
Pigeon Post - SAKIKO USAMI 宇佐見咲子: projection, interview, text, illustration|AIKO SHIMAZU 島津愛子: projection, text, edit, design
posted on March 16, 2016
関西大学で指導されている澤田亜紀さんに、全日本や国内試合の総評、選手紹介、シーズン後半や今後に向けてのお話を伺いました。#3の今回はジュニア・高校生選手についてお送りします。世界選手権代表選手はのちほど特集致します。
AS: 澤田亜紀コーチ
PP: インタビュー/テキスト Pigeon Post 宇佐見咲子
男子編
【山本草太選手】全日本選手権6位・愛知みずほ大瑞穂高校 世界ジュニア代表選出(欠場)
PP: 直前の右足首骨折で、世界ジュニアは欠場となってしまいました。
AS: ここまでの大きな国際試合で、2014年ジュニアグランプリファイナル2位・2015年世界ジュニア3位・2015年ジュニアグランプリファイナル3位と来ていましたので、「今年こそジュニアのチャンピオンに」と意気込んで臨んでいたと思います。全日本ジュニア・全日本に際しても、チャレンジする、難易度を上げたプログラムになってきていたので、それをこの数ヶ月間できっとものにしていたと思うのですが⋯。
PP: フリーで4回転を2本。おそらくはミスも覚悟した構成で⋯。
AS: 試合で挑戦して得ることって結構あるんですよ。新しい技を試してゆくこともそうですし、試合の緊張感を経験したりとか。普段の練習通りに行かないというのが試合なので。国内の大きな試合で難易度を上げて挑戦して得てきたものを、この世界ジュニアで見せたかったと思います。これからの試合で見せてくれると期待しています。
PP: スケーティングも上手な選手ですね。全日本ジュニアで優勝し世界ジュニア出場が内定していた全日本では、挑戦のジャンプ構成で失敗もあったんですけれども、スケーティングの良い選手は何があってもスピードが落ちないので、ジャンプにミスがあっても悪い印象が残らないですよね。
AS: 転倒すると体力が奪われるのでスピードが落ちてくる選手が多いんですけど、最後までギューッとスピード出したままだったので。4回転はもう少し自信がつけばいいんじゃないかと思います。「跳べるから4回転」じゃなくて、「僕は跳ぶんだ!」みたいな感じになれば。
AS: 世界ジュニア優勝に向けてハードな練習を経て、この試合直前での怪我で、本人が一番ショックで一番悔しいと思います⋯本当にかける言葉も難しいのですが、来季に懸けるべく、今は男子日本代表の3人に任せて、治療に専念してほしいです。
☞ 2015年サマーカップ【チーム長久保】本郷理華・新田谷凜・山本草太選手インタビュー
【島田高志郎選手】全日本選手権11位・就実学園
PP: 今回の全日本FSで、3フリップのエッジエラーを除き全てのエレメンツでミスのない演技でした。
AS: 高志郎くんは何回か一緒に夏合宿をしていたので、ずっと存在を知っていて。凄く真面目な男の子です。指導を受けたことを何でも吸収してやってくれる、というイメージがあります。
PP: まっすぐな表現から伝わるような気がします。
AS: 例えばジャンプの練習でも、何も嫌がらずに。男の子たちって、「じゃあ次はあれやって、それやって、これやって」と指示すると、「ええっ、マジかよ!」みたいな(笑)、声に出さなくてもそんな顔をする選手もいるんですけど、彼は「はい!やります!」と笑顔になってサッと練習しに行く、みたいな。とっても素直な選手です。
PP: 前向きな選手なんですね。私は2013年の全日本ジュニアで初めて生で演技を拝見したんですけど、あの時はまだとってもちっちゃくて。
AS: ノービスの推薦選手で出場していた時ですね。ノービスからの推薦だと、ジュニア選手権で自分の力がどれぐらいのものか試せますから、きっとそれが彼のモチベーションになったと思うんです。
