thanks to: SYNCHROPHOTO.EU for "emotive" photos, NORAYA ノラヤ (NAHO YAMAMOTO) for our "beloved" green pigeon
by AIKO SHIMAZU 島津愛子
posted on June 24, 2015
日本にはポテンシャルはあると思うんです。世界の強豪国のように、5歳〜8歳の幼少教育から取り組めるようになればと願っています。また、個々のスケーティングスキルを上げていくことも必要ですね。
チームのユニゾンを醸成するには少なくとも3年はかかると思いますけれども、トップチームならば、新加入の選手を入れてチームを編成し直すこともいくらでも可能だと思うんです。でも日本は、シンクロ経験が長くてシンクロに理解のある「シンクロスケーター」自体の数が16人いるかどうかです。
——シンクロ歴2年目でチームサプライズに加入された木内千彩子選手(2011年全日本女子シングル出場)のケースを考えると、全日本出場クラスのシングルスケーターにシンクロにも挑戦してもらえば、最強の代表チームが出来るのではないか、と夢見ているのですが。
シングルとシンクロでは、やることが違いますね。「一人で魅せる」ことに小さい頃から打ち込んできた選手に「チームで魅せる」意識や協調性をすぐ持ってもらうのは大変だと思うんです。
また、技術面では、例えばスケーティングでは膝の使い方も全員で合わせなくてはいけません。自分の滑りもチームに合わせる必要があります。"呼吸"を合わせるように、膝のアップダウンを合わせなければ。そういったシングルとは違う技術をすぐに習得するのも難しいですね。
気持ちと技術がすぐについて来るかと言えば、そう簡単ではないです。ジュベナイルの頃からシニアまで、受験を乗り越えながらシンクロを続けている選手もいます。僅かながらも生え抜き選手が育ってきているのですが。
——やはりそういった「シンクロスケーター」の育成を考えないといけませんね。
それがあっての、あのトップチームの演技だと思うんです。「シンクロスケーター」だからこそ魅せられる演技。簡単ではないことを成し遂げているからこそ、美しさをもたらし感動を呼びます。そこには並々ならぬ研鑽があるのだと思います。
その世界のトップチームの演技を生で観る、"心を射抜かれる"みたいな機会がないと、シングルのスケーターにシンクロへの興味を持ってもらうこともないかなと思います。
来年の3月には、中国でトップチームの招待試合があるんです。ここでトップチームから吸収したい・国際試合のオーガナイジングをやっておきたいという意図もあると思います。⋯中国はもう「シンクロをバリバリやる気」です!
——ワールドに出てないのに!?
ワールドにはあえて「出してない」んだと思うんですよ。マイアミ大学でお世話になったコーチから「中国におチビちゃん達を教えに行った」と伺ったのが3〜4年前のことです。ワールドには出して来ないですけど、えらいことになっているのでは⋯「上海雑技団」みたいなチームが生まれるのではないでしょうか(笑)
——是非見たいです!どえらいリフトが見られそうです(笑)
ロシアも一時期アクロバティックな方向性を見せていたこともあり、ロシアと中国ですごい戦いが繰り広げられそうですね(笑) 日本のほうが中国よりもシンクロの歴史はあるので、同じアジアのチームとしてメンツを保てるか、関係者一同戦々恐々としています⋯でもワールドに出て来ないので力量も見えて来ないという(笑)
——トライアウトで日本選抜の代表チームを作ることはどうでしょうか?
2チームしかない現況で1つの代表チームを作ってしまうと、もう1つ分のチームがあぶれてしまい、結果的にシンクロ関係者や競技人口を減らすことにもなりかねないと思います。代表チームのコーチングにしても、どちらのチームが主導するかとか自チームの練習との兼ね合いはどうなるのか、難しい問題がありますね。
——チームそれぞれにトライアウトを行うことはどうでしょうか?
