失敗が重なり総合7位に)それから日本に帰って来て、ずっと休んで治療を受けて、今(1月末)はかなり回復して、普通に歩けるようにもなってきました。来週から、状態が良ければ、氷の上の練習も再開出来ます。(再開されています!)

JS: ⋯自分も陸上で足の筋を痛めていて、「休むと良くなる」というのが、すごくよく分かります。

NO: そう、休むと、ちょっとずつ回復するんですよね、でも、使うと、またダメージを受けて、そこから回復するのに時間もかかってしまいます。

JS: ある日、痛みは来ますよね、「イタイイタイッ!⋯これは歩けないッ」っていう激痛が。

NO: そうですね!(にこやかな信成さん)

JS: 走ってる途中でヤツ(痛み)がやって来て、倒れちゃう!みたいな。

NO: ありますね!

JS: ⋯そんな痛みの最中、中国杯では、「スピードを抑えられているな」と思って、練習を拝見していたのですが。

NO: 左で蹴ってクロスして(加速)、というのが順方向なので。「痛くて体重が乗らない」という。でも、(左足に)体重を乗せないように滑ろうと思えば滑れるので⋯ と、そうやってしまうと、技術も偏って、おかしくなっちゃうんじゃないかな、と。

JS: 常に、膝の状態を確かめながら滑っているかんじでしたね。

NO: そうですね、「どういう風に滑れば痛くないのか」ということを自分で見極めながら練習していました。

JS: まったく想像上なのですが、フィギュアスケートは、陸のスポーツよりも、より、全身を道具のように駆使していて、より、ひとつひとつの部位の細密な感覚に基づいた動きなのかな、と。

NO: フィギュアスケートって、優雅に見えますけど、本当はハードなことをしていて、自分もそれを感じたのが、休み明けで。それまで長く休んだことがなかったので、(氷上練習の)次の日、「全身筋肉痛」くらいになって。毎日やって来たことで分からなかったんですけど、その時、「こんなに体に負担のかかることをやっていたんだ」と。

JS: 否随意筋を、全身随意筋にするくらい、すごい神経のかけ方で成り立っているのですね。

NO: それを再認識しました。膝に負担がかかってもおかしくないな、と。だから、それから一層、体のケアを大事にやっています。


JS: 前回のお話では、Japan Skates の Mark がお父さんになる、ということで、「fatherhood」についてお伺いするところ、自分が「marriage」のほうへお話を持って行ってしまったので、

NO: そう⋯ ですね(笑)

JS: ということで、今一度⋯ Q. お子さんが生まれたことによって、パワーも生まれたのではないでしょうか?

NO: それは、すごく感じます。練習していても、肉体的精神的につらくなってしまうと、自分に負けてしまいそうになるんですけど、その時に、一緒にいる家族、奥さんであったり子供であったり、その存在が、「ここで絶対負けちゃいけないな」という強みになっています。今までは、負けそうになると、いつも応援して下さるファンの方を思い出し、「ここで諦めては絶対にだめだ!」と思っていたのですが、今は、それプラス、「家族の強み」が出来て。精神的には、昨シーズンから少しずつ、家族に支えられて強くなって来たと思います。

JS: 今までお世話になって来た方のために、というのももちろんですが、具体的に、誰かのため、って想うのは、また違った意気込みですね。

NO: 「その人の笑顔が見たい」というか。よろこんでほしい、という気持ちがすごく強くなりました。


Nobunari ODA 織田信成 © Paja
2011-12SP"Memphis Soul Stew"


JS: プログラムについて、お願いしたいのですが、SP"Memphis Soul Stew"は、お得意のファンクで、中国杯の時、途中から御自身でも楽しまれて、笑われていた気がするのですが。

NO: (笑) 振り付けて頂いた先生(セバスチャン・ブリテンさん)に、笑顔で滑るように言われて。最初はブルースなので、痛み・苦しみ、みたいな感じだったんですけど、最初から楽しそうに滑っちゃったかな、って(笑) そこがちょっとよくなかった、と言われましたが、でも、「楽しそうでよかった」とも(笑)

JS: (笑) ファンキィでした!私も、楽しすぎて、途中からおもしろくなっちゃって、一緒に笑ってたんですけど、人間って、本当に笑うと、力が抜けませんか?

