
by AIKO SHIMAZU 島津愛子
posted on December 26-27, 2014
関西大学で指導されている澤田亜紀さんに、2014年全日本選手権に向けてのお話を伺いました。昨年の西便り拡大版・全日本便りです!
ルール編
PP: まずは、今季からルールが変わったことでスポーツファンがドキドキして、スポーツファンにとってフィギュアスケートがもっとおもしろくなった点がいくつかあるんですけど、
AS: ハイ!(笑)
PP: そちらの解説からお願いします。最初は【ルッツ・フリップ問題】で、今季からエッジエラーの場合の得点が、「e」の場合ルッツで基礎点6.0→4.2点・フリップで5.3→3.7点になってしまいます。一方でフリップとループの基礎点の差が0.2点しかないので、各選手のジャンプ構成について考えるのもおもしろいです!
(ルッツはインサイドエッジ・フリップはアウトサイドエッジで踏み切る。「!」はエッジが明確でないジャンプ・「e」はエッジが反対になったジャンプ)
AS: 選手としては、飛び分けは難しいんですよ⋯ 私もルッツに「e」がつくタイプでしたね。
PP: 女子はルッツに「e」、男子はフリップに「e」がつく感じがしますね。
AS: そう言われてますね。
PP: 見るほうとしては、会場で上からルッツフリップを観ていると、フリップはコーナーを曲がる時にスピードを抑えて体の重心を内側にしてインコースを取る感じで、ルッツはスピードを殺さずアウトコースで膨らんでコーナリングするような、競馬で言うと「大外」みたいな感じがしているんですけど⋯
AS: ???(笑)
PP: ってスケーターの方にお伝えすると皆さんそのリアクションです(笑) 実際、亜紀さんは生徒さんにどのように指導されていますか?
AS: フリップは踏み切るエッジがインなので、エッジの倒れる方向が回転方向と同じで、どちらかと言えば回りやすいです。でもルッツはエッジを倒す方向が回転方向に反しているので、「しっかり足首を曲げてエッジを傾けるんだよ」と。力がある選手は足首でアウトエッジを持ちこたえるんですけど、女子だと力がないので回転方向に振られてしまうことが多いです。
難しいです、ほんとに(笑) 先生方の中でも「難しいよね」と。全日本までの試合で確認をして修正してきます。「ルッツ直ってきてるな」とか。
PP: 選手は、「あ、今ルッツなのにインサイドだった⋯」とか分かるものですか?
AS: その時自分で分かることもあれば、後からビデオで見て分かる場合もあります。「一瞬」のことなので。
PP: 0.01秒もないですよね。
AS: 助走でずーっとアウトで乗って来てても、踏切でトゥを突いた瞬間にインになったら「それフリップ」と言われます。
PP: 厳しいー⋯
AS: ほんとに厳しいんです(笑)
PP: 皆さん神業ですね。だから見ていてドキドキしておもしろいです(笑)
PP: それと同じくドキドキするのは、【ショートのコンビネーションジャンプを後に持ってきている選手】です!規定を満たさない回転数のジャンプが「No Value(0点)」でGOE-3になり、コンビネーションを後にするのはさらにリスクが大きくなりました。
AS: よほど自信のある選手じゃないと後ろに構成出来ないですね。先にコンビネーションを予定していて「あ、これセカンドジャンプをつけるとこけるな」と思ったら単独にして、次のジャンプをコンビネーションにする場合もあります。
PP: ⋯やっぱり先にコンビネーションを持ってきたほうが安心ですよね!
AS: そうですね(笑)
PP: そのドキドキがあんまりこの世の明るみに出てないというか!
AS: (笑) 皆、すごくリスキーなことをシレッとやってますよね。
PP: そこをもっと感じてほしいです!
PP: それから、毎年毎年【スピンが試練】じゃないかっていう⋯
AS: ハイ(笑)
PP: 毎年毎年「これやらないとレベルあげない」っていうISUのお達しが増えていく中、オフの間スピンの構成はどのように指導されていますか?