次の五輪が決まると状況も変わってくるかもしれませんが、現時点では全員受け入れたとしても20人集まるかどうかというところなんです。人集めにまだまだ四苦八苦しています。
——トップチームで活躍する選手達がいるので代表チームも作れるのではないかと思ってしまいますが、厳しいですね。
トップチームでは、やはり『シンクロの土壌』と輝かしい実績もあるので、個々のメンバーのシンクロへの理解もあり練習環境も整っています。それでも苦労はあると思いますが、日本では東京だとリンクも飽和状態なので、例えば夜中の1時に練習することもあります。14歳から20代の女の子達が週に何回かその深夜帯で練習する。その生活を覚悟してやれる選手達と、その選手達を送り迎えしてくれる親御さんがいないと成り立たないです。
そんなに頑張っても「順位がついて来ない」という苦しさもあります。トップチームであれば、そのチームに所属することが誇りにもなります。でも日本では、選手達が「トップ選手だ」という気概を持つに至らないと思います。日本はまだ、『シンクロの普及』に努めて、シンクロをおもしろいと思ってくれるスケーターを増やしている段階ですね。
——地方のリンクを一定期間取る、ということも大所帯だと難しいですね。
経費も人数分かかり、またその人数の日程を調整するのも大変です。3ヶ月前ぐらいから調整してその間に入った選手の日程も合わせなくてはいけません。⋯「死なないように頑張ってます」という現状ですね(笑)
——(笑) 一にも二にも、その日本の健闘やシンクロの真骨頂を知って頂くことが先決ですね!
木内選手や小川真理恵選手(ヘディネッツ・アメリカ)のように、シングルで7級の技術を持った選手がシンクロのトップチームで活躍していると、シンクロの認知度や地位も上がると思うんですよ。
日本のシンクロ強化には「これ」という突破口を作るというより、バランスを見ながらあらゆる面から考えていかなければと思っています。環境を整えることや、これまでのシンクロ関係者の個々の繋がりをネットワークとして機能させることも重要です。
今はそれぞれのチーム内でのレギュラー争いもトップチームとは違います。トップチームでは24〜26人ぐらいでチームを組んで、レギュラーが16名、国際試合にエントリー出来るのは20名なんです。4〜6人が選手登録されず、4名の補欠の内リンクサイドで交替要員として控える選手が1名です。そうやって序列が決まっていく状況はとてもコンペティティブだと思うんですね。補欠選手も「技術職」で、全ポジション覚えなくてはいけない、とか。やはり「ポジションがなくなる」という危機感はチーム全体を強くします。
——競技人口の少なさが本当に問題ですね⋯活路を見出すにはどうしていけばいいのか⋯と先程から考えているんですけど⋯
強豪国はそこが上手なんだと思うんです。競技人口を増やすために、シンクロも他のカテゴリー同様にスケーターに触れさせるようにオプションとして紹介出来ていますね。そのプロモーションもあって、アメリカはシングルと両立しているスケーターが多いんです。アメリカは大学スポーツがビジネスとしても成立しているので、チームとしての運営も出来ています。
いろいろな課題をひとつひとつ解きほぐして考えていこうと、ワーキンググループが立ち上がったんです。チーム自身はもう限界まで頑張っているので、外部から組織立ってオーガナイジングしていこう、と動き出したところです!
競技人口を増やすには、まずはシンクロ競技のおもしろさをスケーターに伝えていくしかないと思います。日本チームの頑張りを伝えるというのも、お涙頂戴になっちゃうかな、と(笑)
——(笑) いえ、感涙の大健闘をお伝え出来まして幸いです!