NO: 抜けますね(笑)

JS: だから、最後のスピンでレベルが取れてなかったのかな(CCoSp1)、と。

NO: (笑) あれは、自分でも回りながら「ちょっと足りないかな」って。いつもなら一周は多く回ってるので。

JS: 自分も、そういう経験があって、小さい頃、高齢出産の母が、毎日、200M位の家の前の通りで「かけっこしよう!」と言っていて、当時50歳くらいなんですけど、

NO: すごいお元気ですね!(笑)

JS: そう、50歳で、148cm・70kgくらいで、丸いんですよ!その丸いのが、ものすごい速くて!たまに、コンディションがいい時があるんでしょうね、すごい推進力で!

NO: (笑)

JS: 自分は、並走しながら、おかしくって、全然力が入らなくて!自分がどう走ってるかも分からなくなって。

NO: もう、考えられないですよね(笑)

JS: (笑) そう、だから、それがあの時の信成さんにも起こったのかな、と。

NO: (笑) そうかも。

NO: 昨シーズンは、セバスチャンとプログラムを作る時間が少なくて、短時間でパッと振り付けて頂いたのですが、もうちょっとお互いに分かり合ってプログラムを作れたら、と思って、今シーズンのプログラムもお願いしました。ショートの曲は先生が用意して下さって、リー(バーケルコーチ)も「良い曲だ」と。自分も「滑りたい!」って。

JS: ファンクは信成さんのお手の物です!


JS: 中国杯でフリーを見てびっくりしたんですけど、3Aとかコンビネーション以外の単発のジャンプに、「助走がない」と!例えば、イーグルからの3Aでも、eagle-3Aとしての助走があるけど、そういった「ジャンプを飛ぶための走行」がなくて。練習の曲かけではジャンプのエントリーだけ確認されていたので、本番で、「まさか!そこにジャンプが入るとは!」の連続でした。どういう風に作って行かれたのでしょう?

NO: 一応、いつも、振付をお願いする時は、「なるべく難しいものを!」と。練習して出来るかな・出来ないかな、というレベルで練習しないと、やっぱりうまくなれないので、「難しいつなぎを入れてほしい」とか、お願いしています。
フリーは、特に後半につなぎが多かったので、最初にプログラムを通す時もしんどかったんですけど、「これをやって行かなくては!」と。先生
(同じく振付はブリテンさん)にも、「出来てるから大丈夫だよ!」とあたたかい声をかけて頂いて。

JS: あの助走分が、トランジションのステップと踊りになっているんですね。

NO: でも、「なかなか難しいな」とか思いながら(笑)

JS: 私は、あの、GOEとかレベル要件について書いてある要項がすごくすきで。

NO: (笑) そうなんですね。

JS: これとこれとこれとこれがあれば+2(4項目以上)、とか、見てたらわくわくして、トイレに貼りたいくらいすきで!

NO: (笑) そんなに?

JS: そうです!あの紙の存在が、この世の明るみに出たら、もっと、男性のスポーツファンも出て来ると思うんですよ。

NO: 細かく書いてありますよね。

JS: そう、トイレには貼ってないですけど、携帯に入れていつでも見られるようにして、一言一句憶えよう、と。

NO: ジャンプのGOEの要素、8個ありましたね。高さ幅、回転のキレ(or 回転フォームのアレンジ)、ランディング(伸び/降りた後の工夫)、全体の流れ、エフォートレス(簡単に行っている)、入りの難しさ、コネクティング(ステップや技)、音楽との調和。

JS: それを頭に入れながら、信成さんのフリーのジャンプを見ていたら、「ああ、全部+3(6項目以上)狙いなのかな。」って。

NO: (笑) ⋯練習しないと。スピンステップの要項も見ていますが、なかなかGOEを取れないですね(笑) もうちょっと練習しないと!
今、スケートを休んでいるので、「
(今後)どんな練習をしようかな」ということを考えていて、ひとつひとつのエレメンツの内容で、自分の個性もアピール出来るようにやっていきたいな、と思っています。

JS: FS"シェルブールの雨傘"の物語は、せつなさ・はかなさが楽しさへと色を変える、これまたお得意のパターン!と思っているのですが、どのようなプログラムをイメージされていますか?

