
Pigeon Post - SAKIKO USAMI 宇佐見咲子: projection, interview, text|MIWA EGUCHI 江口美和: projection|AIKO SHIMAZU 島津愛子: projection, interview("Takahiko KOZUKA & Aki"), text, edit, design
posted on February 17, March 16, 2016
関西大学で指導されている澤田亜紀さんに、全日本や国内試合の総評、選手紹介、シーズン後半や今後に向けてのお話を伺いました。#2の今回はシニア・大学生選手についてお送りします。世界選手権代表選手はのちほど特集致します。
AS: 澤田亜紀コーチ
PP: インタビュー/テキスト Pigeon Post 宇佐見咲子
男子編
【無良崇人選手】全日本選手権3位・HIROTA 四大陸選手権出場
PP: 今季特に柔らかい表現が巧くなっていらっしゃって。SPの振付がアイスダンスのチャーリー・ホワイトさん、FSがジェフリー・バトルさんで、チャレンジしてこられたなと。
AS: ああ、確かにそうですね。
PP: FSはテーマの「自然」というスケールの大きな世界をとてもナチュラルに表現されています。
AS: そうですね、今まではジャンプを跳ぶことで得点を得る選手というイメージがあったんですけど、見せるところが増えたので。
PP: 全日本では、3アクセルが1回転になってしまった直後にジャンプ構成を変更してその3アクセルを決められ、メンタル面も凄く強くなられたなと思いました。
AS: ジャンプ構成の変更って選手も普段からやってたりするんですよね。リカバリーしようとして失敗する部分もあるんですけど(笑)、こうなったらこう、とか予め決めたりして、失敗した分の点数を回収出来るように練習したりはします。
PP: 凄く頭を使いますよね、動いてる中で考えないといけないので大変ですね。
AS: そうですね、まあでも、結構パターン化してると思う――よく失敗する場面が一緒だと思うので、「こうなったらこの構成に変える」とか。
PP: きっちり用意しておいて。CASE‐1、CASE‐2みたいな感じで(笑)
AS: そんな感じで(笑) 用意してると思います。
AS: 以前は「力強い演技」が印象的でしたが、今回の全日本の演技を観てそれが大きく変わりました。四大陸選手権では、今までの良かった部分に加えて、しなやかな表現に挑戦して雰囲気が変わったところに注目して頂きたいと思います。その新たな表現と共に、やはり見て頂きたいのはずっと持ち味としてきたジャンプですね。高くて幅の広い3アクセルはお手本のようなんです。
PP: FSでは、曲が盛り上がる箇所で3フリップ+1ループ+3サルコウのコンビネーションジャンプが入って本当にエキサイティングです。
AS: クライマックス、盛り上がる曲調に合わせてジャンプをバンバンと決めてゆくので、是非見所にして頂きたいなと思います!
【田中刑事選手】全日本選手権4位・倉敷芸術科学大学 四大陸選手権出場
PP: 全日本では最高位の4位に入られましたね。
AS: 刑事くんは合宿を一緒にしていたので気にして見ていたんですけれども、4回転⋯FSでは決まらなかったんですよね。
PP: ステップアウトみたいな感じでしたかね⋯。
AS: バシッと決まらなかったんですね、惜しかったんです。
PP: SPが2回転になってしまって⋯。
AS: ノーカウント⋯。
PP: あれがカウントされていれば⋯。
AS: 夏合宿の時は4回転もかなり入ってたので、もっと確率上がればいいなぁと思うんですけど。凄く調子は良いです。そして、見栄えがする選手なので。
PP: FS『椿姫』の3拍子取ったステップが素晴らしいです。優雅なんですけど迫力があって。衣装もお似合いで、凄い⋯(笑)
AS: そうですよね(笑) 去年も同じプログラムだったんですけど、2シーズン使ってるだけあって余裕が出て来たんじゃないかなと思います。
PP: 控えめな感じの選手なんですけれども、ノッた時の「音楽に負けない感じ」が凄いですよね。昨季までのSP『Instinct Rhapsody』なんかも、ダイナミックで凄味のある妖しい音楽なんですけど、それに全く負けない雰囲気を出されていて。
AS: そうですね、上半身の動きとかもとても良くなっているので。
PP: ノッた時の爆発力本当に凄い⋯(笑)
AS: ジャンプ失敗した時もそうやってほしいと思います(笑)
PP: 「調子が良い」とのことで、今季はNHK杯も良かったですし、全日本も良かったですね。
AS: FSが強いので、SPも揃えば⋯!
