text: OKKO the PIGEON GUILLEMOT 海鳩オッコ
posted on February 17, 2014
((担当: 海鳩オッコ Okko the Pigeon Guillemot))
☞ リード/リード、デービス/ホワイト、ヴァーチュー/モイア、ボブロワ/ソロヴィエフ、ペシャラ/ブルザ、イリニフ/カツァラポフ組 on J SPORTS
ヴァーチュー/モイア組 2014年カナダ選手権インタビュー on J SPORTS
☞ SD|☞ FD
ケイトリン・ウィーバー/アンドリュー・ポジェ
カナダ代表
2014年カナダ選手権2位/2013年ISUグランプリファイナル5位
ウィーバー168cm、ポジェ193cm、見栄え抜群の高身長カップル。2010年の地元オリンピックは、カナダ選手権でわずか0.3ポイント差の3位(2枠)で出場を逃し、悔しい思いをしました。その後躍進を続け、特に2011−12シーズンのFD『Jesuismalade(灰色の途)』の情熱的を遥か超えた鬼気迫る演技で、世界中の多くのファンのハートを掴みました。2012年末、ウィーバーが練習中に足首を骨折しましたが、3カ月後の世界選手権で復帰、5位に食い込んでいます。
大人の雰囲気を漂わせる2人は、明るくも暗くも、軽快にも重苦しくも、男女のドラマを演じ分けることが得意です。さらに、スタンダードもラテンも、さまざまなリズム課題を見事に表現してきます。
また、伝えておかなければいけないのはその人柄。デトロイトを練習拠点にする2人は、世界各国から練習に集まる選手にフレンドリーに接し、リンクメイトの高橋/木原組や振付に訪れる鈴木明子選手など日本選手とも親交が深いです。また、2011年の世界選手権では被災した日本に向けて手作りのメッセージボードを掲げ(地上波で放送がなかったのが非常に残念)、2012年はメダルを争っていた同門カップルが素晴らしい演技を披露すると、真っ先にキス&クライに駆けつけ祝福のハグをする⋯覚えて下さい、『ウィーバーは聖女』。
SDの課題は得意路線とは思っていましたが、ミュージカルのタップダンスを氷上で表現するという、ひとひねりに唸るオッシャレーなプログラム。FDはこれぞアイスダンス!と激賞したい情熱のタンゴ、男女の視線バッチバチです!
アンナ・カッペリーニ/ルカ・ラノッテ
イタリア代表
2014年欧州選手権優勝
ベテランの域に達しても、なおそのキュートさでファンをメロメロにし続けるお洒落カップル。2010年のオリンピックでは最初の種目コンパルソリー・ダンス(現在は廃止)で1番滑走で登場したものでしたが、あれから4年、拠点やコーチを変えながら実力を伸ばし、ついに今年欧州選手権で優勝を勝ち取り、表彰台の頂点で高らかにイタリア国歌を歌い上げました。
躍進のポイントはスピードの向上、ツイズルの安定と質の向上、そして各エレメンツできっちりとレベルを取る正確性を身につけたことです。今季のスケートアメリカでは、ショートダンスでレベルの取りにくいノットタッチステップを含め、オールレベル4を獲得しました。ドラマチックな演技力、柔軟性を活かした豪奢なリフトなどを素晴らしいバランスで組み合わせたプログラムを送り出してきます。
そして、何といってもこのカップルは衣装!素敵衣装の多いアイスダンスですが、単体の美しさだけでなく、カップルとしてのトータルコーディネートに優れ、かつ動いたときの見え方まで考え抜かれている⋯毎年の楽しみの一つです。
SDは前述のウィーバー/ポジェと同じミュージカルですが、違う曲を使用。ホップやツイズルの多い課題のステップの動きを、大変華やかに彩るカッペリーニの衣装はベストスカート賞を差し上げたいです。ラノッテのブレザーときっちり色を合わせて(某小学生探偵に見える、とか言ってはいけません)。FDは喜劇のオペラをどこまでも楽しく、愛らしく、華やかに演じるプログラム。最初から最後まで、流れを止めることなく笑顔で踊り、とてつもない幸福感を残します。
マディソン・チョック/エヴァン・ベイツ
アメリカ代表
2014年全米選手権2位/2013年国別対抗戦1位
2008年と2009年の世界ジュニアチャンピオンが組んだカップル。元々は別のパートナーと組んで、ベイツは前回オリンピックに出場しましたが、怪我があり解散。チョックも、GPSの表彰台に乗ったパートナーが引退し、2011-12シーズンからカップル結成しました。さらに2012年シーズンオフには、拠点リンクを追い出される(解雇)形で新天地Noviに移動したイゴール・シュピルバンドコーチに着いて拠点変更。指導体制が変わったことが吉と出て、このシーズンに全米2位に躍進し、四大陸選手権でもメダル獲得。世界のトップ勢の後を追っています。
身長差30cmとかなり体格差のある2人ですが、それを感じさせないのは何とも色っぽく酸いも甘いも噛み分けた風にすら感じさせるチョック(21歳)の独特の存在感と、ベイツのリード技術の賜物。アメリカのカップルらしい爽やかさと、どこか退廃的で徒なムード、両方が混ざり合って何とも個性的な空気を作ることができるカップルです。
