
thanks to: JAPAN SPORTS for photos, PAJA for illustrations
by AIKO SHIMAZU 島津愛子
June 20, 2013 in Osaka
Tatsuki MACHIDA @ 2012 Cup of China
2012年の四大陸選手権以来となる今回の取材は、町田樹選手御本人も「異例な感じですか?(笑)」とおっしゃるように、初の大学校舎でのインタビューとなりました。競技や学問に身を投じている、そんな自分を楽しんでいるようなもう一人の樹さんを、どうぞ皆さんも感じて下さい!
PP: まずは、ファンの皆さんも御心配なさっていたと思いますので、昨季の好不調について、お聞かせ下さい。
TM: 中国で良い結果(優勝)を残せたのですが、1ヶ月で3ヶ国(スロバキア・アメリカ・中国)に行く、というような試合が詰まった状態で、そこからぽっかりとスケジュールに穴が空いて、アメリカでの集中練習、ファイナル(ソチ)・全日本という感じで12月も全日本までに3ヶ国を行き来するようなスケジュールになってしまったので、「バイオリズム(周期)」じゃないけど⋯うまく合わなかったですね。
⋯皆「同じ条件」なんですけどね!
PP: うーん、でも、シーズン序盤に試合が固まって・1ヶ月空いてしまって・また固まって試合が、という⋯
TM: もちろん、皆忙しいんですけどね!でも、そこでバイオリズムがめちゃくちゃになってしまいましたね⋯調整のしづらいスケジュールで。
でも、それも僕の力不足だし、その反省点を今シーズンに活かして、大切な時にうまくピーキングを持ってきて。大事なシーズンですから、しっかりと邁進したいと思っています。
PP: 昨季の町田選手の囲み取材で、度々、アンソニー・リューコーチの「ジャンプを根性(fight)で回して降りて来い」という教えが出て来て、それを、この間 吉田行宏さんの取材をさせて頂いたので、
☞ 2013年3月のインタビュー
TM: (にっこりと) そうなんですか?
PP: そうなんですよ!それで、行宏さんもリューコーチの指導を受けられていたので、「『根性で』っていうのは、どういうことなんでしょう?」とお伺いしたところ、"踏み切る時にハマッてないことは多々ある、「でもそこで『アッ』と思わずに、→諦めずに回せ」ということではないか"、と、
TM: うん、まさにその通りで、テイクオフ(take-off 踏切)がうまく行けば、ジャンプなんてうまく行くんですよ、
PP: だと想ってた!
TM: (笑) 絶対に。じゃ、なにが問題かと言うと、「テイクオフがうまく行かなかった時にどうするか」。
テイクオフは、練習で精度は上がってきますけど、どんな選手でもやっぱり、試合の緊張(nerves)やプレッシャーがありますし、「氷の感触がいつもと違う」とか、そういう状況で ジャンプのアプローチ(入り)だったりプレパレーション(準備動作)やテイクオフのモーションのタイミングがずれたりしても、じゃ、「そこでパンクして諦めるのか」、そうではなくて、「諦めずにポイント(点)を取りにいくか」という差が、トップとの差で。
アンソニーは決して、「必ず降りて来い」とは言わないんですよ、要は「諦めずに最後までやってみろ」と。
PP: それだ!
TM: (笑) 「それで転んでも別にいいじゃないか」と。
PP: どういう英語ですか?
TM: どういう英語でしょう⋯基本的には NEVER GIVE UP なんですけど、
PP: =「諦めるな!」と、
TM: もし諦めてパンクしたら0ポイントなんですよ、
PP: そう、シングルになっても0点代、
TM: でも、(回転した後)転んだら、2点3点あるんですよ、では「なんでそれを取りにいかないんだ」という、そのロジックです。
PP: 「回せば」三回転の基礎点が残るし、
TM: 四回転は転んでも5〜6点位ありますからね。他のトリプルも同じように2点3点あるのに、なぜ0点と3点だったら、その3点を取りにいくほうを選ばないんだ、と。そういうポリシーですよね。
PP: ⋯回りましたね、全日本!全部!!