NO: 「シェルブールの雨傘」は、戦争に関連したさみしい恋愛模様を映し出した映画で、僕も見ました。音楽は、先生が最初に話されていた通り、どちらかと言うと、アイスダンスや女性に似合うメロディーで、僕はそのメロディーが好きで。「メロディーが好きなんだ」と伝えたら、先生がジャズのアレンジの曲を持って来てくれて。滑る気持ちとしたら、先生は、「あまり映画と同様に考えてほしくない」と。「パリの花売りの男の子が、運命の人を射止める」というように。⋯出来たかな?と思うんですけど(笑)

JS: 中国杯の練習で、ジェレミー(アボット選手)が拍手してましたよ!ストレートから渦を巻くみたいな最後のコレオステップで、ずーっと信成さんを目で追っていて、「いいぞ!」っていうかんじで。

NO: (嬉)


Nobunari ODA 織田信成 © Paja
2011-12FS"Les Parapluies de Cherbourg"


JS: 全日本についてなのですが、直前まで出場を考慮されていたのでしょうか?

NO: フランスから帰って、練習はしていなかったのですが、「間に合えば滑ろう」と思っていました。でも、「⋯無理だな。」ということで、ギリギリでの欠場になってしまって。

JS: ⋯「明日、(痛みが)良くなるんじゃないか!?」って思うんですよね。

NO: そう!で、練習をしていなかったら、そこまで痛みが出ないので。滑って動かすと、どうしても痛くなってしまう。陸だと「出来る!」っていう気持ちなんですけど、氷に乗ると「だめ」ってなってしまうので。
相当悩んで。一人で決められることではないので、病院の先生とも相談して、「まずはしっかり膝を治して、ソチへ向けて頑張りたい。」ということで、欠場しました。

JS: 羽生結弦選手が、一番最初の22日(木)の非公式練習後のインタビューで、質問を受けて、ではなく、最後にポンッと、「信成選手の欠場が残念」とおっしゃっていて。あの日は、それが一番頭にあったんじゃないかな、と思うのですが。「三強と戦いたかった」って。

NO: ⋯そう言ってもらえるとうれしいですね。でも彼は、「三強」とか他の選手との比較に関係なく、素晴らしい選手だと思うし、志がすごく高い。自分にすごく厳しいし、でも人には優しく。

JS: まさに!

NO: ⋯自分も負けてられないな、と!(笑)


JS: バーケルコーチとの師弟関係について、お願いします。

NO: 今でも、頻繁にメールをしていて!

JS: メール!

NO: 心配して、メールをくれるんですけど(笑) 僕のお父さんじゃないけど、「スケートの父」みたいな。ジュニアの時からお世話になっていて、世界ジュニアという大きな舞台で優勝(2005年)という経験も積ませてくれましたし。⋯あたたかくも厳しく、自分のスケートを見守ってくれている、というかんじです。

JS: 前々回の Japan Skates のインタビューでは、最初の師事の際、「ジェフ(ジェフリー・バトルさん)のように」ということで、連盟さんの勧めがあった、とお答えでしたね。

NO: 2004年の世界ジュニアを終えて、本田(武史)君が練習していたトロント近郊バリーの「マリポサ(現在のカナダでの練習拠点)」に、2ヶ月、一人で行って。その時初めて、武史君やジェフのスケートを目にして、もう衝撃でしたね!(笑) 僕は当時ジュニアで数年目くらいで、「本物のスケート」を見たな、という。

JS: 「本物」!