PP: ノービスとは思えないような、のびのびした演技でした。あの頃もう既に「自分の魅せ方」を持っている選手でしたね。
AS: そうですね、大きく演技することを恥ずかしがらないというか。
PP: 演技中、とても大きく見えてました。演技後のキス&クライで初めて「あっ、ちっちゃかったんだ!」と思い出すような。ジュニア選手はキスクラに座っても柵から上半身が見えるんですけど、あの時は柵からまだ頭しか見えなくて。皆、「かわいい!」って言ってましたね(笑) 今季はずいぶん背も伸びて。ひとまわりふたまわり大きくなって頼もしい選手になられました。
AS: そうですね、トレーニングなどもして身体も作ってきたと思いますし。「魅せ方」にも、彼自身が研究しているんだろうなという感じが窺えて。どう動けば一番体が大きく見えるか、彼自身が一番分かっているんじゃないかなと思います。FS『チャップリン』は映画も見て研究したみたいで。得たことを全部アウトプット出来ていて素晴らしいと思います。
PP: 解釈力というのでしょうか、凄いと思います。今季のエキシビションはセクシーで妖しいプログラムで(笑)、スケートファン絶賛でした。
AS: (笑) 色んなことに挑戦出来る時期なので、ジャンルを固定せず、多彩にやってほしいと思います。彼の見所は、表現面に加えて、ジャンプですね。表現するということに集中すると、ジャンプが途切れ途切れになると言いますか、ジャンプの動作のリズムが合わなくなったりするんですけれど、彼にはそういう部分があまり見えないので。ジャンプとジャンプの間の練習も凄くしているんでしょうね。まだ3アクセルを跳んでいなかったと思うので、3アクセルを身に付ければ鬼に金棒だと思います。
【須本光希選手】全日本選手権14位・上野芝スケートクラブ
PP: 大阪拠点で、急激に伸びている選手ですね。
AS: 去年の全中(全国中学校スケート大会)の時に初めてちゃんと「須本くん」と意識して観られて。その時、3ルッツ+3トゥループを跳んでいたんですよ。今季はジュニアグランプリシリーズに選ばれて色々経験して、きっと色々吸収してきたんじゃないかなと。
PP: 羽生選手を尊敬しているとのことで、雰囲気は似ていますでしょうか?
AS: そうですね⋯周りは皆「似てる似てる」と言うんですけど、私はそんなに似てはいないかなぁと。意識してるんだろうな、とはちょっと分かりますが。
PP: 目標の選手がいた方が練習しやすい部分もあるようにも思えるので、いいのかもしれないですね。
AS: そうですね。
【友野一希選手】全日本選手権16位・浪速高校スケート部 世界ジュニア出場
PP: 欠場の山本選手に替わって世界ジュニアに出場する、全日本ジュニア2位の選手です。踊りのセンスが凄いですよね。4サルコウと3アクセルがきちっと入るようになれば鬼に金棒ですね。
AS: もう3アクセルは、去年に比べると堅くなっているので。それを自信に頑張ってほしいですね。4サルコウは成功・失敗の両方を試合で観ましたが、4回転にチャレンジするジュニア選手はあまりいないので、是非果敢にチャレンジしてほしいです!ここからまだ伸びしろがたくさんある選手です。
PP: インド舞踊の動きとか「どうやって研究するんだろう!?」と。振付の先生に教えてもらっただけではあんなに出来ないだろうなと思うんですけど。凄いセンスですよねぇ⋯。
AS: その上、4分半なら4分半、ずっと動ける体力を持っています。まだ高校生なので、これからもっともっと成長するんじゃないかと楽しみにしています。
AS: 来季に向けて取り組んでいたところ急遽世界ジュニア出場が決まり、最後のもう1試合となります。今出来るベストを出して、草太くんには凄く申し訳ないんですけど⋯これを「チャンス」だと思って頑張ってほしいです。世界ランキングのポイントも大きく上げられる大会なので、来季以降世界の舞台で活躍するためにチャンスを活かしてほしいです。
PP: このような直前での出場決定というのは前例がないことでしょうか?