TM: (笑) そうですね、前だったらパンクとか目立ってたんですけど、やっぱりちょっとした心の持ち方の違いで、人って成長すると思うし。
でも、来シーズンは「ただ回す」だけじゃなくて、それをいかに「成功に繋げるか」がほんとに鍵になるから。「諦めない・回す」だけじゃだめだと思うんです、オリンピック狙うとしたら。
TM: 許容範囲を広げるんですよね、(机に「範囲」を横の棒グラフで示される樹さん) テイクオフが100%うまく行った | ちょっとずれた | めちゃくちゃずれた、で、ココで失敗。ココまでが許容範囲だとしたらその許容範囲を広くしていく練習をして。
大きくずれたとしても、それが自分の許容範囲で「ギリギリ降りられる」、みたいなそういうパワーが基礎的な体力も含め、多分、僕には必要だと思うし、
PP: 全然、体幹が1年前と違いますよ!
TM: ほんとですか?ま、ちょっと鍛えてるんですけど、そういう、スケート以外の基礎的な体力を付ければ、ジャンプももっと軽くなるし、プログラムで消耗する体力も全然違うし。技がラクになる、ってことは、プログラムに使うパワーが減っていきますよね、だからもっと余裕で滑れるし、余ったパワーを表現のほうに繋げられるんで、そういう努力はしています。
PP: 足がすごいですよ。
TM: スケーターにしては細いんですけど(笑)
PP: いえ、美しい大腿筋群です!
TM: ありがとうございます!
PP: 陸上トレーニングが変わったのでしょうか?
TM: 今まで長い間スケートしてるんですけど(笑)、その中で培ったメソッドだったり、自分の理論だったりというのを踏まえながらやっていたのを、今は、新たなメソッドを取り入れながらやってますね。
これまでにトレーナーの方についてもらっていたこともありますし、その時の経験・知識というものを、自分なりに体系化してやっていたんですけど、それが長かったので、「ひとつの方法」に凝り固まる、というのもどうかな⋯と、新しい方法・理論を取り入れようかな、と思っていた時期でもあったので。これを機に『挑戦』してみようかな、と。
TM: その、僕のマインドっていうのは、スケートにも繋がっていて——今までずっと同じところ・同じやり方で練習していて、ま、それもいいんですけど、やっぱりこの1年っていうのはほんとに大事なシーズンですし、僕の中でもスキルとかスケーティングの向上が一層必要な年でもあるので。⋯そんな考えから大阪で、新しい環境に身を置くということを決断しました。
実はこの4月から関西大学(文学部)に復学しまして、前の環境をベースにこちら(大阪)でお世話になって、新しい練習方法だったり、自分に足りない部分、自分の弱点を強化していく、っていう作業を今しています。
PP: 劇的に体躯が変わっていますよ⋯
TM: そうですね、大分やり方変えたので。今は、「基礎を固めている」「シーズンを通してしっかり戦い抜く体を作っている」というか。
昨シーズンは結果も出せたり、スキルは良くなってきているんですけど、やっぱりシーズンを通してコンスタントに自分のスキル・表現を出し切るための体が僕に備わってなかったがために、起こってしまった失敗やミスがあるので、そこが大きな改善点の一つだと考えています。
去年は、自分のスキルが世界的にも通用する部分もあるという自信も得られたし、それと同時に、自分のウィークポイントも掴んだ1年だったので、その反省をしっかり活かせるようなオフシーズンの準備に取り組みたいと思った結果、⋯「今ここに至る。」(笑) んですけど。
PP: (笑) 準備中の樹さんを次に見られるのは、「ファンタジーオンアイス福岡(7月6-7日 マリンメッセ福岡)」ですね。
TM: 久し振りに演技するんですけど、そこでまたちょっと違う自分を見せられたらな、と。 ま、でもその時期はまだまだ「発展途上」なので。シーズンは9月中旬から始まると思うんですけど、そこで完全に「進化」した自分というのを見せられたらいいな、と思っています。
TM: 今は「基礎の基礎」を固めてて。去年の僕は、(パントマイムのように、机に積み上がるブロックが見える!)「基礎があって・技術があって」と高く積み上げられたんだけど、人間 バイオリズムがありますから、いろいろな逆境だったりストレス、不調によって 簡単にこのタワーが崩れちゃうような自分だったのを、(タワーの底の部分を両手で大きく表現しながら)しっかりココを固めて、土台を広くすることによって「ピラミッド」を頑丈に。(ピラミッドが見える!) ココに技術を乗せていって、たとえバイオリズムが影響を与えたとしても 簡単には揺るがないような、そんな技術にしたくて。(ピラミッドに積み上がった「技術」が安定している様子が見える!)