NO: ジェフは、オフも自ら厳しく鍛錬していて、「自分もスケート以外のトレーニングに励まないといけない!」と思いましたし⋯ 一人で行っていたので、ほんとに、武史君がいなかったら、死んでたんじゃないか?(笑)っていうくらいお世話になったので、武史君には今もすごく感謝しています!

JS: 信成さんにもそんな時代が!

NO: 僕らが高校生の頃、全日本は深夜に放送されてたんですよ。武史君や(田村)岳斗君達ががんばっていた時代があって、今の僕達があります。

NO: ジェフとは、今もリンクで練習を一緒にする機会があって、「年々うまくなっているんじゃないか?」と。僕が言うことでもないですけど(笑) ジェフの練習を、他の選手も皆見入ってしまって、練習が終わる度に、皆拍手で!「どんどん、さらに輝きを増している!」と。それぐらい、「すごいな」というスケートを間近で見させてもらって、いい経験を積ませてもらっています。

JS: 憲子先生についてもお願いします!小さい頃からずっと指導を仰いでいらっしゃると思うのですが、前回のお話のように、反抗期も⋯

NO: あり(笑) 中学生くらいまでは、本当に反抗期で。まだまだ、自分の行動に責任が取れる年でもないので、「ああしなさい、こうしなさい」と言われていて。でも、高校生になって、「まだまだスケートがうまくなりたい!」と思い始めて、自分から積極的になんでもやるようになってからは、「こうすれば?」とか、「こうしたい!」と言ったら「そうしてみれば。」というアドバイスはくれますが、スケートに関しては任されています。

JS: 憲子先生にも見守られて。

NO: やはり、「母親」ということもありますし。ケンカはたくさんあったんですけど。

JS: えー。信成さんが!

NO: 僕、めっちゃワガママなんで!(笑)

JS: えー!まさか!

NO: いえ、思い通りに行かないと「やだやだ」っていうタイプで(笑) それは、日頃から反省しています。

JS: そうは見えませんよ!

NO: (笑) 奥さんもいつも悩まされていると思います。「こうしたい!」って思ったら、言う事を聞かず、で。

JS: 「曲げない」っていう。

NO: それもありますけど、ダダこねたり(笑) 「こどもか!」みたいな(笑)

JS: えー!⋯そうか、「我(が)ぁー」が張ってるんですね。

NO: 「我」が強いんですよ!(笑)

JS: (笑) やっぱり、「個」を確立するには、自我を強く持たないと!


JS: 来季へ向けて、今は体作りをされていると思うのですが。

NO: 今は、膝は使えないので、上半身の腹筋であったり背中の筋肉が衰えないように、次に練習する時まで、コンディションを維持できるように努めています。もう少し体幹を鍛えて、膝に負担をかけないような「まっすぐしたバランス」を保つことも目指して。それから、体が硬いと(関節)可動域が狭まって、やはり負担がかかってしまうので、「柔軟性」もつけるように。

JS: ⋯「バランス」ですが、陸の運動だと、「重心を頭のてっぺんに」とか、「目の奥のほうにある中心を意識する」というような教育があって。氷の世界ではどうなのでしょう?

NO: 一言で表すのは難しいんですけど、「トータル」ですね。『上半身と下半身の使い方のバランス』もありますし、前のめりにも後ろにもならない、「自分のしっかりとした『軸』を見つける」ことも大切で、それを支える筋力も ある程度必要だと思います。『トータル』で見てきちんとバランスが取れているのが、理想的かな、と。

NO: ⋯僕、左足で立てないんですよ。

JS: 片足立ちで。

NO: そう、足の裏が外側(左)に反転してしまって。それで、「なぜそうなるか」というのを、トレーナーさんと研究していて。以前は、そんなこともなく、内側で重心を取れていたんですけど、年々、お尻(左股関節)の筋肉が硬くなってきて、

JS: ジャンプとか全部同じ方向に回るし、

NO: そう、お尻の筋肉を使うので。

JS: 大臀筋とか?