AS: そうですね⋯補欠には入っているので、練習はしています。ただ、代表辞退の場合はもっと早いタイミングで知らされるので、怪我による大会入り直前の交替は想定していなかったと思います。友野くんが出場しなければ、(中村)優くんと(宮田)大地くんの2人での枠取りとなり、2人で「13位以内」に入らないといけない(2人以上出場する場合、来季の出場枠「3」の条件は上位2選手の合計順位が13位以内)、と凄くプレッシャーもかかったと思います。友野くんの出場で2人も心強いと思うので、3人で力を合わせて戦ってほしいです。
☞ 2015年サマーカップ 白岩優奈・木原万莉子・上野沙耶・佐藤未生・友野一希・山隈太一郎・中村優・川原星・吉野晃平選手インタビュー
【小田尚輝選手】全日本選手権21位・岡山理大附高校
PP: スケーティングが綺麗で、スタイルも凄く良くて、「フィギュアスケーター」という感じの選手だと思いました。
AS: 今季3アクセルに成功して、4トゥループを武器にしています。全日本はFSで決まったんですよ。まだジュニアのうちに4回転を入れてバン!!と活躍した選手は、そんなにいないです。4回転ジャンパーとして皆さんに名前も憶えてもらえますし。
PP: 今季とても注目度が上がっていて。スケートファンの間でも「小田くんがいいですよ!」と話題になっています。
AS: ちょうど、野辺山合宿の頃に、小田くんが4回転を降りた動画を自分のSNSでUPしたみたいで。コーチの間でも話題になったんですよ。
PP: 「小田くんが跳んだ!」と(笑)
AS: 「降りたらしい!」と(笑)
PP: なかなか今まで、ジュニアで4回転を降りる選手っていなかったですし。
AS: なかなかいなかったですし、今大会の全日本でも4回転跳んだのは、最終グループの選手以外では(日野)龍樹くんと(友野)一希くんと(山本)草太くん、そして小田くんでしたね。
PP: スケーティングが伸びる選手は、助走でスピードに乗る分4回転を習得しやすい傾向にありますか?
AS: 助走のスピードもそうですし、腰の使い方・エッジの使い方の巧さとか、リンクしてる部分がひとつじゃなくて結構あると思うんです。例えば(ジャンプの準備動作になることが多い)スリーターンとかする時に無理矢理やってしまうとメリメリメリ⋯って(氷が削れて)雪が出たりするんですけど、自然な流れ方の選手はジャンプの運び方も巧くて。先日のインカレを観ていても、スケーティングが上手な選手は、もちろん転倒することはあったりしますけど、皆ジャンプの跳び方も巧いなと思ったりしました。
女子編
【樋口新葉選手】全日本選手権2位・開智日本橋学園中学校 世界ジュニア出場
PP: どんな音楽にもついて行くスピードがありますね。凄くテンポの速い曲を選んで、「絶対置いてかれないですよ!」みたいな。
AS: 確かに(笑)
PP: 昨季のSPもそうだったんですけど。あの戦略が素晴らしいなと思いますね。
AS: そうです、そして全部ジャンプを後半に持ってきていて。そういう攻める気持ちがまたいいですね。
PP: ステップで乗せておいて、後半にジャンプでさらに盛り上げるという。
AS: 今まだ中学3年で、まだまだ挑戦してゆく年齢だと思います。昨季までは普通の構成だったのを、今季はジャンプを全部後半にしたりとか。毎年色々挑戦をしながら成長してゆくんじゃないかと思います。
PP: 伸ばしたいところを伸ばしたり、どんどん挑戦していける時間がまだあると。
AS: はい。
PP: 観客をエキサイトさせる、アスリート的な魅力がありますよね。
AS: ああ、そうですね!スピードと溌剌さに見ている者皆がこう⋯入っていく、乗せられていく、みたいな。