PP: 次の四大陸選手権も良い流れのまま繋げてほしいです。
AS: 是非表彰台に乗ってほしいです。世界ジュニアのメダルも持っている選手です。大きな国際大会のここで、是非やってほしいです。
【小塚崇彦選手】全日本選手権5位・トヨタ自動車
AS: 彼は現役選手の中で唯一の同い年スケーターなんです。ずーっと一緒にやって来ているので結構、あの⋯贔屓目で見ちゃいます(笑) 今回の全日本、ジャンプはミスしてしまったところがあったんですけど、やっぱりスケーティングが凄く良くて。「なぜエッジをこんなに傾けてもこけないんだ?」というくらい⋯。ステップも、上手くない人がやるとガシャガシャと雪が散るんですけど、そういう無駄なことが一切なく。難しいことをやっているんですけど、あまりにも自然にやるので難しく見られないっていう(笑)
PP: 全てがナチュラルなんですよね。特別にスケーティングが上手い人にしか許されないことですよね。ジャンプにミスがあってもあのスケーティングの前には忘れてしまうほどです。
AS: 基礎が凄いんだなと思います。
PP: 全日本のFSは直前にアクシデントがあったようで、ウォームアップ出来ないままでの演技でした。
AS: 靴紐を結び直していましたね。もう、会場中が「30秒来るよ」って。30秒以内にスタートのポジションを取らないと1点減点されてしまうので。観客の皆さんも「早く早く!」ってざわざわしていて。会場中の皆さんが心配して下さっていたんだなと思いました。
PP: 序盤のジャンプミスはそのことが響いたのかもしれませんね、後半のジャンプは立て直されていたので。
AS: 少なからずはあったかもしれませんね。でも、彼はどんなことがあっても一切言い訳しないタイプなので。「出番がギリギリだった」とかは絶対言わない。「何が起こっても、その中できちんとやらないといけないのが選手」だというふうに、彼は考えていると思います。
PP: キリッとされてますもんね。
AS: はい。
PP: 昨季のエキシビションのフラメンコ(『ファルーカ』)を今季はSPにされていて嬉しかったです。
AS: 私はフレンズ・オン・アイス2015(8月)に行って、その時に初めてSPバージョンの『ファルーカ』を観たんです。凄く似合っているなぁと思いました。
PP: 宮本賢二先生振付の。やはり流石ですね、引き出されますね。上体の表現とか、踊りの部分とか。
AS: 今までは魅力のあるスケーティングを見せるための選曲が多かったと思うんですけれども、それだけじゃないというところが見られましたね。こういうタイプのプログラムもこんなに似合うんだ!と。
☞ 小塚崇彦選手 2015年11月のインタビュー (on J SPORTS)
【村上大介選手】全日本選手権7位・陽進堂
AS: 全日本のSPを観た時に、「自信があるんだな」と感じました。グランプリファイナルに行ったということで自信がついたのだなと。ずっと前から4サルコウを持っていて、FSでひとつ2回転になりましたが、大会通して2回成功させています。
ジャンプの面だけでなくて、彼は表現の面でもしなやかでしっとりとしていて。優しくてふんわりした柔らかい雰囲気があります。是非そういう、しなやかで美しい演技にも注目して応援して頂きたいです。
PP: FSは、当日の練習中のアクシデントのために左膝を痛めての演技でしたが、最後までジャンプを全部跳んで。やり遂げられた根性にも感動しました。
AS: 日本では、世界選手権の枠が2つや3つでは少なすぎて。良い選手が多くて絞りきれません(笑)
【日野龍樹選手】全日本選手権8位・中京大学
AS: (通称)「フェイ」くん。
PP: 全日本のSPは凄く良い出来で7位に入ってとても嬉しそうだったんですけど、得意の3アクセルにミスが出てしまったFSはとても悔しそうでした。
AS: SPはジャンプが3つしかないので結構集中力で何とか出来る部分があるんですけど、FSは4分半と長い中でジャンプは8つありますし、途中で集中力が切れるとミスが続いてしまったりするんですね。あっ、私、フェイくんのFS『キング・アーサー』が好きなんですよ。彼に似合ってるなと思って。
PP: 似合っていると言えば、昨季のアーサー王の髭。
AS: 髭(笑)!
