thanks to: TEAM SURPRISE for photos, PAJA for illustrations
by AIKO SHIMAZU 島津愛子
June 24, 2014 in Tokyo
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► シンクロのカッコよさで、初見の方をサプライズしたい
► エレメンツの解説
► ポジションの解説
► シングルとの違い・シンクロ特有の見どころ
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► "サプライズ"の魅力・シンクロの魅力
► 木内千彩子選手のスウェーデン便り
► ピョンチャン五輪に向けて ビデオメッセージ
► "サプライズ"の魅力・シンクロの魅力
PP: プログラム全体の構成なんですけど、上位チームになればなるほど「一枚の布(パトリック・チャン選手の表現)」のようになっているというか、エレメンツの継ぎ目を感じさせないようなトランジションになっています。
そのトランジションでの隊形変化や技が、サプライズならではのものですね。
CK: トランジションもアンドレアコーチが作られるんですけど、選手からしても「エッ そういう風に動くんだ?」みたいな予想外のことが多くって。選手の上の上を考えられているので、「本当にアンドレアの頭はどうなってるんだろう?」っていつも思います(笑)
PP: トランジションからのインターセクションなんかもう、「カッコイイ」の詰め合わせですよ!やられている選手にはその時の自分達のカッコよさが全然見えてないと思うんですけど(笑)
CK: そうですね(笑)
PP: やっている選手にとってもサプライズなトランジションなのですが、やはりトランジションは演技構成点を形成する5項目の内の1つでしかないので、振付・パフォーマンス・音楽の解釈といった大部分の面には反映されにくい、と思っていて。昨シーズンの世界選手権でも、物語性を演劇的に見せるプログラムで、その3項目のほうに力を入れているチームが上位にきているな、と。
CK: あまり点数にならないことをやっている、と言えばそうなんですけど。サプライズの方針として「おもしろい演技をしたい」、サプライズっていう名前の通り「人を驚かせるプログラムをやりたい」っていうのがあるので、「そこで手を抜きたくない」という。
PP: サプライズの隊形は「選手の距離が近い」、それはもちろんプラスの評価がつく要件なんですけど、またそれもエレメンツの加点要件の1項目でしかないですよね。
CK: そうなんです。
PP: 「近いとぶつかるから難しい」と評価される反面、近いと隊形が小さくなるので「distribution/Ice covered(広がり/氷面全体を使う)」っていう評価の獲得が難しいんじゃないか、と。そういうことがだんだん分かってくるとさらにサプライズのカッコよさが見えてきました。「それでこそサプライズだ!」って。
CK: (笑) 皆、点数を稼ごうと思えば他に演技の仕方があるのは分かってるんですけど。
PP: それでもやってるってことはサプライズが好きだから?
CK: そうなんです。その演技が好きだから。
PP: だから、サプライズのオーディションには大勢の選手がいろんな国から集まるんですね。人気の理由が分かりました。
CK: 昨シーズンは怪我も多かったんですよ。腕を2人折ったとか、10針以上縫った子も2人いました。
PP: 例の群を抜いたリフトで?
Group Lift
Pair Element
CK: 上から落ちちゃったり、(後転して降りるために)上の選手のエッジが下の選手に引っかかったりとか。ペアの(女性が女性をスイングする)エレメンツで、顔を切っちゃったとか。
PP: ⋯
CK: (明るく)何回も救急車が来て!
PP: ⋯でも、「やりたい」んですね。
CK: そうなんです(キラキラの笑顔)。怪我した子も怪我をさせてしまった子に「気にしないで」って感じで。
PP: 何にも代え難い一体感があるんですね。
CK: (頷)
PP: それはイイ!お客さんやジャッジに見せるよろこび、その前に「チームで演技を完成させる」というよろこびがあって、そこで完結しているんですね。
CK: 昨シーズンは特に、フルメンバーで出場した試合が1回か2回しかなくて。世界選手権も、レギュラーの選手が1週間前に怪我をして、フルメンバーではなかったんです。でもその怪我した子は、交替で入った子に付きっきりで教えていましたね。ずっと目指してた世界選手権に直前で出られなくなって、相当哀しかったと思うんですけど。皆の前では絶対泣かなかったし。陰では泣いていたみたいなんですけど、皆の前で泣くとプレッシャーになるからって。そういう一体感があるチームだと思います。
PP: 「チームで練習する」のが、もう楽しいんですよね。
CK: そうですね。あと、「チームで勝とう!良い演技しよう!」っていう意識がすごくあります。そういうところがまた、シンクロの魅力です。
PP: トランジションや選手の近さやリフト等、サプライズの技と他のチームの技が違うっていうのに着目していくと、技のこともよく分かってシンクロの見方としてもおもしろいと思っているんですけど。
CK: やっていることが違うわけではないけれども、「目指していることが違う」「力を入れている場所が違う」ので。サプライズに限らず、いろんなチームのカラーを見てほしいですね。自分の好きなチームを見つけるのも楽しいと思います。
Team Surprise
► 木内千彩子選手のスウェーデン便り
Chisako KIUCHI @ 2014 Synchronized Worlds
PP: スウェーデンでは、シンクロの練習量が増えたそうですね。
CK: 日本でのシンクロの練習時間が短かったんです。リンクでの練習時間が限られていて。それに比べて、スウェーデンはシングルとシンクロが同じような競技人口で、リンクでの練習を取りやすいです。日本だとシングルからスケートを始めるんですけど、スウェーデンには、小さい頃から両方やっている子がたくさんいるんです。アメリカもシンクロチームが100チームくらいあるらしくて、シンクロ人口が多いと聞きます。フィンランドもシンクロ人口のほうがシングルより多い、と。
PP: 世界的に人気のある種目なんですよね。
PP: サプライズでの3シーズンが終わって、チームの中での千彩子さんはどういう感じになってきましたか?