AS: 世界ジュニア銅メダリストとして迎えた今季ですが、ジュニアグランプリファイナルに行けなかったんです。グランプリシーズって、エントリー次第で順位に影響するんですよ。強い選手が固まってしまう試合では、1位2位の勝ち点を得るのが難しくなってしまいますね。ファイナルに進めなかったのは凄く悔しかったと思うんですけども⋯。
PP: ファイナル進出どころか、てっぺんを狙える選手ですからね。
AS: でもこうして全日本で2位になり、世界ジュニアの代表になって。全中・国体と優勝して、試合ごとに良い成績も出していたと思うので、世界ジュニアでもその勢いを止めず、そのままで挑んでほしいです。
AS: 昨季の全日本ではSPで上位に入って、FSで力んでしまった印象があって。最初のジャンプで失敗してしまったんですね。その後はいつも通りの新葉ちゃんだったんですけども。プレッシャーがかかった時にこそ力まず、今回の世界ジュニアでもいつも通りにジャンプを跳べればいいなと思います。
【白岩優奈選手】全日本選手権5位・京都醍醐フィギュアスケートクラブ 世界ジュニア出場
PP: 今回の全日本、素晴らしい活躍でした。SPは第1滑走でベストな演技が出て。そして新人賞受賞ですね。キャシー・リード先生の振付作品を早くも見られたことも嬉しかったです。
AS: そうですね(笑) 優奈ちゃんは、濱田(美栄)先生のチーム(「濱田グループ」)なんですけれども、ずっと関大で見ていて。トリプル+トリプルとか普通に軽々跳ぶのに、なぜ注目されないのかなってずーっと思ってたんですよ。
PP: 10通りのトリプル+トリプルを跳べるという。
AS: (アクセル以外の)各ジャンプの後ろを3トゥループ、3ループにするということですね。本当に、練習見てて⋯なんで注目してくれないんだろうって(笑)
PP: あまり騒がれることがなかったから本当に彗星のごとく。
AS: ⋯って思っていて、今年ジュニアに上がって、ジュニアグランプリで2大会連続優勝して、ファイナルに行って。
PP: 全日本FSでは、序盤の3サルコウ+3ループで3サルコウの単独になり、終盤の3ルッツ+2トゥループ+2ループの予定のところ、リカバリーで3ルッツ+3トゥループ+2ループが決まりました。
AS: 演技後半はジャンプが1.1倍になりますし、得意だったら「入れて行こう」と。
PP: 「この降り方だったらあっちのジャンプの方がいい」とか、瞬時の判断もありますか?
AS: あります、あります!「これ付けたらコケるからやめよう」とか感覚的に。予め申請している予定要素と変わることはよくあるので。
PP: 全日本のインタビューで「練習を信じて滑り切りました」という言葉があって、「ああ、いいなぁ」と思いました。
AS: 同じ濱田先生に師事している知子ちゃんと小さい頃から一緒に練習して影響し合ってる姿も、ずっと見てるので。どんどん伸びてほしいです。
AS: 先月のユースオリンピックではメダルが獲れなかったんです(4位)。練習は淡々とこなしている印象なのですけれども、きっと悔しい思いを抱いてるはずなので、その気持ちを是非世界ジュニアにぶつけてもらえたらと思います。おそらく怪我もしていないと思いますので、一番攻めに出られる最高難度で挑むと思います。
☞ 2015年サマーカップ 白岩優奈・木原万莉子・上野沙耶・佐藤未生・友野一希・山隈太一郎・中村優・川原星・吉野晃平選手インタビュー
【永井優香選手】全日本選手権7位・駒場学園高校
AS: 全日本は受け持ちの選手の出番の都合で演技が観られなかったんですけども、インターハイは拝見しました。3ルッツ+3トゥループが彼女の強みなのですが、最近ジャンプでミスしてしまうことが多くて。彼女自身考えることもあると思うんですけれど、これを乗り越えた先に、凄く成長した彼女の姿がきっとあると思うので。今はつらいと思いますけど、壁を乗り越えてほしいです。