SDは、華やかなショービズの舞台のような、"徒な方"に振り切れたプログラム。チョックのど迫力の表現が楽しめます。FDは『レ・ミゼラブル』から、高らかに歌い上げるワン・デイ・モアを中心に選曲。音楽も演技も大変ドラマチックな、ボリューム感のあるプログラムです。
ペニー・クームズ/ニコラス・バックランド
イギリス代表
2014年欧州選手権3位
アイスダンス伝統国の英国代表を継ぐ、キュートでエッジィなカップル。やはり30cmの身長差がありますが、こちらはそれを積極的に活かしたダイナミックなリフトをプログラムのアクセントに組み込んできます。団体戦では、SDでクームズが宙返りのように反転したところを持ち上げるリフトで、わっと会場が湧きました。
このカップルは日本でも記事になりましたが、バックランドが心臓手術を乗り越えてのオリンピック参加になります。2010年の前回オリンピックに出場した際に、バックランドに頻脈の症状が現れ、だんだんと悪化し、時に脈拍が270〜280にまで達したそうです。昨年7月に、左胸部皮膚下にUSB型のレコーダー機器を埋めて脈拍数をモニター。その結果、10月の試合に出た後に心臓の余計な神経回路を取り除く手術を行いました。そこから1カ月後のエリック杯で復帰し、年明けの欧州選手権では初のメダルを獲得しました。
⋯という壮絶な状況下でも、悲壮感をひとかけらも感じさせない演技、お互いにパートナーと踊ることが一番楽しくてハッピー、というポジティブな感情が2人のダンスには現れています。でも、それは時にエッジィな方向へ。SDは特に、クイックステップ=ボールルームダンスのイメージを一刀両断し、スクラッチ音入りまくりのフロアダンス風にアレンジ。FDはシルク・ドゥ・ソレイユのマイケル・ジャクソン・トリビュートショー『THE IMMORTAL』より。クールかつ華やかな、容姿の端麗さを活かしきったプログラムです。
マイア・シブタニ/アレックス・シブタニ
アメリカ代表
2014年全米選手権3位/2011年世界選手権3位
日系の兄妹カップルで、それぞれ「ハルミ」「ヒデオ」というミドルネームを持つ2人。シニアデビュー戦はNHK杯で、いきなり表彰台乗りし、その後も毎年NHK杯に参加、ショーなどでも多く来日してくれています。そのシニアデビューシーズンの世界選手権で銅メダルを獲得し、一気に世界のトップ選手に名乗りを上げました。
兄妹ならではの優れたユニゾンと、きれいなスケーティングが持ち味。ボールルームダンスのような正統派の、クラシカルなダンスに定評があり、古き良きアイスダンスの香り⋯または1930年代〜50年代のハリウッドミュージカル映画の洒脱な雰囲気を若くから持っています。
また、特技は映像編集。試合やショーの合間にさまざまなスケーターと、ダンスやオフ風景、小ネタなどのビデオを撮っては公開してくれます。ShibsibsのYouTubeチャンネルで公開されていますので、是非ご覧になってみてください⋯ユーモアセンスの高さが窺い知れます!
SDの課題リズムは得意路線ど真ん中と言っていいでしょう。マイケル・ブーブレの曲に合わせて、少し変化球気味に、しかししっかりと持ち味である洒脱さ(19歳と22歳にこの言葉を使うとは!)を発揮しています。FDはマイケル・ジャクソンの振付を担当したTravis Payne氏が参加して作ったダンスプログラム。クールな振付は、彼らの正統派イメージの殻を打ち破る作品になりそうな予感です。
ネッリ・ジガンシナ/アレキサンダー・ガージ
ドイツ代表
ドイツが生んだ、氷上の名優カップル。一風変わったエンターテインメントなプログラムを毎年作り、シリアスな恋愛ものからポップなコメディまで、幅広い演技力を見せてくれます。特に、2012-13シーズンFD『Zombies』は、披露した場所のどこでも熱狂的に⋯笑いを取れる、鉄板プログラムです。その他アイスショーでは、エアリアルのプログラムも披露しています。
団体戦ではガージがドイツの主将を務め、巨大カウベルを持ち込んで盛大に鳴らしてチームを盛り上げていました(運ぶのは大変重かったそうです)。カウベルが重すぎて上半身の筋肉をやられてみたり、個人戦のスタンドからもカウベル音が聞こえてきたり、ロシアの太鼓と勝負していたり⋯間違いなく今大会一番面白い人です。
今回のプログラムは、SDとFDのストーリーが続いている、というのは昨季のデニス・テン選手もやっていた取り組みですが、「えっ?そこまで続けるの?」という続きっぷり。これは革命です。そのストーリーは⋯本が大好きな老大学教授(ガージ)を気まぐれに誘惑する上流階級の女性(ジガンシナ)。手に手を取ってフィンステップを踊るうちに、教授はノリノリに!やがて疲れて眠りについて⋯目覚めたら公園、上流階級の女性は我に返って大変なことをしてしまったと、教授が眠るうちに逃げようとするのだけど⋯?ここまで書いてて何の話だ、と疑問が湧きましたが、「アイスダンスです」。この先の展開は、ぜひFDで見届けてくださいませ。
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