PP: 私はかなり好きだったんですけど(笑) なんか⋯不評だったのか1試合だけですぐ剃ってしまわれて(笑) 残念でした(笑)
AS: (笑) 選手で生やしてる子がいないので⋯多分、あんまり良く映らなかったのかも⋯と思ってたんですけど、別に⋯いいと⋯思うんですけどね(笑)
PP: 似合ってたんですけどねぇ⋯(笑)
PP: インカレは優勝でした。
AS: SPはノーミスでエレメンツが決まっていって。「これはやってくれるんじゃないか?」と思ったら、キャメルスピンがすっぽ抜けて。
PP: まさかの⋯。
AS: はい、大の字(転倒)になってました(笑) もう⋯ノーミスと思ったのに⋯(笑) 皆笑ってました(笑)
AS: 彼は独特な表現⋯リズムの取り方が凄く独特なんですよ。聴こえていない裏メロディーみたいな。人が普通に取るようなリズムじゃなくて、違うところで表現していたりして、見ていて凄く面白いなぁと思っています。
3アクセルと4回転を両方とも持っている選手なので、ジャンプ構成を考えると全日本最終グループどころか世界選手権の代表争いに確実に食い込める選手です。試合でのジャンプの成功率を上げて、是非頑張ってほしいなと思います。
【中村優選手】全日本選手権9位・関西大学 世界ジュニア出場
PP: 亜紀コーチがキス&クライに座ってらっしゃった中村優選手、世界ジュニア出場おめでとうございます。良かったですね。
AS: ありがとうございます⋯!良かったです⋯(安堵の表情)!
PP: 今回の全日本は、世界ジュニア出場権が目標でしたか?
AS: そうですね、本当は全日本ジュニアで表彰台に乗って自信を持って全日本に行ってほしかったんですけど、そこで失敗してしまい⋯(SP2位からFS8位となり総合5位に)。で、全日本にかけて、本人も頑張ってくれたんです。
PP: 気持ちが入ってましたもんね、小さいミスがちょっとありましたけど、最後まで気持ちを切らさず滑られて。
AS: そうですね、ジュニアのラストシーズンなので、本人の気持ちが強かったです。是非、世界ジュニアでも「何位に入る」とか高い目標を持ってくれたらなぁと思っています。
PP: 優選手の強みについてはどう思われますか?