NO: そう、その足を支える部分が硬くなって動かないから、そこでカチッとバランスを取れず、それで外側に傾いてしまう、と。だから、そこもストレッチしないといけないんだな、と思って、お尻周りの筋肉を多くストレッチしています。そこもきちんと可動するようにして、動作にかかる(各部位の)負荷をそこでも分散できるように。

JS: そこまで、自分の体を操縦するような感覚は、陸のスポーツにはないですね。

NO: 氷の上って、「押すと力が生まれる」じゃないですか、

JS: それが「滑り」になる、と!

NO: それを、「どうコントロールするか」という。

JS: もう、ほんっとに、フィギュアスケーターは精密機器ですね!

NO: (笑) ほんとに。そこでちょっとずつバランスが崩れてくると、怪我にもつながって。その結果、自分も怪我したのかな、と思うところもあるので、『バランスをきっちり整えてやらないと!』と思っています。

JS: 怪我によって、体全体を見直す、じゃないですけれど⋯

NO: そう、いい機会にもなったと思います。

JS: 来季のプログラムはどうされますか?

NO: 今は、両方とも変えて、また新しく「一から」という気持ちなので。練習して、ある程度体も出来てきて、滑れるようになったら、振付も開始したいな、と。


JS: お別れに、前々回のインタビュー(2006年)から、大分月日が流れておりますので、再び、Japan Skates Interview の恒例の質問にお答え下さい。「今まで、ファンの方からもらったプレゼントの中で、一番不思議なものは?」「T-バック」以後、なにかおもしろいものをもらわれましたか?

NO: ⋯2009年の中国杯の時に、僕、やたらバナナの人形を頂いたんですよ。

JS: ?

NO: 会場の近くに動物園があったので、連盟の方が、「サルと間違えてるんじゃないの?」と(笑)

JS: えー!(笑)

NO: こんなに(両手に抱えるほど)いっぱい!サルの人形もあって。「サルと間違えてるんだ!」って(笑) それで、「うーん⋯ (サルがいるのは)隣ですよ。」と(笑)

JS: (笑) もしや、ノリツッコミを期待されてたんですかねぇ?

NO: だとしたら、僕、大失敗です。「⋯」ってかんじだったので。1個目は、まだ分かるじゃないですか、

JS: 「あ、バナナ」と。

NO: 2個目も、「バナナ。(×2)」で、3個目くらいになると、「ん?」となって、4個5個になると、「?? うーん⋯」みたいな(笑) 最終的にサルが飛んで来て!

JS: (笑) ノリツッコめず、でしたか。

NO: (笑) そこはすごく、残念でしたね。

JS: (笑) 関西人としては、やはり⋯

NO: きちんとノッて、ツッコむということが出来ず、「すごく、申し訳ない気持ちでいっぱいです。」⋯(笑)

JS: (笑) では、なにか素敵なものは?

NO: 入浴剤は、頂くとうれしいですね。毎日がたのしくなって!

JS: いろんなお風呂で!

NO: 金箔の入浴剤を頂いたことがあって、すごくリッチな気分でした(笑)

JS: バスタブ出たら、金ぴかの信成さんが。

NO: もう、すごかったです!(笑) あとは⋯ 子供が生まれてからは、ありがたいことに、子供のものをたくさん頂いて!親子で使うセットも。愛用させて頂いてます!

NO: 手作りのものだと、僕の今までの衣装が着せ替え出来る、僕の人形を頂いて。

JS: わぁ〜

NO: すごく心を込めて下さっているな、と。

JS: それで、お子さんが遊べますね。

NO: もう、遊んでますね!(笑)


Nobunari ODA 織田信成 © Japan Sports
2010-11EX"I Could Have Danced All Night"
@ 2010 MOI


JS: 最後に、皆さんへのビデオメッセージをお願いします。

☞ Nobunari ODA 織田信成選手 @ Umeda station 梅田駅 on January 26, 2012


Extra Time

信成さんのお話は、まだまだ続きます。たのしいひとときを御一緒に。

JS: (ロシア選手権の話題になり) プルシェンコ、すごかったですね!⋯どうにかして(4Tを)降りるんですねぇ〜。

NO: (笑) プルシェンコのすごい所は、アクセル!本当にキレイなんですよね。カーブ(入りの軌道)・タイミングが、常に!一定で正確。

JS: なるほど!