去年までの僕のスキルというのは、とても「fragile(簡単に壊れやすい)」だったので。もうちょっと「solid(しっかり/強固な/確実な)」な感じで。
PP: ⋯オリンピック前に、すごい決断ですよね。
TM: (にこやかに)そう、ある意味リスキーなんですけどね。まぁ、僕はオリンピック候補者の一人ではあるんですけど、守って守って(五輪出場を)ゲット出来るわけはなくて、やっぱり攻めて、アグレッシブにいろんなことに取り組んで、もっともっと自分の能力っていうものを上げないと、先輩方の中で代表枠を獲得することは難しい、と。
⋯そんな感じのフィロソフィーでやってるんですけど、(ニコッと) まぁ、どうでしょうね(笑)
PP: (笑)
TM: シーズンまでにどうなるか。がんばります!
(攻める「町田樹」を俯瞰で捉えて、自己の挑戦を楽しんでいるような樹さんでした)
PP: ジャンプの構成ですが、自分は、樹さんは【3Aまでで250点位絶対出る!】と思ってるんですよ、
TM: ありがとうございます、そう言って頂けると本当にうれしいです。いろんな方がそう言って下さって、
PP: 絶対ですよ、
TM: そう、ありがたく思って、今シーズンは絶対その気持ちにお応えしたいし、250点を超えた暁にはまた是非取材して頂けたら⋯(笑)
PP: (笑) お願いします!
TM: (笑) もっとハイスコア狙いたいし、去年、236点(236.92)で、自己ベストを大きく更新できたんですけど、今年もそれをさらに大きく越えられれば。そのためのプログラムも計画しています。
PP: ⋯『四回転』って、町田樹選手に要ります?
TM: (笑) あのね、要るんですよ(笑)、「降りる・降りない」別として、「挑戦してるか・してないか」っていう差なんですよ。
正直、機械が採点するなら要らないんですよ。「いかにクリーンなプログラムにするか」で稼げば対価はもらえるんです。だけど人間が採点するので。
世界的に四回転を推奨するような流れになっている中、「四回転をしないと男じゃない!」みたいな(笑)、
PP: (笑)
TM: そんな考えの方もいる、かもしれない。だから、「成功する・しない」ではなく、「やっている姿勢」を見せる。
でも、僕の場合は「姿勢」だけ見せてもしょうがないと思うので、いかにそれを成功させるか、です。
TM: ⋯採点競技は全部そうですけど、人の思いだったり世論だったりトレンドだったり、っていうのが反映されるので。
PP: ファンとしては、加点しか付かないエレメンツをお持ちの樹さんが カンペキに滑って構成点も決めて、【アクセルまででどこまで点が出るか】、どこまでキレイな紙(judges scores 採点表)を作れるか、っていうのを見たいな、と⋯
TM: でも今シーズンはほんとに、「アクセルまで」と言わずに。
PP: 「(四回転)トゥループ」も、
TM: 僕はいつも「ジャンプに注目を」とだけは言わないんですよ。
PP: ですね!
TM: そう、やっぱり全体的に見てもらいたいですし。僕は『作品』を重視するほうなので、そのスタンスはもちろん一番大切だと思うんですよ。それに、さらに磨きをかけて、さらにジャンプが必要だと思うので、しっかりそこをレベルアップして。
TM: 昨シーズンは僕、応援して下さる方によろこびを与えられたと思っているし、逆に、失望も与えちゃったと思うんですよ(笑)、
PP: (笑)
TM: GPF、全日本とか。でも、僕も中国では幸せだったし、僕を応援して下さる皆さんにも多分、そういう幸せな気持ちを分けられたんじゃないかな、と思っているので。
「やっぱり、僕の周りを皆ハッピーにさせたいので。」——そんなスタンスで、今シーズンやりたいと思っています!