PP: シーズン前にコーチの関先生も、「昨季は“まとめること”を目標にしましたが、今季は3アクセルの練習や3ルッツを後半に持ってきたりすることで、それが難しくなる」「我慢の年」と言われていました。
PP: 手足が長くて、気品の漂う雰囲気も素敵な選手ですよね。
AS: 凄く見栄えの良い選手なので。
PP: SP『蝶々婦人』も、素晴らしくエレガントで。10代の少女が演じているとは思えないようなしっとりした演技ですね。
AS: はい、本当に。まだ高校生なんですけど、大人の雰囲気が作れているなと思います。
PP: リカバリーを行う冷静さもあって、スピンとステップもとても綺麗なんですよね。
AS: そうです、ポジションのひとつひとつがとっても美しいので。「綺麗に見えるポイント」というものを掴んでいるんじゃないかなと思います。
PP: 衣装もいつも素敵ですね。昨季の赤のワンショルダーの衣装も、ディテールが細やかで、真っ赤なのにとても品が出ていて。
AS: 彼女によく似合っていましたね。
☞ 永井優香選手 2015年8月のインタビュー (on J SPORTS)
【新田谷凜選手】全日本選手権8位・愛知みずほ大瑞穂高校
PP: 全日本ジュニアは4位でした。
AS: 凜ちゃんは今季世界ジュニアを狙っていたと思うんです。世界ジュニアを狙っている選手は皆全日本ジュニアに出ていて、(世界ジュニアの出場枠が「3」のところ)そこで「4位」と良かったんですけども、全日本の結果で世界ジュニアの出場権を逃してしまい⋯。本人も、今季で一番悔しい思いをしているのではないでしょうか⋯。
PP: シニア選手と混合の全日本で「8位」って凄い順位なんですけども⋯。今回はジュニア選手がたくさん上位入賞したので。
AS: 本当に、8位というと素晴らしい順位なんですけども。色んな選考基準があった中で世界ジュニアに出られないというのは、とても悔しいことだったと思うんです。でも、今季は本番においてとても強くなってきているので。本番で色々成し遂げたことに自信を持って、来季また頑張ってほしいなと期待しています。
PP: SPは後半にコンビネーションジャンプを構成していますね。
AS: 自信があるからこそだと思います。FSは冒頭に3連続を入れて手堅く構成したり、よく練られていますね。
PP: FS『ロミオとジュリエット』では、この演目ではあまり使われないグリーンの衣装で。それも強く印象に残ったので良かったと思うんです。グリーンはお母様のチョイスとのことです。
AS: 綺麗でしたね。
PP: スピードがある中で、表現力も豊かな選手ですね。
AS: 柔らかい表現も良いなぁというイメージがあるので、ジャンプだけでなくその表現面もより一層磨きをかけて、来季また飛躍した姿が見たいです。
PP: 「来季はシニアに移行したい」と。
AS: そうですね、高校生だったらもう「シニアに行きたい」と思うかもしれませんね。
PP: 選手は「早くシニアに行きたい」と考えるものなのでしょうか?「ギリギリまで残りたい」というよりも。
AS: トップ選手になると、世界ランクとの兼ね合いもシニア移行の基準になります。ジュニアに留まっていれば海外試合に行けたのに、シニアに上がると行けない⋯となると凄く悲しいですけれど、世界ランクが取れていたりして「シニアでもやって行ける」という自信があれば、皆行きたいかなと思いますね。でも、各々作戦があるので、一概には「早く行きたい傾向」とは言えません。
☞ 2015年サマーカップ【チーム長久保】本郷理華・新田谷凜・山本草太選手インタビュー