AS: たまにジャンプをミスして曲から遅れても、その遅れた中でも絶対に音を合わせにいきます。それは持って生まれた音楽の感性だなと思います。
AS: 彼は、ずーっと出たかった世界ジュニアにようやく出られるんです。去年は3アクセルをちゃんと降りられていたんですけれども全日本で上手く決まらず、代表の座を逃してしまって。今年ようやく手に入れた最初で最後のチャンスなんですね、彼はもう大学生でジュニアのラストシーズンなので。今季は3アクセルをSPで1本、FSで2本入れる強気のジャンプ構成になっています。是非世界ジュニアで全てを決めてほしいです。それから、最初で最後の舞台を楽しんで欲しいな、と願っています。活躍すればもちろん世界ランキングのポイントにもなりますので、来季のためにも。彼にとって次に繋げてゆく大会になるといいなと思います。
☞ 2015年サマーカップ 白岩優奈・木原万莉子・上野沙耶・佐藤未生・友野一希・山隈太一郎・中村優・川原星・吉野晃平選手インタビュー
【宮田大地選手】全日本選手権10位・法政大学 世界ジュニア出場
PP: SP『シンドラーのリスト』を見て、柔らかい表現が巧い選手だと思いました。
AS: 一目見て、まず姿勢が良いと思いました。男子選手は猫背⋯じゃないんですけど、惜しい姿勢になることが多いです。でも大地くんはすっごく姿勢が良いので、ポーズを取った時の見栄えが綺麗だなと思います。あと、トリプル+トリプルがとても堅く、外さない感じがします。
AS: 彼も最初で最後の世界ジュニアになると思います。世界ジュニアでは優くん同様に楽しんでほしいです。彼は3アクセルではなく、3ルッツ+3トゥループを武器にしているので、それを是非バシッと決めて頂いて。また、凄く背が高くて、大きな良い表現だなと思っているので、それを存分に魅せて来てほしいなと願っています。
【川原星選手】全日本選手権12位・福岡大学
AS: 昨季は腰を痛めていました。ジュニアラストシーズンだったんですけれども、彼が思い描いていたようにいかなくて悔しかったと思うんです。でも今はその怪我をきっちり治してきて。以前もジャンプが良かったんですけど、その質がとても上がったと感じました。
PP: 今季、シニアのグランプリシリーズ(スケートカナダ)も良いデビューの仕方だったと思うんですよ。堂々とした演技でした。とても高貴な雰囲気がある選手ですよね。
AS: グランプリシリーズは世界ランクが上じゃないと出られない試合なので、怪我で出られなかった時期を経ても、ジュニア時代のポイントだったり、積み重ねて来たものがあったんだと思います。
AS: 4回転も跳んでいた記憶があるので、ジャンプも腰を痛める前のものまで戻して、是非ここから世界選手権代表の座を狙いに行ってほしいなと思います。
☞ 2015年サマーカップ 白岩優奈・木原万莉子・上野沙耶・佐藤未生・友野一希・山隈太一郎・中村優・川原星・吉野晃平選手インタビュー
【鈴木潤選手】全日本選手権13位・北海道大学
PP: 東日本2位、北海道の選手で、この全日本は地元開催なので思い入れが強かったでしょうね。
AS: お名前は伺っていたのですが演技を拝見する機会がなくて、インカレの時に初めてちゃんと観られて。3アクセルまで持っていて凄いなぁと思ったのですが、後で聞いた話によると、北海道大学は国立で⋯勉強のためにスケートを休んでいた時期もあったそうで。それでここまで戻って来るというのは、凄く努力されたんだろうなぁと思います。3アクセルを跳ぶ選手は⋯全日本以外の国内大会ではまだ多くはないので、ブランクがあってもそのレベルまで戻して来られたのは、素晴らしいと思います。
【佐藤洸彬選手】全日本選手権18位・岩手大学
PP: 去年の全日本では新人賞を獲得された選手ですね。
AS: 彼は去年世界ジュニアに行ってて。3アクセルが堅かったんですけど、今季はジャンプの調子が合わなかった試合が多かったように見えました。でも彼は「魅せる」力を凄く持っているので。
PP: 踊ること大っ好きみたいな。
AS: SPも「これは表現難しい」みたいな⋯(笑)
PP: インド舞踊のような⋯不可思議な⋯(笑) しかも似合っていますからね、衣装込みで。
AS: そうですそうです。
PP: ドリーム・オン・アイス2015(6月)を観に行って、エキシビションの『ボレロ』にもビックリしました。度肝を抜かれました。真面目なボレロが始まるのかと思ったら、「エッ!?エエッ!?」みたいな面白い展開で(笑)
AS: (笑)
PP: きっと真面目に踊っても上手なんだと思うんですけど、エンタテイメント性豊かな選手ですよね。
AS: はい、なのでこう⋯友野くん(#3ジュニア・高校生選手編に登場)も凄く踊るんですけど、また違ったタイプの踊れる選手で、楽しみです。
【吉野晃平選手】全日本選手権19位・関西大学
PP: 亜紀コーチの生徒さんで、SP『A Thousand Years』もFS『ラスト・サムライ』もカッコ良いです。全日本SPはステップがレベル4で。
AS: 本人が「レベル4出てたー」って言ってました。
PP: 良かったなぁ⋯!と思って。気持ちを込めたステップが印象的ですよね。
AS: そう。そして今年も彼は、SPもFSも自分で曲を編集して来たんですよ。「これ滑りたいー」って。
PP: ソフトを使って切り貼り、みたいな作業を?
