Pigeon Post - SAKIKO USAMI 宇佐見咲子: projection, interview, text|MIWA EGUCHI 江口美和: projection|AIKO SHIMAZU 島津愛子: projection, text, edit, design
posted on February 17, 2016
関西大学で指導されている澤田亜紀さんに、全日本や国内試合の総評、選手紹介、シーズン後半や今後に向けてのお話を伺いました。#2の今回はシニア・大学生選手についてお送りします。世界選手権代表選手はのちほど特集致します。
AS: 澤田亜紀コーチ
PP: インタビュー/テキスト Pigeon Post 宇佐見咲子
女子編
【村上佳菜子選手】全日本選手権6位・中京大学 四大陸選手権出場
AS: 佳菜子にはお姉ちゃんがいて。そのお姉ちゃんが、私と同い年のスケーターだったんですよ。とてもちっちゃい頃から佳菜子のことを知っています。だから、私は佳菜子も贔屓目で見ている部分があります(笑)
今、下からどんどんどんどん若い選手が上がって来て、すごくつらい立場だと思うんです。これまで、トップ選手として海外試合に行く大学生は今井遥ちゃんと本郷理華ちゃんと佳菜子しかいなかったので、(姉妹のような存在の)真央ちゃんがいなければ、ひとりぼっちの時も多くて寂しかったと思うんです。そんな中、よくここまで日本女子シングルの皆を引っ張って来てくれたなと思います。
PP: 下からの追い上げはありますが、佳菜子選手にはシニアで戦って来たスケーターにしか持ち得ない凄味というものがあると思います。
AS: 表現がひとつひとつ大きいと思います。
PP: タンゴやフラメンコで迫力を出して力強く踊るのが凄く上手いですよね。ダンサーという感じですよね。
AS: はい。「魅せ方」というものが凄く上手いと思います。
PP: 今年は髪をショートカットにされて。個人的には以前から密かに希望していたんですけど、ショートカットでマニッシュな演技を見てみたいなぁと。今季はSPでそれが実現したのでとても嬉しいです。
AS: 本当に、何を踊らせても巧くて。例えば、曲がない状態でもその動きを見ていれば曲の雰囲気まで分かる感じです。
PP: そうですね、曲かけなしの振付練習の時から表現のニュアンスが細かくて、本当に音楽が聴こえて来るような。
AS: バックミュージックきっとこんな感じだろうなというところまで伝わってきます。
PP: 驚いたのは、練習風景を目の前で拝見させて頂いた時に目の当たりにした細さ!すっごく細くてびっくりしました。アスリート的な絞られた美しさなんですけど、もう、すっごく細かったです⋯!
AS: それ、是非佳菜子本人に言ってあげて下さい(笑) 髪の毛をベリーショートにしたこともそうなんですけど、どうすれば一番自分を良く・美しく見せられるかということを、多分彼女は研究していると思いますね。
PP: 練習風景から既に、本当に格好良かったです。
AS: そういう「OFF」のところからスケーターなんだろうなと思います。
PP: FSの『SAYURI』はSPと打って変わって、しっとりとした雰囲気で。
AS: 昨季はSP・FSと『オペラ座の怪人』で。そこからもまた雰囲気がガラッと変わったので凄いなと。
PP: グランプリシリーズのフランス大会の際に痛ましいテロが起こってFSが中止になり、披露の場が少なくなってしまったことが勿体ないなと思っていたので、四大陸選手権のエントリーがあって本当に良かったです。
AS: 本当に。このプログラムも佳菜子に凄く似合っていると思うので。
PP: 今までにないタイプのSAYURIさん。
AS: ショートカットという時点でハッとするんですけど、でも、始まるとそれも気にさせないような。『SAYURI』の衣装は"THE着物"という感じのものが多いのですが、着物着物していなくてそのこともいいなと思いました。髪飾りも凝っていて。
AS: 一時回転不足を取られたり、凄く悩んだ時期があったと思うのですが、彼女には表現という武器もあるので、四大陸選手権でも自信を持って臨んでほしいと思います。
【今井遥選手】全日本選手権15位・新潟県連
PP: 妖精みたいな舞で、全日本の演技は凄く良かったんですけど、回転不足ですね⋯。
AS: 「魅せる」っていう力があるので、本当に勿体なかったです。
PP: 見てる側も悔しかったです。
AS: 本当に⋯。
PP: 遥選手はどのようなタイプの選手でしょうか?