AS: 毎年厳しくなっているので、「今シーズンこれでやろう」というより、シーズン中でも新たなものが出来るように練習しているんですよ。
PP: 「これやっても取ってもらえないから」と。
AS: そうです、シーズン後半の試合でも次のシーズンに向けての取り組みをします。「これやってみたら取れるかな」と。
PP: もう、開発に開発を重ねて⋯
AS: そうです、そうです(笑)
PP: (笑) もう、ほんっとにスピンの血のにじむ努力を皆さんに注目してほしいですよね!
AS: (笑) ほんとですよ!
AS: 他の選手がレベルを取れたフィーチャー(要件 feature)を真似しなさい、と言うこともあります。
PP: (笑) 「あれやれば確実に取れる」と!
AS: 没個性になるのは申し訳ないんですけど、小さい子は結構同じスピン構成になります。そこで点は取っておいて、これから個性を出せるようにレパートリーを増やしましょう、という感じですね。
PP: 苦行になってませんか?
AS: (笑) ちびっ子には「新しいスピンを習得する」というモチベーションになってると思いますね。「これ、誰々(有名選手)ちゃんがやってたよ!一緒のスピンが出来るようになるね!」とモチベーションを上げたりします。
PP: (笑) 大人になっちゃった選手はどうしましょう。
AS: 大きい選手は、自分でルールを読んでくるので「こうしたいああしたい」と提案しますし、「腰が痛いからこのスピンを避けたいです」とか言ってきてくれるので、それを使わずに頑張って考えます。
PP: もうなんか⋯冷蔵庫にあるもので何か作る、みたいな。
AS: (笑) 冷蔵庫になくてレベルを落としても綺麗なスピンにはしたいので。レベル4を取ってGOE-3では意味がない。だから、質も上げることを心がけています。
PP: それから、今季から私が大好きなジャンプが増えてるんです!間に「1Lo」をはさむ3連続ジャンプが大好きで!
AS: (笑) 超マニアックですね。
PP: いえ、あれはスポーツファンからすると一番フィギュアスケート選手のフィジカルを示すものだと思うんですよ。技が決まっている時には無理なく決まっていて、身体能力が見えにくいものです。動くものを動くカメラで捉えるとキレも見えにくいです。でも「1Lo」のコンボは、「その体勢からの!?」っていうときめきがあります!
AS: (笑) 元々「ハーフループ」と呼ばれていて。
PP: 3連続ジャンプに多用されていた「2T(ダブルトゥループ)」が2回以上入れられなくなっちゃったから→【ハーフループコンボ祭り】になってますよね。
AS: そうなんです、もし3Tがパンクして2Tになった場合の保険を掛けて、ハーフループのコンボにする選手は多いです。
PP: だから祭りになっててうれしいんですよー!(笑)
AS: (笑) ハーフループ-サルコウはそこまで難しいものではないんですけど、
PP: エッ!?
AS: ハーフループの後にサルコウをつけるのはそうでもないんですけど、宇野昌磨君はフリップを入れてるんです。これ、すっごい難しいんです!
PP: そういえば、ステップアウトした際(=1Loの状態)「2S(ダブルサルコウ)」を付けてリカバリーする選手もよく見ますね。
AS: そうですね。サルコウはエッジジャンプなので、ちょっと「回り込んで」しまっても飛べるんですけど、
PP: 踏み切るタイミングが遅れる感じですね?
AS: イメージはそうです。体が回ってしまっても、きちんと腰が止まれば上にあがるんですけど、フリップの場合はトゥを突くので、ハーフループの後によく滑ってないと大崩壊してしまうんですよ。
PP: 『宇野昌磨選手の2A+1Lo+3F』、この全日本で絶対に皆さんに御覧頂きましょう!!!