【本田真凜選手】全日本選手権9位・関西大学中・高スケート部 世界ジュニア出場
PP: 全日本は、ちょっとミスが出てしまってもったいなかったと思うんですけども。SP『Spring Sonata No. 5』は振付のマリナ・ズエワさんが「ぴったりの選手が現れるまで取っておいた」作品とのことで。凄いですよね、ズエワさんが大事に温められていた作品を「今出すべきだ」と感じさせた選手、というのが。
AS: へえーっ、そうなんですね!私が見ている限りでは、真凜ちゃんは頭で考えて跳ぶんじゃなくて、感覚的に優れているというか。本能的なものでジャンプしたり、踊ったりしていると思います。
PP: 自然に、演技の中でのポジションが全部美しいですし、チャーミング⋯本当に「魅せる」ことが上手ですよね。小学校高学年頃の関西大学フィギュアスケートエキシビションでの演技を拝見したことがあります。あの時からすでに大人のような演技でした。そしてその後の近畿ブロックで、ノービスなのに(フリー)100点越えっていう。
AS: そうです(笑) ご存知の通り家族構成も凄いので。お兄ちゃん(本田太一選手)を見て学んだりとか、(本田望結選手)を見て学んだりとか。
PP: 太一選手も、演技の上品な良い選手ですもんね。やっぱり身近にライバル・戦友がいると伸びることが多いんですね。
AS: そうだと思います!
AS: 今回の世界ジュニアに出場する3選手とも⋯全員悔しい思いをしたことのあるシーズンになっているんですけども。真凜ちゃんは、ジュニアグランプリファイナル3位という好成績ながら、全日本では結果が出ず、それからユースオリンピックには出られなかったりとか⋯。この世界ジュニアに向けては、彼女自身色々思うことがあると想います。練習でも、彼女はあまり「悔しい」という部分を表に出さないんです。内に秘めて燃えているのが、ひしひしと伝わります。真凜ちゃんは優奈ちゃんと同じく、初めての世界ジュニアになりますので、楽しみつつ、出来ることを最大限にやって来てもらいたいなと思います。
【木原万莉子選手】全日本選手権10位・京都醍醐フィギュアスケートクラブ
PP: シニアに上がったばかりの選手で今季はNHK杯出場と、とても期待を寄せられていますね。
AS: そうですね。小さい頃から、(同じ「濱田グループ」の)「知子と万莉子」で、仲良くライバルでやって来たんですけど、彼女は身体を痛めて滑れない時期があって。きっともどかしいところもあったと思うんです⋯。
PP: 長いブランクを経てまたトップに戻って来られたのは、凄い努力があったんでしょうね。
AS: それに、本当に気持ちが強かったんだと思います。
PP: 演技にもそれが表れてると思うんですけども、SP『さくらさくら』は、序盤はたおやかで繊細な優しい感じで始まって、終盤は重厚でスピード上がって凄味が出て来るじゃないですか。人生が表現されていると。
AS: 確かに。SPでは、日舞も練習に行ったりして勉強をしたみたいです。
PP: 『さくらさくら』の衣装も、色、フォルム、飾り、全て素晴らしいですよね。FS『ブラック・スワン』も良い作品だと思います。
AS: 『ブラック・スワン』は彼女の性格に凄く合ってると思います。「攻めて行く」みたいな感じの。とっても似合っています。
☞ 2015年サマーカップ 白岩優奈・木原万莉子・上野沙耶・佐藤未生・友野一希・山隈太一郎・中村優・川原星・吉野晃平選手インタビュー
【横井ゆは菜選手】全日本選手権11位・邦和スポーツランド
PP: SP『サウンド・オブ・ミュージック』は、歌いながらステップを踏んでゆくという。
AS: 歌ってるんですか(笑)!
PP: そう、ジャッジの前で歌いながら(笑)!