NO: 皆、調子が悪くなったりすると、どうしてもそれが狂っちゃうんですよ。それで失敗してしまったり。でも、プルシェンコ選手が3Aを失敗するところを、見ることがないので!

JS: そうだ!

NO: まず、そこがすごいし、四回転も超すごいし⋯「どうやったら、あんなにジャンプが飛べるのかなぁ?」という風に思いますね。

JS: "Sensational!"なジャンプを飛ばれる信成さんでも?(British EURO SPORTSの中国杯FS解説)

NO: いや、もう、レベルが違う。おこがましい、くらいです(笑)

NO: 2004年のヨーロッパ選手権で、(ブライアン)ジュベール選手に敗れたんですけど、フリーは、最初のアクセルを失敗して、「珍しいな」と思って見ていたら、最後の最後に、3Aを飛んだんですよ!

エフゲニー・プルシェンコの2004EURO FS"Tribute to Nijinsky":
プログラムは、不世出のバレエダンサー/振付師・ニジンスキーに踊り捧げる、清冽な叙情詩。冒頭4T-3T-2Loを軽々成功した後、3Aの踏切が乱れて1A転倒、続く2本目の3Aもシングル。3Lzのところで渾身の3A-3T-2Loが決まり三度目の正直!⋯の直後に、ほとんど助走のない3Fの着氷で両手を付いてしまう。ニジンスキーの振付をコラージュし心象を瞬くように踊り刻むトランジションとステップ、3Lz、3Lo、ビールマンも入ったスピンで調子を取り戻し、ビールマンのスパイラルを経て、3Sのところで3Aを決める!ダブルになったものの、替えた3Sもスピン前の最後のトランジションにねじ込もう、という気骨を魅せる。前衛的なポジションでめくるめくスピンも見どころ。

NO: 一番最後なんて、一番体力的にしんどいところ、ほんっとにキレイな3Aを飛んでたので。それに、すごい衝撃を受けましたね!(笑) 僕はその時、3Aなんて未知のジャンプだったので。それを、何回も巻き戻して再生してずっと見てて(笑)

JS: 入りも、3Aの助走で?

NO: 僕も、2Aで飛ぶと思って見てたんですけど、「クルルッ」と3Aを回ったんで!

JS: !!⋯どうやって飛んでるんでしょう。絶対的なタイミング持ってるんですかね?

NO: そう、多分、ほとんど力を使わず、自分のタイミングと、あとはスケートの伸びで(流れに乗って)飛んでるので、あれだけキレイな3Aで。⋯体の使い方がすごいな、と。

JS: どんなスポーツでも同じだと思うんですけど、自分は、運動って、「モーションをいかにタイミングに合わせるか」だと思っていて、

NO: うんうん。

JS: そう、モーション(フォーム)だけでもだめ・タイミングだけでもだめ、と。その2つが合わないと!って。

NO: そこがもう、プルシェンコは完璧なんですよ。常に!

JS: わぁー。でも、日々、コンディションが違うから、

NO: そう、体が疲れてると、モーションが遅かったり、タイミングを待っちゃったりとか、⋯(プルシェンコは)しないんですかね!(笑)

JS: (笑) コンディションが良すぎても、だめですよね、

NO: そう、(モーションが)早くなって。⋯プルシェンコの感覚が、「人じゃない」(笑)

JS: (笑) それで「宇宙人」と!

NO: それが長年トップにいる実力なのか、と。ショーで、一度一緒になったのですが、その時も(1プログラムで)3A3本飛んでましたからね!(笑) 体力だけじゃ、絶対無理です。

Evgeni Plushenko エフゲニー・プルシェンコ © Japan Sports
2010 Prince Ice World

JS: なにかを心得てるんでしょうね。⋯ある種の「神業」的な?