PP: あと、これは「おもしろい」とは違うんですけど、歌詞が認められたことによる偶然というか、【羽生選手と無良選手のFS"オペラ座の怪人"で、使っている唄も被る】という⋯
AS: こういうこともあるにはありますけど、全日本では珍しいと思いますね。
PP: 使用箇所は違うんですけど両方"Music of the Night"で。
AS: 良い曲なんですー!
PP: そうですよね!
AS: 演じる役が2人共ファントムなので被ってしまったと思いますね。
昔パイレーツ・オブ・カリビアンが流行った時は、インターハイの男子で海賊が各グループ2人ぐらいいる勢いでしたよ(笑)
PP: (笑) ジョニー・デップが。
AS: (笑) ちょうど小塚崇彦君がやった年です。去年も実はレミゼ祭りだったんですよ。全日本に出てない選手もたくさん使っていました。
PP: 被った時はどうするんでしょう?例えば「自分のレミゼ」を追求するんでしょうか。
AS: 「自分らしくいきます!」みたいな選手が多かったですね(笑)
PP: 皆さんそれぞれの個性が楽しめます!
男子編
PP: 【羽生結弦選手】のジャンプの降り方で、外国の解説の方が「この降りたエッジを見てくれよ!」って言われていたんです。よーく見てたんですけど、羽生選手のランディングのスピードやそのトレースのキレが、他の上手な選手とも違うな、ぐらいしか素人には分からなかったです(笑)
AS: シューッと(笑)
PP: 「降りる時にエッジのここの部分で着氷する」っていうのは決まっているものなのですか?
AS: 割と決まってます。織田信成さんもそうだったんですけど、降りる時の膝と足首の使い方が良いんだと思います。降りる時にエッジの爪先にかかってしまうとガリガリガリ⋯と詰まったジャンプになります。
PP: 降りる時の姿勢も万全に用意出来るぐらい、空中でも余裕があるってことですね。
PP: スケーティングの変化はどうですか?
AS: 前からすごかったと思うんですけど、今の状態に満足しないで次を見据えているなと感じました。「力を入れないで滑る」ことを練習してきたのかな、と。エッジのどこに乗れば滑るのかということが分かれば、ラクに滑れるんですよ。
PP: 中国杯のフリーでは出場云々は別として「懸け過ぎている」と思い、「高校生らしいことをしていない」って高校生の時にぽつりと言われていたのを思い出しました。事故後の6分間練習の再開の時、涙が流れていたんです。素の羽生選手が出ているなと思って見ていましたが、リンクに上がったらもう涙も消えていて。
AS: 「オリンピックチャンピオンとしてふさわしい演技を」と言っていましたね。涙には「オフの間にやってきたことが、この一瞬で水の泡になるかもしれない」という不安がよぎったかなと思います。
PP: 一生懸命に背負ってきたものが、この全日本でも良い方向に出ますように。
AS: 今朝(26日当日)の練習でも調子は良さそうでしたよ!
PP: 【町田樹選手】は、グランプリファイナルでフリー後半にそれまでダブルにしていた3A(トリプルアクセル)に挑んで、転倒になったのですがそこがアツかったな!って燃えてたんですけど。
AS: 2Aと3Aでは踏み込みの具合も違うんですけど、ファイナルに進めたからこそ挑戦出来た、ってこともあると思います。⋯私の予想ですけど(笑) グランプリシリーズで失敗してしまうとファイナル進出も危ぶまれるので。本選がある大会の場合、予選では手堅く行くことが多いです。
PP: その「挑戦」⋯去年のフリーとはまったく運動量が違うので⋯
AS: 全然違う!(笑)
PP: 3倍ぐらいじゃないかと(笑) 音楽に合わせて振付もシンフォニーになっています。最初のパートでは第九の強靭な主題に乗って男性的な踊り、次に"歓喜"のパートで女性的な踊り、また最後に"Prestissimo(極めて急速に)"で爆発しないといけないから、疲れがドッと出るところだと思うんですよ、あの3Aは。インターバル走みたいに、もう一回上げる時が一番しんどいなって。
AS: (笑) オリンピックという目標を終え、新たなチャレンジとしてはいいんじゃないかなと思います。オリンピックの後のシーズンというのは一番挑戦しやすいんです。
PP: フランス杯では失っていた「自身の演技で作品を完成させる」という、その昨季の使命感が戻ってきたそうです。
AS: 全日本もそうですが、世界選手権とか長いスパンで見ていると思うので、完成すると信じてます!