AS: 本当に好きな曲なんじゃないかなと思って。髪型も凝っていましたね。
PP: 「表情が武器です」と。「人を楽しませるだけでなく、引き込みたい」と、インタビューで仰ってましたね。個性的な選手の出現だなと。
AS: 彼女は鈴木明子ちゃんと同じ長久保先生なので、身近な先輩を見てきて学んだことも大きいかもしれません。
PP: 「鈴木明子さんが憧れ」とのことで。FS『マラゲーニャ』は、力強く妖しい感じの表現も巧かったです。
AS: 確かに確かに。まだ「可愛らしい」という感じがあるので、ジャンプも安定していてあれだけの力量があれば、ガラリと変えてみるともっと伸びると思います。
【松田悠良選手】全日本選手権12位・中京大中京高校
PP: SP『ピアノ・レッスン』は凄く速い曲なんですよね。物悲しくて美しくて、フィギュアスケートで使いたくなる曲だと思うんですけど、速すぎて結構難しいと思うんですよ。でも、松田選手は全日本でも速いテンポに合わせて、しかも情感ある良い演技でした。
AS: 悠良ちゃんはジャンプの姿勢がとても綺麗だなと、私は思っています。
PP: 残念ながら全日本のFSではジャンプの回転不足を取られてしまって⋯でも、綺麗なんですよね。
AS: 着氷の⋯降りた後のスーーッ⋯っていう感じが凄く好きで。上品なお嬢様だ⋯と思って(笑)
PP: エレガントですね。ジャンプの回転不足が修正されれば、間違いなく上位に入って来る選手ですよね。
AS: はい、そこが大きな伸びしろだと思います。
【坂本花織選手】全日本選手権13位・神戸フィギュアスケートクラブ
PP: 去年の世界ジュニアは好演技で6位入賞でした。
AS: 花織ちゃんはユースオリンピックの頃に怪我をしていたみたいなんです(6位)。なので、シーズン後半はつらかったと思うんですけども⋯。全中でSPを拝見したんですけど、ミスが続いてしまってもったいなかったなぁと思ったので、もしミスをしてしまっても引きずらず、振り返らず切り替えていければ。イメージでは、ジャンプがとても堅い⋯つまり、安定している選手なんです。
PP: ジャンプの回転の切れ味が鋭いですよね。
AS: 「失敗しないぞ!」っていうように精神力が身体にみなぎっていて。
PP: リンクの上で、COOLな印象もあるんですよね。
AS: そうですね、表現とか見ていてもCOOLだなぁと思いますね。
PP: 落ち着いていて、若いですけど貫禄も感じます。
AS: 15歳とは思えないような雰囲気が出ています。
PP: 色んなタイプの踊りをこなされそうな感じもありますね。
AS: 昨季のFS『ロミオとジュリエット』だったり、今季のSP『マラゲーニャ』だったり、柔らかいものから力強いものまで。色んな曲にチャレンジするのにとてもいい年齢だと思うので、どんどん踊りの幅も広げていってほしいなと思います。
【磯邉ひな乃選手】全日本選手権14位・立命館宇治高校
AS: 彼女は一時教えていたことがあって、今季も一緒に合宿をしました。脚が長くてスラッとしたモデルさんみたいな体型をしていて、3ルッツ+3トゥループも跳ぶんです。今まではジャンプに回転不足があったんですけど、最近修正されてきて。
PP: これからさらに活躍されますね。
AS: そうですね、来季は大学生になるので。ジャンプも凄く跳べるんですけど、「もう少し落ち着いて」っていつも思ってしまうんです。出来ることを全部見せたいのはすっごく分かるんですけど、焦って力まないように。「もうちょっと余裕持っても大丈夫だよ!」って言ってあげたいです(笑)
【青木祐奈選手】全日本選手権16位・神奈川フィギュアスケートクラブ
PP: 3ルッツ+3ループを持つ選手ですね。
AS: ノービスの時から跳んでいましたね、彼女は。
PP: 中学2年生とは思えない表現力で。