NO: ですね。「才能」と言うレベルではない。「人間を超越した感覚」っていうかんじです。

JS: スラヴ系の、ロシアとかのアスリートは、正確無比なかんじですよね。もちろん、力がコントロールにも作用しているんでしょうけど。どういうことか正確で!

NO: タイミングが「バチンッ」と合うんですよね。いつもアクセルを見る度に、「⋯すごいな。」と。

JS: じゃあ、四回転も、いつもタイミングだけは合うんですかね?

NO: 今までプルシェンコが飛んで来た四回転を全部見てたんですけど、

JS: えー!ぜんぶ!?

NO: (笑) 全部、同じタイミングなんですよ!

JS: やっぱり。

NO: (踏切る前に)後ろのエッジに乗った瞬間からターン(踏切って回る)のタイミングが全部同じで。「待つ」とか、ないんですよ!

JS: タイミングが、

NO: 合うんですよ!

JS: で、回転の途中でモーションが崩れても、それを制御するボディーコントロールもあって。

NO: そう。自分のを見ると、「0.何コマ」とか、ちょっと待ってるんですよね、緊張とかすると。(1コマ=1/30秒)

JS: そう、(運動のタイミングは)0.01秒(コンマゼロ)の刻みなんですよねー、

NO: そう、「待っちゃだめ!」というところで待っちゃって。見てて、自分だけが分かる!

JS: あー、それ分かる!

NO: 「待ってる、待ってるソレ!」って。

JS: 「(このタイミング)違う違う違う」と思いながら、待っちゃう。

NO: そう!

JS: ⋯いやぁー、これはよいお話を頂戴しました!これは、スポーツファンが大好きなお話ですよ!

NO: (笑) どんな精神状態でも『自分のタイミング』に合わせるようにならないと、と思います。


Evgeni Plushenko エフゲニー・プルシェンコ Nobunari ODA 織田信成 © Japan Sports
2010 Prince Ice World


——録音機器の電池が切れてしまいましたが(申し訳ございません!)、たのしいお話は続きます。

冬期国体に出場された神崎範之選手について、「3Aまでトリプルを飛べるんですよ!」とうれしそうにお話しだった信成さん。「英語の先生になる」という夢は、「上からじゃなくて、『こうしたらいいんじゃない?』」と「一緒に作っていく感じ」のフィギュアスケートのコーチへと変わっているそうです。

カナダでペアの子供達の練習を見た際、「小さな子達が、手を繋いで一緒に滑るところから始めて、最初はゆっくりと女の子を持ち上げる。」そんな姿に感化され、ペアやアイスダンスのユニゾンにも魅せられているとのこと。サフチェンコ/ゾルコビー組の「二人の一体感」、ヴァーチュー/モイア・デイヴィス/ホワイト組の「うまさを見せ切る力」、ロシアの若手カップル ボブロワ/ソロビエフ組の「一歩が伸びる!」ドミトリーのスケーティングと「それについて行ける」エカテリーナ⋯ と、来る世界選手権では、彼らの演技も楽しみにされています。

「フィギュアスケートの練習には、スケーティング/ジャンプ/スピン/ステップ、持久力瞬発力、バレエまで、いろんな練習が要ります。それに加えて、ユニゾンの練習、カナダの技術も吸収して、日本のフィギュアスケートの歴史も受け継いで行きたいです。」将来は、そんな"織田信成コーチ"に会えるはずです!



☞ "Remember" Shizuka ARAKAWA 荒川静香 - Nobunari ODA 織田信成 - Fumie SUGURI 村主章枝 - Yuzuru HANYU 羽生結弦 - Daisuke TAKAHASHI 高橋大輔 東日本大震災を『忘れない』

☞ Nobu's finale should be "usual" 2013年3月 次回のインタビュー (on Pigeon Post)

☞ Nobunari ODA gave color to Japan Skates 2011年3月 前回のインタビュー