PP: 【無良崇人選手】についてスポーツファンが大好物な話があるんですよ!「四回転への考え方を変えた」という。三回転の延長として「最後にもう一回転締める」ようにあらためたそうです。
AS: なるほど。⋯別の先生に言われると、同じことでも違うように聞こえることがあるんですよ。
PP: アッ!それは吉田行宏さんも言われていましたね(笑) 「視点を変える」と。☞ 吉田行宏さんインタビュー
AS: (笑) そういうこともあると思います。「右肩を前に出しなさい」は「左肩を引きなさい」と同じ動作なんですけど、意識する側からすると全然違うように聞こえるんです。
PP: 無良選手は指導されたイリヤ・クーリックさんにハマったんですね。
AS: ジャンプの高さが持ち味で、羽生君はラクそうに難しいジャンプを飛ぶんですけど、
PP: 加点の要件のひとつ「エフォートレス(effortless)」ですね。
AS: そう、無良君のジャンプは見ている側にもパワーが伝わってくる。
PP: そう、それがジャンプの加点要件にあればいいんですけど、「パワフル」っていう項目ないんですよね(泣)
AS: そうなんですよ。加点は置いておいて、見ていて気持ちの良いジャンプだなと思います。
PP: ブライアン・ジュベールみたいに男性がアツくなる選手で、
AS: そうです!
PP: でも「男らしさ」っていう項目も演技構成点にはないし(泣) アニキな振付も評価して下さいって思うんですけど。
AS: それ(ルール)ばっかりはなんとも⋯(哀)
PP: 全部さておき、むしろ"剛をもって柔を制す"男気でアツくなりたいです!
PP: 【村上大介選手】の四回転サルコウは鉄板ですね。
AS: ⋯去年の全日本でもフリーで飛んでたんです。でも誰も注目してくれなくて私はすごく寂しかったんですよ!
PP: Pigeon Post では、☞ 稔のお茶会 のほうでフィーチャーしてたんですよ!
AS: (笑) 良いジャンプを飛んでるんです。一見トリプルかなって思うほど簡単に飛ぶんですよね。
PP: いつ見ても同じフォームで飛んでる感じがします。
AS: これまでコツコツとやってきた成果がこの間のNHK杯優勝だったと思うので⋯ダイスは、アメリカ代表だったジュニア時代から知ってるんですよ、だから応援してます(照)
PP: (笑) 11-12シーズンから囲み取材を聴いているんですけど、日本語も上達されたんです。かわいい感じの日本語にならなくなってきたのはすこし寂しいですが、インタビューにも御注目下さい!
PP: 【小塚崇彦選手】は股関節の怪我を抱える「この体に慣れてきた」と昨季の四大陸の時に話されていたのですが、まだまだ体の状態が本調子に戻らないようですね。
AS: 小塚選手は運動神経もとても良くて、体のことを感じ取ってケアする力もあると思います。全日本に向けて頑張ってくれてると思うので⋯小塚選手は私の唯一の同期ですごく応援してるんですよ!
PP: ⋯小塚選手のスケーティングスキルが採点で下がってきてるのに納得がいかないんですけど、あの技術は異質で、リニアモーターカーみたいに2〜3mm浮いてると思うんですよ!