SP"F.U.Y.A" 2012 All-Japan
PP: 今季のエキシビション"白夜行"は御自身のプロデュース、とプリンスアイスワールド横浜公演(4月27-29・5月3-4日)でお話しでしたね。
TM: それも『挑戦』の一環として。2,3年前、ステファン先生(ランビエールさん)とかフィリップ先生(ミルズさん)に出会ってから、「何か、ものをクリエイトする」という気持ちが高ぶっていって。⋯それまでは、振付とか、何かをプロデュースするということには、あんまり興味はなかったんですけど(笑)、
PP: そうなんですか?(笑)
TM: そう、その2,3年前から急激に興味を持ち始めて。"白夜行"は、僕が最初に思いついた案で、他にも企画しているプロジェクトはあるんですけど、それが一番「具現化」しやすい、というか、具体的に自分の中で案が煮詰まってきたので、「実行に移してみようかな」と思って。
でも、ショーなので、もちろん 皆さんお金を払って観に来られていますし、僕もギャランティー(出演料)を頂いているわけですから(笑)、
PP: (笑) ショービジネスの世界!
TM: なので、僕も「そんな甘っちょろい作品は出来ない」と自分の中で覚悟、というか、
PP: 覚悟が決まりまくってましたよ!
TM: (笑)「変な演技、完成度の低いものは出来ない」っていう責任感があったので。
TM: 長く構想はしてたんですけど、いざ実行してみると、始めてのことだから難しくて。難航はしたんですけど、いろいろ勉強しながら自分なりに作っていって。初演までは恐怖心で一杯で、特に現場(新横浜スケートセンター)に入ってからは身体が震えていました。最後の最後までプログラムを確認して、音響や照明スタッフの皆様と打ち合わせをしました。
ですから 最初に披露した時の感動というのは計り知れなかったですね。結果的に、オーディエンスの皆様から評価も頂きましたし、⋯ちょっと味をしめまして(笑)、これから先もどんどんクリエイトしていこうかな、と思ってるんですけど。
PP: お願いします!
TM: いつもいつも成功作品が生まれるとは限らないと思うので、しっかりと勉強しながら。世の中には振付師は一杯いて、皆さんそれぞれの個性が光っていると思うので、僕も「僕らしい色」をちゃんと出せるようなクリエイターになれたらな、と。
⋯まぁまぁ、その前に僕は選手ですから、まだ(笑)
PP: その前にオリンピックが(笑)
TM: (笑) しっかり競技者としての自分を磨いていくことが第一で、その間の「息抜き」って感じなんですけど。
PP: 楽しみながら、と。
TM: ハイ! でもまぁ、オリンピック終わったら、「学業に専念したい」と思ってて。少なくとも1年間は、今までのような「競技生活」が出来ない、と。関西大学で勉強をちゃんとしたいし、卒業したいので。
PP: 試合は⋯
TM: オリンピックが終わってからのことは、そんなに考えてないです。僕なりのプランがあって、とりあえず今シーズンが済んだら勉強がしたいので!(笑)
PP: (笑) 素晴らしい。
TM: 学業に専念しつつ、スケートどうするのかっていう問題にも取り組もう、と。来年1年間はいろいろやってみようと思います。
今はやっぱり「選手」なので。文武両道とは言っても「選手」なので、自己管理もして 大会で成績を残すことが仕事で、スケートメインの生活をしてるんですけど、来年はいろんな経験もしてみたいですし。
その中の一環として、クリエイションだったり・競技者としてもやっていけたらなぁ、というのが理想なんですけど。⋯そうなると、「僕一人、この体だけじゃ出来ないな」というのもあって。
来年のことはそんなに明言しないですけど、この1年をしっかりと!(スケート人生)20周年の集大成を出し切って、考える時間を設けたいな、と。
SP"Push the Limits (by Enigma)" 2006 All-Japan
PP: アーティストリィーへの取り組みなんですけど、小さい頃から気を付けられていることはありますか?