AS: 彼女はとても素直な選手なんだと思います。公式練習中にチラッと見えたんですね、スケートノートっぽいものを確認する姿が。日々そうやって自分のスケートを振り返りながら練習してるのかなと。本人には訊いていないのですけれど、ノートをつけているのかな?って。
PP: スケートノートをつけている選手は多いですね。
AS: やっぱり一日一日のことを憶えるのには限界があるので、そうやってその日やって来たことを紙に書き出して振り返る時間は必要なのかもしれないなと思います。
AS: 全日本は回転不足を多く取られてしまって不本意な順位でしたが、国体では3位で、素晴らしい演技だったと伺っています。確かに、ジャンプの回転が足りないと点数が伸びないんですけれども、彼女の場合はジャンプ以外にも魅力がたくさんあるので、これからもそれを是非“魅せに”来てもらいたいと思います。
【大庭雅選手】全日本選手権17位・中京大学
AS: 彼女も今季非常につらかったと思うんですけど⋯。
PP: ジャンプの面ですかね⋯回転不足⋯。
AS: でも私は彼女の、助走があんまりないジャンプが好きなんですよ。助走がないというか、「構え(予備動作・テイクバック)」のないあの跳び方って結構難しいんですよね。後ろ振り向いた瞬間にちょっと間違ったタイミングで膝を曲げてしまうと吹っ飛んでしまったりするんですけど。
PP: 元々の身体能力がないと出来ないことですよね。器械体操をなさってたと。
AS: 器械体操の効果なのか元からなのか分かりませんが、体幹がしっかりしてるなという印象があります。私が彼女を初めて観た時から、既に「構え」がとても少ないジャンプでした(構え=「preparation プレパレーション」の時間が長い場合はGOEでマイナスの評価を受け、構えが少ないと「effortless ラクに行っている」というプラスの評価となる)。
本来ならジャンプも良い選手ですし、表現も素晴らしいです。FSが映画『ナルニア国物語』の曲で、コスチュームだったりそういった部分でも「イメージ」というものをとても大切にしていました。
その表現面に加えてやっぱりジャンプ⋯今季は彼女のその良い面があまり評価されなかったのが残念だったんですけれども、本来はとても良いので。得点になるものに戻してほしいです。
PP: 3アクセルも練習されていましたよね。
AS: はい。ローカル大会で好調なので、3アクセルにも挑戦していってほしいですね。来季はユニバーシアードという大学生のオリンピックの選考もかかっている年だと思うので、是非頑張ってもらいたいです。
【上野沙耶選手】全日本選手権19位・関西大学
PP: 亜紀コーチの生徒さんですね。エレガントな雰囲気の選手で。近畿ブロックでの『SAYURI』が良かったです。今季SAYURIさんが、大会によっては4名くらいいらっしゃった時があって(笑)
AS: そうなんですよ、SAYURIさんが(笑) その中で彼女はゆっくりした表現が得意な選手なんですけど、今季はジャンプがハマらないことが多くて。本人も自信を失くしてて。ハマる時は凄く良いんですけどね⋯。自分に自信がないことが彼女の今の欠点じゃないかなと思います。
PP: スポーツは自信が大事ですね。
AS: 根拠はなくてもいいので、とにかく自信を持ってほしいです!!
☞ 2015年サマーカップ 白岩優奈・木原万莉子・上野沙耶・佐藤未生・友野一希・山隈太一郎・中村優・川原星・吉野晃平選手インタビュー
【高橋美葉選手】全日本選手権23位・札幌大学
PP: 杉中健人選手と同じようなタイプで人気があります。キャラクターと身体の動きが独特ですね。でも残念ながら、全日本はテレビの放映がなく。北海道の選手なので期待したんですけど。
AS: そうなんですよ⋯本人も凄く悔しがってたんですけど⋯。あの、「くるくるジャンプ」分かります?くるくる(連続ターン)した後にジャンプを跳ぶ⋯。
PP: あっ、ループとかですか?