AS: (笑) 分かります。
PP: 最初の囲み取材の時、ジェット気流起しがついてる改造靴じゃないかなーと凝視して(笑)
AS: スーーーーッと行って音がしなくて、私はすごく好きなんですけどね。
PP: 是非皆さんに匠の技を御覧頂きたいです!
PP: 【宇野昌磨選手】は、今季3Aどころか四回転が決まるようになりましたね!
AS: 元々持っていた表現力という武器にジャンプという武器も加わりましたね。⋯今、勢い来てますね!
PP: 演技が哀愁Maxですよ!あれだけ哀愁Maxな踊り、陸でもまあ見ないですよ!
AS: (笑) 高橋大ちゃんを思い出すような。
PP: あの独特の腕の使い方が神というか。「力を抜いている」とよく言われますが、そのように見せるために肩を外側に旋回させて入れ込んでるんです。それをプログラム中徹してるんです!あの姿勢作るだけでどれだけ力使ってるんだ!っていう。「力抜いてる」んじゃない!っていつも立腹してるんですけど。
AS: (笑)「力を抜いているように見せる」。
PP: そうです、力を抜いているように見せるためにどれだけ力を込めてるかっていう。そこに気概を感じるんですけど、宇野選手はどんな方ですか?
AS: きっと芯の強さを持ってると思うんですけど、それは私達には見せないです(笑) 普段はかわいい少年なんですよ。ゲームが大好きな男の子って感じです。「氷に乗るとスイッチが入る」。オンオフがすごいと思います。
PP: 【田中刑事選手】はグランプリシリーズで調子が出ず残念でしたが⋯
AS: 初めてのグランプリシリーズで緊張したのかなと思います。刑事は体が大きくなってきてるので力強い演技が期待出来ます。3Aも良くなってきてます。
AS: 【日野龍樹選手】は、調子の波がありますね。良い時は3Aも四回転もハマる。龍樹君もシニア1年目なので、刑事と一緒なんですけど経験を積んで「長い目で見てあげて下さい」という⋯
PP: 『シニア1年目』というのはやはり選手にとって大きいですか?
AS: シニア1年目は難しいんです。ジュニアからシニアに上がると試合の雰囲気が変わるんですよ。テレビ放送もされるので、それに応じた会場になり裏方のスタッフさんの数もまったく違います。テレビで見ていた選手が目の前にいるので、オーラを見て引いてしまったりとか。
PP: これまでとは違った舞台になるんですね。
AS: そうですね。ジュニアだと皆和気あいあいとやってきたものが、シニアになると年齢層も広くなります。
PP: よそ行きになっちゃう感じですね。
AS: 私もシニアに上がった時の試合で、目の前に有名選手がいて「ハッ!」と見ちゃったり(笑)
PP: (笑) そこは見ちゃいますよね。お二方のシニア1年目を長い目で見守りましょう!
PP: 【山本草太選手】【中村優選手(亜紀先生の生徒さん)】【友野一希選手】といったジュニアからの全日本参戦組はどうでしょう。
AS: 西日本では、その三人で「3A合戦」という感じでしたね。今回も「誰がアクセル決めるかな」っていう。
AS: 友野君のショートは「和もの」なんですけど、「よく踊るな」と思います。
PP: 全日本ジュニアを観ていましたら、他の選手達も含めて、ジュニアが皆踊る踊る!
AS: (笑) そうですね。今のジュニアの世代は高橋大ちゃんに憧れてる世代だと思うんですよ。昔は「男子選手が踊るなんて」っていう考え方があったんですけど、大ちゃんが変えてくれたと思うので。
PP: 全日本ジュニアでは、高橋大輔さんの顔の残し方(ターンの際に頭だけ遅らせて回す)を結構観ましたよ(笑)
AS: (笑) そうでしたか。男子も踊る時代になってきたなと感じます。
PP: 大学生選手から、亜紀先生の注目選手をお願いします。
AS: 【山本拓海選手】はフリーが去年と同じ"レ・ミゼラブル"です。2年使ったのは思い入れがあるからだと思うので、去年も御覧になった方は是非その違いも感じて頂ければ。
【磯崎大介選手】は、四回転ループを入れてるんですよ。今年から町田選手のコーチの大西先生になったので、その影響もあると思うんです。全日本でやるかやらないかは分からないんですけど、見てほしいですね。曲の始まり方にもこだわりを感じます。
【吉野晃平選手(亜紀先生の生徒さん)】は、ショートもフリーも彼自身が「これをやりたい」と編集してきた曲なんです。すごくこだわっているので注目して下さい。
PP: 編集も?