AS: どうやってるんですかね?毎年彼は自分で曲を持って来るので。
PP: へぇ~~っ!音楽、凝られてるんですね。
AS: 凝ってるのか(笑)、結構こだわりを持ってますね。彼は来年が4回生で、引退するのか⋯分からないですけど、節目の年なので。
PP: 進路はこれから決められるんですね。
AS: はい。⋯彼、衣装のズボンを自分で縫ったらしいです(笑)
PP: 破れてしまったんですか(笑)?
AS: いえ、「衣装作って来たー」とか言って(笑)
PP: !?ええーー!?つくっ⋯凄い!?
AS: 私も、「ええっ!?」とか言って(笑) なんか、ズボンをちくちく縫ったらしくて。「しゃべっていい?」って聞いたら、「いいよー」って言ってました(笑)
PP: そうなんですか(笑)!?そういったお話嬉しいです、門外不出の(笑)
AS: (笑)
PP: ズボン制作、一からですか?
AS: たぶん⋯(笑)
PP: 裁縫のセンスも凄いんですね。
AS: 結構、衣装のデザインとかも好きで。
PP: 衣装いつもお洒落だなぁと思って。『仮面の男』もカッコ良かったです。
AS: そうですそうです。ホント、こだわってますね、彼は。
PP: 美的センスがあるんですね。
AS: そうですね、確かに(笑)
PP: SPでの柔らかい表現もスケートファンの間で評判が凄く良いです。
AS: 曲も聴き込みますし、「もっと自分で振付してもいいんじゃないかなぁ⋯」というぐらい、感性を持ってるんですよ。いつも振付師さんにお願いするんですけど、「自分で作ってみても絶対面白いのになぁ⋯」って思いながら。
PP: 是非それ、勧めてみてあげて下さい。自作プロ観てみたいですねぇ⋯。
AS: 「関関戦(関西学院大学 VS 関西大学)」という試合があるんですけど、そこでは自分で作ったプログラムをやったりとか。何もかかってない大会なので。
PP: ご自分で作られる選手ってやっぱり魅力的ですし、どんどん挑戦して頂きたいなあと思います⋯お伝え下さい(笑)
AS: 是非(笑)
☞ 2015年サマーカップ 白岩優奈・木原万莉子・上野沙耶・佐藤未生・友野一希・山隈太一郎・中村優・川原星・吉野晃平選手インタビュー
【湯浅諒一選手】全日本選手権28位・関西大学
PP: 彼も亜紀コーチの生徒さんですね。全日本はFS進出までもう少しでした。
AS: ジャンプがハマればすっごく良いんですよ!全日本の3日前ぐらいに、練習中にジャンプがすっぽ抜けてしまって。ループジャンプを踏み込んだ時に凄いコケ方をしたんです。それで恐々行ってしまったんですね。慎重になって回避したことで⋯より慎重になってしまって。出来はノーミスで良かったんですけれど、得点が伸びず⋯点が低いジャンプを2つ跳んだので。やっぱりルッツとかとは点数の差が⋯。
PP: ミスのない素晴らしい演技をしても、高得点のジャンプが入ってる選手の方が上に行くことがありますから⋯。
AS: そうなんですよ⋯。ジャンプさえ変えていれば、点数的には1点くらいしかないので⋯。
PP: 本当ですね、FSに進んだ選手から約2点以内に皆収まっていますね。惜しかったですね⋯。この次に、悔しさはぶつけてほしいなと思います。
AS: ぶつけて行ってほしいです。
【杉中健人選手】関西学院大学
PP: インカレに出場されて19位。スケートファンに愛されている選手です。3アクセルに全てをかけているという(笑) 彼の演技の時、スケーター仲間からの声援が凄いですよね。
AS: よくご存知で(笑) 仰る通りです。まず、彼は関西学院大学を一般入試で入ってるんですよ。その時点ぐらいまでは、本当に3アクセルだけにこだわりがあったんですけど、ようやくスピンとかステップとかきちんとしないと点数が伸びないんだということに気付かれたみたいで(笑)