TM: これ、と言ってはないけど、ちっちゃい頃から「フィギュアスケートで何かを表現する」ことは好きでした。踊るのも好きだったし⋯日本人の良い所でもあり悪い所でもある「控え目」な?「ちょっと照れたりする」とか、あるじゃないですか、そういうのがなかったですね、氷の上では。⋯陸上ではあるんですけど。僕、すごい人見知りですし。
PP: !
TM: (笑) 氷に入ったら、そこはもう表現の場なので、「どんなことでも出来る」というか。女装してコメディ風のエキシビションもしたり。
PP: !!
TM: いろいろやりましたよ(笑) 「マジック」とか。
PP: 「エニグマ」もやられてましたよ!あの不思議な(enigma: 難解な事/人)Ambient Music(環境音楽)を!
TM: そうですね、ちっちゃい頃から ちょっと哲学的なものもやってみたり。
TM: やっぱり、「何かを表現したい」とか「何かを表現することが好き」っていうこと自体が、今の僕に繋がっていると思います。
それからもうひとつは、振付師さんだったり周りのアーティスト達がいたから僕は形成されたし、すごく影響を受けている方が何人もいて。
その「エニグマ」を作って頂いた荻山華乃先生もそうです。「エアギター」の(EX"Don't Stop Me Now")を作られたのも華乃先生で。僕にとってほんとに大切な振付師さんの一人で、僕に「表現」を教えて下さった最初の方でもあるし、尊敬しています!
多分、ステファン先生やフィリップ先生に出会ったから、「何か作品をプロデュースしたい」っていう気持ちが芽生えたんですけど、作品創りだったり「どのようにクリエイトしていくか」っていうのは、完全に、華乃先生から学んでることをやっているつもりなので。荻山華乃先生には、本当に大きな影響を与えてもらいましたし、僕の「師」ですね。
PP: ⋯自分の印象として、選手の皆さんそれぞれにお話を伺っている中で、「樹さんは 他の選手とカンジ違うぞ」というのがあって。
TM: (笑) そうですね、僕、あまりフィギュアスケートを「スポーツ」って捉えてないので。
PP: ⋯私、「2001年宇宙の旅」を30回位見てるんですけど、
TM: うん、
PP: 2012年の四大陸選手権(アメリカ・コロラドスプリングス)でインタビューさせて頂いた時も、今も、その「2001年宇宙の旅」の中にいるような感じがして、
TM: (笑)
PP: (笑) ほんとに真面目に、どうやってそのような特異な感性が育まれたのかな?と。
TM: どうなんでしょうねぇ、皆からよく「変わってる」とは言われるんですけど(笑)
PP: (笑)
TM: インタビューでも、僕だけ大会とかについてあまりしゃべってないですよね(笑) ま、でも、「僕がスケートやってる理由」っていうのはやっぱり表現にあるので。
PP: 『作品』としての『表現』という。
TM: ハイ!もちろん、自分の表現を貫きたかったり、自分の表現をより多くの人に見てもらおうと思ったら、やっぱり 技術的にも磨いて「競技者としてのステータスを上げる」というのが一番の自分のプロモーションになったり、表現する場を獲得できるという一番の要因になったりするので、ジャンプとか競技者としての成績っていうのも重視しないといけない。僕のカンジでは、そのスタンスで競技をやってるんですけど。
PP: ⋯とにかく町田樹選手のジャンプのローテーションやムーヴ全般のハヤサは未曾有なんですけど(NIKEのスウィッシュマークを思い出す)、そういった「スポーツ」の部分はお好きじゃないんですか?
TM: (笑) いえ、もちろん、あの⋯ 言ってみたら、ジャンプもスピンもステップも、「技術的なことは全部表現に繋がっている」というか。いくらバレエ的に綺麗に踊ったってジャンプ飛べなかったら迫力ないし、⋯僕、スピン下手くそで、
PP: エェ!
TM: (笑)
PP: 「スピンが苦手」と思われてるんですか!?