AS: はい。構成にしても、このぐらいの選手になると「自分のパターン」が分かるんです。
PP: 選手はエレメンツにかける時間が分かるのでしょうか。
AS: 分かってきますね。
AS: それから、【湯浅諒一選手(亜紀先生の生徒さん)】と【橋爪峻也選手】のフリーの衣装が被ってるんです(笑)
PP: (笑) なんということでしょう。
AS: プログラムは"海猿"(湯浅選手)と"バックドラフト"(橋爪選手)で違うんですけど衣装が被ったっていう珍事件がありました(笑)
PP: (笑)
AS: 学生の大会の時に、2人の演技が続いて同じ衣装が続いたんですよね(笑)「あれ、色変わっただけ?」みたいな(笑) 演技中は気付かなかったんですけど、後から見て「エッ!」と。
PP: (笑) ここで皆さんにお伝えして、心の準備をして頂きましょう。
PP: 大学生スケーターの勇姿を応援してほしい、全日本の上位選手だけではなく全員を最初から見てほしいと願ってるんですけど⋯
AS: 「全日本に出ることはすごく大変」ということが伝われば。
PP: フィギュアスケート選手はリンクで練習出来る時間が限られていますし、他のアスリートよりも大変だなと思うんです。全日本に出場するような皆さんは小さい頃からトップクラスの練習内容をこなしながら、学業も頑張っていますね。
AS: 大学までスケートを続けるのは本当に大変なんです。スケートを続けるために、練習環境のある大学に入るということもあります。サポートも多少は受けられますし。ただ、皆3年生ぐらいになると将来のことを考え始めますね。
PP: 亜紀先生御自身もそうですけれど、「もっとスケートの練習をしていたらもっとトップに行けるのに」という選手もいると思うんです。スケートと学業や就職活動が両方切迫してきた時、亜紀先生はどうされていましたか?
AS: 「どっちも頑張りたい」と思ってました(笑)
PP: (笑)
AS: スケートも大事だけど、この1年で将来が決まるとなるとそっちも頑張らないと。
PP: そのアツさや青春を感じるから、「フィギュアスケート選手全員が好き」というファンの方が多いのかなと思います!
AS: ブロックから東日本西日本を勝ち上がった30名なので、第1グループの選手から応援をお願いします!
女子編
PP: 【村上佳菜子選手】のショート&フリーの"オペラ座の怪人"のショートのクリスティーヌももちろん素敵なんですけど、フリーのファントムがカッコ良過ぎますよ!
AS: (笑) ファントムとクリスティーヌの両方を演じてるんだろうなというプログラムはありましたが、ファントムとクリスティーヌをこれだけ演じ分けているのは⋯凄いですね!(笑)
PP: (笑) 「凄い」という言葉しか出ない感じです。
AS: 同じ作品でショートとフリーをやるという発想も凄いし。"オペラ座の怪人"をやりたかったんだろうなっていう想いが伝わってきました。
PP: 村上選手自体は、前にも"マスク・オブ・ゾロ"の剣士のステップも決まってましたし、男役が映えますよね。
AS: ハイ!しっとりも出来るしパキパキも出来るし。
PP: 後半のフリップを綺麗に着氷した後のターンで顔を残すんですけど、あれは惚れます!