PP: FS『リバーダンス』、盛り上がりますよね。
AS: 結構柔らかい表現が苦手⋯に見えるので、『リバーダンス』の選曲は凄く良かったなと思います。ビシッ、バシッという動きが得意なので。ステップ、力強い感じで盛り上がってました。
PP: 特徴を上手に使ったプログラムですね。
AS: そうですね。大学生くらいになると、苦手なことを伸ばすより、得意なことをより伸ばして、苦手なのを隠した方が。
PP: マット・サボイの『弦楽器のためのアダージオ』など、短所を上手くカバーした名プロもありますもんね。ひとつの巧い戦い方、ですね。
【亜紀ちゃんとたかちゃん】
15-16 season 亜紀先生のフィギュアスケート便り|#2 シニア・大学生選手 3月16日追記
AS: 澤田亜紀コーチ
PP: インタビュー/テキスト Pigeon Post 島津愛子
PP: 亜紀先生の同期の小塚崇彦選手が、昨日(3月15日)引退を発表されました。
AS: まずは「お疲れさまでした」と言いたいです。
PP: 小塚選手との思い出についてお願いします。
AS: 私が小学校5年生の時の海外遠征で初めてたかちゃんと出会いました。その時は遊戯王かポケモンかどっちか忘れましたけど、カードを大量に持って来ていましたね(笑)
PP: 心の支えだったのでしょうね(笑)
AS: その試合は武田奈也ちゃん・安藤美姫ちゃん・高橋大(大輔)ちゃん・鈴木明子ちゃん、と大勢が派遣されていたので皆で仲良くなった感じです。私が大学1年生の時のイタリアの合宿でも一緒になったんですけど、今度はWiiを持って来てました(笑)
PP: 8シーズン後も変わらず(笑)
AS: 部屋でWiiをしました(笑) 彼は合宿ごとに何か持っていて、その2つはインパクトがありましたね(笑) 試合ごとに⋯スケートに関係ないものを一番持って来ているのがたかちゃんでした(笑) それを皆で使うんですけど(笑)
PP: 気の利いたパーティー係みたいな(笑)
PP: 14年の亜紀先生の便りでは「彼は身体能力が高い」と伺いました。そのエピソードもお願いします。
AS: 京都で夏の大会があった時、会場の裏が広くてアップ出来るようになっていたんですけど、そこでたかちゃんは球乗りをしていましたね(笑) サッカーボールに普通に乗れるんですよ。バランスボールにも乗れるそうです。
PP: 小塚選手はいつの取材でも自然体というか、いつも同じ自分でいられる方だなと思っているのですが、普段仲間内ではどのような方ですか?取材ではよく話される選手でした。
AS: よく喋ります(笑) 一人っ子っていうのもあると思うんですけど。
PP: あ、じゃあ取材の時と普段も変わりないんですね(笑)
AS: いつもマイペースですね。
AS: 彼の大学院の修論は「ルッツとフリップ」がテーマで、大学の卒論は私もですけど全国中のスケーターが協力したと思います(笑) アンケートで垂直跳びをしました。「陸上のジャンプ力と氷上のジャンプ力の相関性」を研究していましたね。
AS: 競技人生の後半は怪我で難しかったと思うんですけど、その経験が今後の人生の力になります。
PP: 亜紀さん同様、引退後は社会人になられるとのことですが。
AS: 高校卒業後からトヨタ自動車さんに所属して、「社会人歴」は彼の方が長いんですよ(亜紀さんはコナミスポーツクラブ勤続年数2年)。たかちゃんの一番の強みは、スケートをやって培ってきた全国的な人脈だと思うので、それを活かして頑張ってほしいです。
PP: 御本人がもう昨日の段階で心に残る試合をHPで伝えられていたので、 ☞ 小塚崇彦選手オフィシャルWEBサイト
AS: へえ!