TM: スピンが一番苦手(笑) だから、言える立場じゃないですけど、いくら綺麗にダイナミックに踊ったとしても、次に入るスピンがスローだったりしたら、「表現が台無しになってしまう」というか、「作品全体としてのクオリティ」がこの欠点によって落ちてしまう、ということも起こりえるので、ジャンプ・スピン・ステップは技術的なことなんですけど、これも「表現のひとつ」として、ジャンプのクオリティも磨いています。
TM: ジャンプも、いろいろあるじゃないですか、「すげぇー!」っていうのもあれば、「⋯あれ、今のは?」みたいなのも。ダイナミックで高く飛べるようなジャンプのほうが表現的にも得ですしね。そういう意味でスキルも大事だと思ってます。
PP: 町田樹選手のエレメンツは、要素(element)と言うよりは、ダンサーのような、パフォーミングアートとしてのムーヴですね!
PP: ちっちゃい頃から、本も読まれていたそうですね。
TM: そうですね、僕、自分で言うのもなんですけど(笑)、本をたくさん読みますね。
PP: お好きな作家さんは?
TM: どこでも言っているんですけど、「海堂尊」さんの大ファンですね。他には「沢木耕太郎」さんや、もちろん「東野圭吾」さん(百夜行)のファンでもあります。海外だと、メジャーですけど「ダン・ブラウン」さん(ダ・ヴィンチ・コード)とか、「ジェイムズ・ティプトリー・Jr.」さん(SF作家)が好きですね。
TM: 読書はもちろん、いろんなことが自分の表現に繋がってたり、考え方に繋がってるので。
最近はいろんなアートにも触れるようになって。今までだったら、「あ、こういうのやってるんだ。今日休みだけど⋯でも、寝てたほうがいいかな。」みたいな(笑)、
PP: 惰眠も魅力的(笑)
TM: そうではなく、「今日やってるんだ、行ってみるか!」っていうアクションを起す、というか。
PP: アクティブに!
PP: 今季の競技のプログラムについても、話せるところまでお願いします!
TM: フリーは続行で、"火の鳥"です。やっぱり、高評価を得ていますし、
PP: 得てますねー!
TM: 同時に、僕の力不足で、まだまだ改善の余地がある作品でもあったので。
でも、一番大きいのは、「ロシア」のソチオリンピックなので、「(ロシア出身の)ストラヴィンスキー」の"火の鳥"、という。作品そのものも大事ですけど、ストラヴィンスキーも意識して作ってますし、作品をクリエイトする「コンセプト」が大事でしたね。
コンセプト、下地が薄っぺらい作品、⋯そんなの僕、滑ったことないけど!、それだったら続行してなくて、コンセプトがマッチして・しかも作品のクオリティ的にも高いし・改善する点もたくさんあったので、今季も継続する価値がある作品だな、と判断してそうさせてもらったんですけど、もちろん「去年と同じことをやるだけだったら おもしろくない」というか(笑)、皆さんもう見られているので、「去年の火の鳥も良かったけど、町田樹はここが成長したよね」とか、「変化」が見られる——同じ動きなんだけど「変化」が見られるように、「全然去年と違うわー」って思ってもらえるような感じに仕上げたい、と思ってます。
PP: いやぁ、でも去年だって凄みのある鳥でしたよー。まさしく火の鳥。
TM: そうですね、鳥⋯ でも、ちょっと「鳥色」が強かったかな、って(笑)
PP: 「鳥色」!?(笑)
TM: (笑) ま、でもそれが個性でもあるんですけど、⋯なんて言うんだろうなぁ⋯ 「もうちょっと強く仕上げたい」というのが自分の中であったので。
繊細さとか純粋さを残しつつ、そこに「しっかりとした芯」を持って。
TM: 去年の僕だったら、繊細な中に通ってる芯も繊細過ぎる、みたいな、そんな演技だったし、今年はもっとbeautifulに、そして繊細に、なおかつ自分の中に通ってる芯はstrong、solidな感じで。
去年の火の鳥は、良くも悪くも「女性的」だった。「男性的」な面がなかった、というか。それを狙ったのもあるんですけど、ちょっと繊細過ぎたので、もうちょっと力強く羽ばたいて行くような火の鳥を表現できたらいいなぁ、と今年は思ってます。
後付けなんですけど、去年は 繊細だった火の鳥がいたとしたら、今年はそれが成長して、繊細ながら もっと逞しく羽ばたいてる火の鳥を表現できたら、と。
2012-13FS"Firebird"
(※4分半の最後の最後に、バレエジャンプを降りた足で、上半身は羽ばたきながらイタリアンフェッテみたいなツイズルが出来るのは、「女性的」なキレではないと思います)
TM: ショートは、間違いなく、「僕のスケート史上最高傑作」が出来る、
PP: おー!