AS: (笑) ジャンプの出方の工夫(creative exit)になるので加点もつきます。
PP: 【本郷理華選手】は、これまでの日本人選手像とは違いますね。
AS: 背の高さもあって、持って生まれた手足の長さもあります。自分の持ってる良いものを理解してそれを発揮出来ているなと。ずっと近くに(同じ長久保コーチの)鈴木明子ちゃんもいたので、魅せ方にはその影響もあると思います。
PP: 体の大きい選手ですが、滑っている時にさらに大きいなと感じます。
AS: 一歩を大きく大きく滑っているので、ダイナミックに見えますね。
PP: 【宮原知子選手】はジャンプが変わってきているようですね。
AS: 高さが出るようになりましたね。これまではアンダーローテーション(回転不足)を取られることがあったのですが、回転ピッチが速いので高さが出れば申し分ないジャンプになります。
PP: 回り切って降りるという印象ですね。
AS: ショート"魔笛"はすごく可愛らしい曲で、一方でフリー"ミス・サイゴン"は曲が盛り上がるにつれてスピードも出しています。
PP: 【今井遥選手】は女子選手の中で一番気丈じゃないかと思ってるんですよ。
AS: すごく優雅に滑るんですけど⋯ギャップが(笑)
PP: そこがいいです(笑)
AS: グランプリシリーズでも3-3を飛んでますし、調子自体は悪くないと思います。
PP: 【加藤利緒菜選手】はジュニアからシニアに上がっての参戦となりました。
AS: 彼女はジュニアの頃からトップで戦ってきた選手で、NHK杯でも結果をしっかり残しました。体が柔らかいのが彼女の持ち味だなと私は思っています。
PP: 以前亜紀先生が言われていた、「危ういジャンプも足首や膝の柔軟性で着氷を持ちこたえられる」という感じですね。
AS: そうです。スピンのバリエーションも増えるので、冷蔵庫の蓄えが多い状態ですね(笑)
PP: (笑) スピンの献立に困りませんね。
PP: 【大庭雅選手】の3Aの状態はどうでしょうか。
AS: 去年からやってるんですけど、まだ私は決まったのを生で観たことがないですね⋯でも、能力を持っている選手なので頑張ってほしいです。
PP: ジャンプは、決定率がどの程度あれば構成に入れられるのでしょう?
AS: 「自分が自信を持っていればいい」んです。例えば降りたことなくても、踏切の良い感触さえ掴めていたら本番で降りることもあるんです。
PP: !?
AS: アドレナリンが出るので。練習で出来ていたから本番で出来るということでもないんです。本番で初めて降りる場合もあります。
PP: !? 急にハマることが?
AS: 試合会場に入るとアドレナリンが出て筋肉に良い刺激を与えられるんですよ。そこでハマる選手もいるんです。
PP: 大庭選手もここでハマってほしいですね!
AS: 海外の試合や全日本の予選では3Aは入れてなかったので、今回どうするか分からないですけれども。ショートの結果次第で入れるかもしれませんのでお楽しみに。
PP: ジュニア参戦組で、【樋口新葉選手】は亜紀さんのように体に力があってキレッキレなんですよ。体から発するエナジーが Aki SAWADA です。
AS: 他の先生にも言われたことがあります。そう言って頂けるとうれしいんですけど新葉ちゃんに申し訳ないなと⋯
PP: いえいえ、Aki SAWADA の動画は、フローレンス・ジョイナー(女子100M200Mの世界記録保持者)の動画以来の衝撃でしたよ!