PP: そうなんです、去り際まで気の利いた対応というか!10年バンクーバー五輪、11年モスクワワールドの銀メダル、10年全日本優勝⋯14年全日本FS『Io ci saro(ここにいるよ)』は別の取材でも競技人生のベスト演技として挙げられていました。
AS: あれは⋯よかったです。
PP: 亜紀先生には、「小塚崇彦選手のこのプログラム・この技術を見てほしい」みたいな演目をお願いします。
AS: スケーティングやディープエッジやイーグルとかがよく挙げられると思うんですけど⋯私はエキシビションの『Car Wash』(2004-06)が好きで。モップをかけたり、帽子をエッジで拾い上げたり、おもしろい動きが振付に入っています。スケーティング技術に加えて、「サッカーボールも乗りこなす」たかちゃんのめっちゃ器用な面が出ていたので、是非見て頂きたいです。
【笹原景一郎選手】全日本選手権26位・同志社大学
15-16 season 亜紀先生のフィギュアスケート便り|#2 シニア・大学生選手 3月16日追記
AS: 澤田亜紀コーチ
PP: インタビュー/テキスト Pigeon Post 宇佐見咲子
AS: 前回に続き、今回も全日本に出場しました。景ちゃんは一番最初は京都で練習していたので、私も知っていて。ずっと近畿の中でとても有名な選手でした。ただ、大事な試合でミスをしてしまうことが多くて、凄く悔しい思いを最もしてきた選手かもしれないと思うんです。
PP: 綺麗で丁寧な表現が印象的ですね。
AS: はい。調子の良い時には、とてもはまったすっごく大きなジャンプを⋯「THE 男の子!!」みたいな感じの元気なジャンプを跳びます(笑)
PP: 全日本はフリー進出まで0.26点差で惜しかったですね。
AS: 今大会のレベルが高くて⋯。ジャンプの成否が一番点数に影響するんですけれども、表現の部分などまだまだ伸びしろがあると思うので、是非そのあたりもさらに磨いてもらって、来年の全日本ではフリーの好演技も観たいなと思います。
PP: 近畿ブロック(3位)の演技がすごく良かったんですよ。
AS: そうでしたね。大学に上がって、環境も変わって。大学に入ると、「あと何シーズン出来るか?」とか、競技人生の終わりが目の前に迫ったりするんですね。気持ちも一新される選手が多いんですけど、きっと彼もそうだったんじゃないかな?と勝手に推測してます。
PP: 全日本に出たいという気持ちがとても伝わるシーズンだったのではないでしょうか。近畿ブロックで「3位」とアナウンスされた時、場内に歓声が湧き上がりました。
AS: ファンの方はずっとご存知で応援されているので、盛り上がりましたね。
☞ #4 世界選手権男子代表選手 ~五輪への折り返し地点「ボストンワールド」でのピョンチャンに向けての確認事項~ (on J SPORTS)
☞ #4 世界選手権女子代表選手 ~五輪への折り返し地点「ボストンワールド」でのピョンチャンに向けての確認事項~ (on J SPORTS)
☞ エアフィギュアスケート*澤田亜紀先生のレッスン#1ジャンプ [Aki's Summer Course on Pigeon Post #1 Jumps] 2015年7月
☞ 2014年全日本選手権事前特集 澤田亜紀先生の全日本便りでは「(ルール変更により)スポーツファンにとってフィギュアスケートがもっとおもしろくなった点」と男子女子の出場選手について解説して頂きました。
☞ 澤田亜紀さん 2013年3月のインタビュー [Aki KEEPs CALM AND PUTs A SMILE ON]