AS: はい。あの入りでトゥループを跳ぶんですけど、その動作がすっごく速いんですよ。「(超早口で)クルクルジャンプ!!!」みたいな(笑) アクセルとかも、「えっ!その構えで跳んじゃうの!?」みたいな。踏み込んで跳ぶんじゃなくって、(自力で)「フゥーーン!!」と跳んじゃう感じです(笑)
PP: エネルギッシュな選手。
AS: そうです。選曲も。SPの『バーレスク』も踊りこなせていますし、FSの(人魚姫)アリエルの歌『A Little Mermaid』は、その雄大さも表現出来ていて衣装もこだわってます。是非注目して下さい。
【安原綾菜選手】全日本選手権25位・関西大学
AS: 今大学1年生なんですけど、ジャンルに「可愛い」と「お姉さん」があったら、「可愛い」です。分かりますか(笑)?
PP: 分かります(笑)
AS: 服装、コスチュームとかもすっごく可愛らしくて。センスが良くて。本人に似合ってるなぁと。
PP: 衣装は選手ご自身が「こうしてほしい」と希望されることは多いんですか?
AS: そうですね、作って下さる方にもよるんですけど、希望を入れて頂いたり。それは多いですね。
AS: 綾菜ちゃんは、曲の表現も細かくて。ひとつひとつの音を拾いながら表現しています。ジャンプが決まればっていうところですね。
PP: 表現面に優れた選手なんですね。
AS: はい。「魅せよう」というのがとても伝わってきます。
PP: そこにジャンプが入れば。
AS: 本当に。全日本のSP、その「ジャンプ1個決まれば(FS進出)⋯!」っていう感じだったので⋯。
PP: そうですね、FS進出まで3点差⋯ジャンプ1個決まっていれば、という点差ですね。
AS: (とても悔しそうに)決まっていれば⋯!
【細田采花選手】全日本選手権27位・関西大学
PP: 近畿ブロックのFSで3フリップからのコンビネーションを跳ばれていましたね。
AS: 采花ちゃんは、本来とてもパワフルな感じで。ジャンプがハマれば凄く高いのを跳ぶんですよね。今回の全日本は失敗したので⋯。
PP: SPではジャンプの得点の占める割合大きいですからね⋯失敗してしまうとなかなか点数が伸びないんですよね、他が良くても。ちょっとした歯車の噛み違いで⋯。
AS: 本当に⋯(30人から上位)24人に絞られてしまうから⋯。
PP: 全員フリーに行けたら⋯。
AS: フリー30人というと、長いですけど⋯(笑) 采花ちゃんは、“ジャンパー”な選手です。
【国内試合について】
PP: 現在はフィギュアスケート人気が凄くて、ローカル大会にもたくさんのファンの皆さんが観戦に来られるようになりました。そのことは選手やコーチやスタッフの皆さんにポジティブな影響がありますか?
AS: はい!以前は本当に関係者しか観に来ていないような感じだったんですけど、今は多くのファンの方々が観に来て下さいます。私が引率した中ではインカレですね。インカレって大体皆さんがお忙しい年始に開催されるんです。でも今年は、「引退する4回生の選手たちの演技を観に来た」と仰るお客さんがすっごく多かったですね⋯今年は特にたくさん。なので、「愛されてるなぁ」と思いました。本当に、ローカル大会にもたくさんの方が足を運んで下さってありがたいです。がらんとした中でひとりぼっちで滑るのってとても寂しいんですよ。
PP: そうですよね。やはり、声援や拍手や温度があると違いますよね。
AS: 後押しされます。
PP: インターハイは3月にJ SPORTSさんで放送されます。
AS: 凄い時代になりましたよね。ここまで来たなら、是非インカレも放送して頂きたいです(笑) FSだけでも(笑)
PP: 是非アピール致しましょう(笑)
AS: インハイはまだこれからも続ける選手たちですが、インカレは引退する選手が多いので、是非お願いしたいです(笑)
☞ #4 世界選手権男子代表選手 ~五輪への折り返し地点「ボストンワールド」でのピョンチャンに向けての確認事項~ (on J SPORTS)
☞ #4 世界選手権女子代表選手 ~五輪への折り返し地点「ボストンワールド」でのピョンチャンに向けての確認事項~ (on J SPORTS)
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☞ 2014年全日本選手権事前特集 澤田亜紀先生の全日本便りでは「(ルール変更により)スポーツファンにとってフィギュアスケートがもっとおもしろくなった点」と男子女子の出場選手について解説して頂きました。
☞ 澤田亜紀さん 2013年3月のインタビュー [Aki KEEPs CALM AND PUTs A SMILE ON]