AS: (笑) 新葉ちゃんは、体にエンジンがついているんじゃないかっていうほどすごく滑ります!スピードとジャンプの迫力がありますね。
PP: 【坂本花織選手】は、エレメンツをなんでも簡単にやってしまう感じがします。
AS: (笑) 確かに!ジャンプも回転のピッチが速くて「駒」みたいにキュルキュルッと回るので。軸のブレないジャンプを飛ぶなと思います。
PP: 軸(axis)が細いっていう喩えでは外国の解説の方は「鉛筆」って言われますね。
PP: 全日本ジュニアでは、全然緊張してない感じだったんですよ、ひとりだけ(笑)
AS: それはあります(笑) 直接しゃべったことはないんですけど、試合でよく見ているとポーカーフェイスな感じはします。
PP: 大物感が漂ってました。
AS: 自分がやってきたことに自信を持って取り組めているのかなと思いますね。
AS: 【三原舞依選手】は花織ちゃんの相方、じゃないですど(笑) 2人で一緒に練習して成長してきています。ジャンプの構成も同じような感じですが、2人のジャンプを比較すると、花織ちゃんはよりダイナミックで舞依ちゃんはさらに軸が細い。キュッとコンパクトに回るジャンプです。
PP: 【永井優香選手】は、全日本ジュニアを観ていましても、憂いも魅せてひとりだけ「シニアかな?」っていう演技でした!
AS: (笑) 手足が長くて踊りが映える上に3-3を持っているという、楽しみな選手が増えたなと思っています。
PP: 【中塩美悠選手】には ☞ 昨季の西便り でも触れて頂きました。
AS: 広島の選手で、広島には通年リンクがないので岡山まで通って練習してきた、その努力がやっと実ったのが昨シーズンでした。今年はジュニアグランプリのファイナルにも残って、さらに実りのあるシーズンになっています。ファイナルで新たな目標も出来たと思いますね。
PP: 自分自身に期待を持って臨んでいる感じで、ハツラツとしていますね。
PP: 全日本に帰って来た2人の名選手【鈴木春奈選手】【石川翔子選手】についてお願いします!
AS: 春奈ちゃんは国体の予選で観て「雰囲気が違うな」と思いましたね。ジュニアの頃から知ってるんですけど、東日本の狭き門をくぐり抜けてまた全日本に戻って来ました。フリー"カルメン"が良いので楽しみにしています。
AS: 翔子ちゃんは、大学卒業の昨シーズンに怪我をして1年棒に振って、それで続行した今シーズンだと思うんです。そのハートを応援したいです。
PP: 大学生選手から、亜紀先生の注目選手をお願いします。
AS: 【西野友毬選手】は小さい頃から注目されてきて、その分「結果を出さなきゃ」ってプレッシャーになっていた時期もあったと思うんです。そこを乗り越えて今はジャンプの感覚も戻って来ているので、今大会も頑張ってほしいと思います。
初出場の【武井美由季選手】は高校から大学にかけてジャンプの種類が増えました。普通は中学から高校でジャンプの種類は固定してくるので、それを「維持する」場合が多い。でも彼女は3-3も飛べるようになったんです!是非その頑張りを見てほしいです。
【河野有香選手】は高校から伸びてきて海外試合も経験した選手なんですけど、今年が最後なんです。去年は全日本に行けなくて辛いシーズンを送って、この引退シーズンに全日本に出場します。集大成を出してほしいですね。
【上野沙耶選手(亜紀先生の生徒さん)】は力を持ってる選手なんです!でも「ここぞって時にもっと行けたらな」っていうもどかしさがありますね⋯
PP: コーチング中の亜紀先生にも注目してほしいです!
☞ 澤田亜紀先生の15-16シーズン便り#4世界選手権男子日本代表選手編では〜五輪への折り返し地点「ボストンワールド」でのピョンチャンに向けての確認事項〜として、スポーツファンのツボを押す解説を頂きました。|☞ 女子日本代表選手編
☞ 澤田亜紀先生の15-16シーズン便り#1〜3 シニア・ジュニア国内選手と澤田亜紀コーチ
☞ エアフィギュアスケート*澤田亜紀先生のレッスン#1ジャンプ [Aki's Summer Course on Pigeon Post #1 Jumps] 2015年7月
☞ 澤田亜紀さん 2013年3月のインタビュー [Aki KEEPs CALM AND PUTs A SMILE ON]