CK: (笑) そうですね、年長になってきたんですよ。サプライズは若いチームで20歳ぐらいが中心なので、年上があまりいないです。
PP: 皆さん、大学卒業でやめられる方が多いのでしょうか。
CK: んー⋯まちまちですよね。普通は25〜26歳くらいまでやる選手が多いです。スウェーデンでは、「高校が終わったら大学へ行く」という意識がなく、大学に行く人もいれば、働く人もいて、自分の好きなことをやる人もいる。サプライズのメンバーでも、バリバリ働いている子もいますし、大学生、高校生もいます。
PP: サプライズにはスポンサーも多くついていますね。
CK: 海外試合や合宿の遠征費になっています。学生も多いですし、助けて頂いています。
PP: でも、やってることには儲けがないですよね(泣)
CK: (笑) そうなんですよね。
PP: でも、皆さん「やりたい」と!
Chisako KIUCHI, Andrea DOHANY
PP: 端を任されてからは、本当に大変だったと思います。
CK: 特に去年はすごい叱られて⋯教えてもらったというか(笑)
PP: スウェーデン語で?
CK: 1年目に入った瞬間から全部スウェーデン語です。
PP: 容赦ないですね。
CK: 最初のうちは何を怒られているのかも分からなくて(笑) さすがに3年目になると全部分かるようになるんで。
PP: スウェーデン語にも熟達されたんですね!それは日本人になかなかいないですよ!
CK: そうですね(笑)
PP: シングルもアンドレアコーチに習われているそうですね。クリストファー・ベルントソンさん(アンドレアコーチに長年師事したスウェーデン男子シングルチャンピオン)も「一緒に練習している」とインタビューで千彩子さんのことをお話し下さったんですよ。
☞ Kristoffer BERNTSSON クリストファー・ベルントソンさんインタビュー [Koffe's still doing something special]
CK: オリンピックに出場された時もアンドレアコーチでしたよね。
PP: シングルのコーチとしても素晴らしい先生に習われていますが、シングルとシンクロの両立が難しくなってきたのでしょうか。
CK: 最初のシーズンはシングルとシンクロを両方練習していたんですけど、去年は怪我をしてシングルをリタイアしたんです。シンクロのシーズンに入るし「今年はシンクロをやろう」と。
PP: 9月にスウェーデンに戻られると、前々から希望されていた通り美術学校で勉強されるそうですが、今後シングルはどうされますか?
CK: 学校と両立出来たら⋯「やりたい」と思ってるんですけど(笑)
PP: 千彩子さんが高校生の時みたいな、シンクロの練習+シングルの練習+学校+美術の予備校があったっていう頃の忙しさになりそうですね(笑)
CK: スウェーデンに来て一番忙しいシーズンになると思ってます(笑)
PP: 美術学校では何を志望されますか?
CK: 「空間デザイン」が出来たらいいなあって。スウェーデンはインテリアデザインも含めて空間デザインが発展していますし。
PP: 前回のインタビュー(2012年7月)でそう言われていましたから。着々と歩まれていますね!この日本帰国中も、デザインのお仕事をされているそうですね。
CK: ロゴのデザインとか、LINEのスタンプとかも作っています。
PP: Chisako KIUCHIデザインのスタンプ、絶対入手します(笑)
PP: 帰国中はどんな練習をされていますか?
CK: シンクロの練習は出来ないんで、シングルの練習をしています。「今年はシングルしよう」と思ってるんで。
PP: 欲張ってますねー(笑)
CK: そうですねー(笑) 出来ること全部やろうと思って!
PP: 帰国されて久し振りに佐野稔先生に習われてどうですか?「寂しかったよー」みたいなことになられていませんか?(笑)
CK: (笑) 佐野先生は本当に応援して下さっていて、スウェーデンにもメールも送って頂きますし。帰って来たらまたシングルも教えて下さいます。日本にいる間は「心の支え」みたいな感じです(笑)
PP: シングルの曲かけの練習では阿部奈々美先生振付のプログラムを滑っているんですよね。いつか披露してほしいですよー!
CK: 披露する場があるのかなー?と(笑) ショートは"カルメン"でフリーは"レッドバイオリン"です。今までとはちょっと違った感じを取り入れたりしてるんで。なめらかな滑り、シンクロで培ったようなステップの細かさとかも入れています。⋯披露する機会があるといいです(笑)
PP: 無理のないように、でも切に願っております(笑)
► ピョンチャン五輪に向けて
PP: ピョンチャン五輪での種目採用に向けての15000人の署名が集まりましたね!
☞ オリンピック正式種目化に向けての署名活動 Make Synchronized Figure Skating an Olympic Event #WhyNotSynchro2018
CK: サプライズが出場したスプリングカップでもYouTube向けの動画を作ったり、モーツァルトカップという大会でも表彰式の時に五輪のマークを作って写真撮影したそうです。結構皆、気合いを入れて活動しています。
PP: チームの垣根を越えて!
CK: 世界中で!
Team Surprise
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☞ #WhyNotSynchro2022|荻田美環さん 木内千彩子選手 インタビュー 2015年6月
☞ 木内千彩子選手 2012年7月のインタビュー [Japan's Depth #5 To Any Destination with her skating and the arts] (on Japan Skates)
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