世界を目指すのも難しい段階なので、「チームとして魅せる」のがおもしろい・強調性が心地よいということを伝えていきたいです。
今シングルのスケーターをシンクロに振り向かせるとしたら、今大会のトップ5ぐらいの演技を見てもらってシンクロの凄みを知ってもらうことでしょうか。日本の頑張りも理解してもらってその上でシンクロ界に飛び込んでもらえたらいいです。
美術学校が始まりいっそう忙しくなった14-15シーズン。
Chisako KIUCHI @ her EX of "fine art"
PP: まずは、ピョンチャン五輪での種目採用が見送られたことについてお伺いします。
CK: 世界でもいろいろな動きがあったので、五輪種目になってくれればと皆思っていましたし、残念な気持ちは強いですね⋯これを「2022年」に繋げていきたいです。
PP: もし2018年のピョンチャン五輪で種目になった上で、外国籍選手枠がなかったとすると、千彩子さん御自身はどうされていましたか?
CK: スウェーデンの国籍を取ってサプライズで出場することを、もしかしたら考えていたかもしれません。アンドレア(ドハニーコーチ)から国籍を取ってサプライズとして出場してほしい、と言われていたので⋯
PP: そうですね⋯もう4シーズン「サプライズ」のメンバーで戦われてきました。
CK: でも「日本で演技したい!」という気持ちも強かったです。
PP: ⋯難しい選択となっていたのですね。
PP: 15年世界選手権についてお聞かせ下さい。
CK: 今大会の「5位」は、昨年の全てを出し切っての「5位」とは全然違います。今シーズンのフリーはもっと上位を狙えるものでしたし、もっと良い演技も出来ました。そういう面で最後にちょっと後悔が残る、悔しいシーズンになっちゃったかなと思います。
ショートは良い演技が出来たんですけど⋯今シーズンのショートは大変だったんです。今回はというか今回"も"なんですけど「奇抜な」、サプライズにしか出来ないプログラムをやっていて、それに対して世界選手権前にいろいろな意見や評価もあったんです。
PP: コメディエンヌな演目でしたね。
CK: そのような反応を受けてチームでもいろいろな考えが出ていたのですが、最終的にはそのプログラムを貫き通せました。それがよかったなと思います。
PP: ショートは技術点トップの3位で、演技構成点を加えた得点も1位まで僅かな点差で、
CK: そうなんです!
PP: そう、だから、エレメンツが倍(SP5→FS10)となるフリーで、しかも"Human Equality"っていうメッセージ性も演技もとっておきのプログラムで、技術点も演技構成点も見込めるし「逆転もあるのでは?」と思ってたんですよ!
CK: (笑) そうですね⋯
PP: その優勝へのプレッシャーもチームにはありましたか?(フリーは6位に。総合では3位と1.51点差の5位)
CK: やはりありましたね。最終滑走の影響もあったと思います。
PP: 大会中に怪我をなさったと伺っていましたが。
CK: ショート前日にリフトから落ちて、リンクで腕を縫って練習を続けました(笑)(笑い飛ばす様子)
PP: 強い(笑) 演技ではまったく窺い知れず、でした!
CK: 演技に入るとまったく(痛みは)気になりませんね。
CK: 次回の世界選手権はアンドレアの故郷ハンガリー・ブダペスト大会なので、それも含めてチームは盛り上がっています!頑張っていこうと思っています。
PP: それに、2018年のピョンチャン五輪はなくなったところ、スウェーデン・ストックホルムワールドが決定しましたよ!
CK: そうなんです!「私いつ引退出来るんだろう?」って(笑)
PP: (笑) 2018年ストックホルムワールドまで是非お願いします!
海外組の橋田・花本・小川選手と @ 2015 Worlds
Chisako KIUCHI,
L Kana HASHIDA, Yu HANAMOTO, Marie OGAWA R
木内千彩子選手:
「日本でシンクロを広めることや日本のシンクロを世界トップレベルにすることは、とても難しい状況です。それでもその難しい状況を変えていけるのは、現場でその状況を理解している私達であると思うので、コツコツと頑張っていくしかないです。」
☞ Chisako KIUCHI 木内千彩子選手 [Synchronized skaters - they're united, entertaining, and competing] 2014年6月の「今すぐシンクロにアツくなれる」インタビュー
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