TM: (笑) と、僕は確信していますので、乞う御期待!って感じですかね(笑)
PP: すごいですね、それは!今までのもすごかったけど?それをも越えるような?
TM: (笑) でも、言ってみたら、それぞれ その当時の段階での「最高傑作」であったと思うんですけど、より「特別」な。
今まで僕って、「自分を殺して」じゃないけど、「何か別のもの」を表現してた。
PP: roleを!
TM: そう、役——火の鳥だったら火の鳥、エアギターだったらあのメガネの少年、"黒い瞳(2010-12SP)"だったら⋯ちょっと僕とはかけ離れた男性的な感じを表現してたんですけど、今季のショートはほんとに、「町田樹が町田樹を表現してる」じゃないけど⋯
PP: おーー!
TM: 今までの作品とはちょっと違う、「僕らしい」というか、「氷の上にいるのは町田樹」って感じですね。「自分」を表現してる。今までで一番僕らしい作品でもあるし、そういう意味では、ほんとに大切に思っている作品です。
TM: だから、この作品と共にシーズンをしっかり戦って行けたら、絶対に道は切り開いて行けるんだろうなぁ、っていう。
ただ、すごい、難しくて!(笑)
PP: (笑)
TM: ま、当たり前ですけど!(笑) まだまだ こなせないので。準備して、皆さんの前でお見せする日をほんとに僕も楽しみにしてます。
PP: やはり、「文学的」でしょうかね?
TM: ええ、「文学的」で「哲学的」でしょうね。「この演技が一番『町田樹』らしいよね」っていうのが出来そうなので!
PP: Tatsuki MACHIDA 2013-14SP"(Masterpiece)" 乞う御期待!
(Tatsuki MACHIDA 2013-14SP は、4T-3Tを構成した"East of Eden")
PP: 最後に、ちょっとした謎なんですけど、ISUの選手名鑑のhobby欄の「tea」というのは、茶道ですか?
TM: (笑) 紅茶!ただ、楽しむだけの。あ、でも、高校時代 授業で茶道やってましたね。もう忘れちゃいましたけど(笑)
PP: ダージリンが好きとか、アッサムが好きとか、
TM: 全部好きです!中国茶も。
PP: 全部!
TM: 「お茶が好きです。」というだけです(笑)
TM: 僕、いろいろ趣味があって、読書だったりお茶だったり、音楽だったり、
PP: そう!その「DJ」も!(ターンテーブルを)回されるんですか?
TM: 機械は高過ぎて持ってないんですけど、パソコンにアプリが入ってて、ほんとに暇な時だけですけど、自分でちょっと繋いでみたり。
でも、そういう能力が今回の"白夜行"に繋がった部分もあって。
PP: !? 振付以外に編集もされたんですか?
TM: そう、音楽編集と、ファッションも好きだからコスチュームデザインも。
PP: 編集アプリはどんなの使われました?
TM: 調べたらいっぱいありますよ、無料から有料まで。僕が使ってるのは、波形で合わせていく「TRAKTOR DJ」です。
TM: 「趣味」っていうか、「お遊び」なので、自分が楽しめるかなぁ、という感じで。 ま、オフもあるので、「自分の時間を大切にしよう」ということで、いろいろ趣味も作ったりしてるんですけど。
PP: 風流ですね〜
PP: 洒脱なひとときのお別れに、ファンの方へのメッセージをお願いします!
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► Tatsuki MACHIDA 町田樹選手 @ Kansai University 関西大学 on June 20, 2013
その、「250点を超えた暁」インタビュー ☞ Tatsukism Notebook 樹学ノート 2013年11月
☞ 2012年四大陸選手権での無良選手とのインタビュー (on Japan Skates)