AS: 祐奈ちゃんは真凜と同い年で、意識しながらやって来たんだと思います。スケーティングが上手なんです。この年齢でスケーティングを武器に持っていると、後々強いです。
PP: ファンの方も多いですね。不調だった全日本のFSのインタビューでは涙も見えたんですけど、顔を上げて「この舞台で学べた」と。その強さが今後繋がっていくと思います。
AS: 世界ジュニアの出場権がかかっていたので、出られないと分かっての涙もあったと思いますね。でも、まだまだここからです。若いですし、絶対に伸びると思いますので。
【加藤利緒菜選手】全日本選手権20位・長尾谷高校
PP: 昨季の全日本は7位入賞だったんですけど、今回は少し調子が悪かったみたいで⋯前年度からは順位を落としてしまった形になりました。
AS: 今季はちょっと⋯利緒菜ちゃんとしては苦しいシーズンになってしまったと思うのですが⋯。回転不足が多かったですかね⋯。でも、利緒菜ちゃんは凄い柔軟性が持ち味で。ビールマンスピンだったりとか、スパイラルだったりとか、柔軟系の技がとても得意なんです。そういう「魅せる」という部分は凄く出来ているので、そのことに自信を持って、またジャンプの成功率を上げていってほしいと思います。
【鈴木春奈選手】全日本選手権21位・日体荏原高スケート部
AS: 2011年の全日本にジュニアの推薦で出場して注目されていたんですけれども、そこから少し調子を崩して全日本に出られないシーズンが続きました。でも、ここ2シーズンは連続で全日本に帰って来ましたね。そして、佐藤信夫先生の生徒さんなので、スケーティングが綺麗です。まだ高校3年生なんですけど、とても落ち着いているんですよ。「その大人っぽい雰囲気、どこから持ってきたんですか?」みたいな(笑)
AS: 彼女は今高校3年生で、先日の国体で引退を決めました。「トレーナーを目指す」ために専門学校に入学するということで。学業専念ですね。「いつかトレーナーとしてフィギュアスケート界に貢献したい」とのことでした。
PP: 新しい道に踏み出されたのですね。
AS: まだまだやりたかった部分もあると思うんですけども。進路を考えるにあたって、「高3」というのは本当に重要な時期で⋯。
PP: 岐路ですよね。人生を大きく決める⋯。
AS: 進学することだけでも大変なのに、スケートまで、というのは本当に難しいです。寂しくなりますが、「また違う形でスケートに関われたら」という彼女の気持ちを応援したいです。
【世界ジュニアに向けて】
AS: 出場する選手たちには、メダルを是非狙ってほしいですし、そして代表選手皆で3枠を持って帰って来てほしいです。
世界ジュニアは、今までは上位争いが想像出来たんですけど、もはや表彰台の上で誰がトップに立つか全く分からない状況です。日本人の中でも誰が上に立つか全く分からない。切磋琢磨の世界で「やってみないと勝負は分からない」、そんな熱戦を見届けて頂けたらと思います!
取材後記
本当に、フィギュアスケートの世界に戻って来て下さってよかったと思う澤田亜紀コーチ。
就職されていたところチームに必要とされ、呼び戻された長光歌子コーチのお気持ちがとてもよく分かりました。
優しくて、前向きで、明るくて、楽しい、きょうだいのように慕えるコーチ。
ご自分の生徒さんだけでなく、たくさんの選手を親身に思って応援していらっしゃる。
こんな懐の深いコーチが傍にいて下さると、選手たちはとても心強いと思いました。
「子供に戻って、亜紀コーチの生徒になりたいな!」なんて、そんな風に思ってしまうインタビューでした。(宇佐見咲子)
☞ #4 世界選手権男子代表選手編 へ ~五輪への折り返し地点「ボストンワールド」でのピョンチャンに向けての確認事項~ (on J SPORTS)
☞ #4 世界選手権女子代表選手 ~五輪への折り返し地点「ボストンワールド」でのピョンチャンに向けての確認事項~ (on J SPORTS)
☞ エアフィギュアスケート*澤田亜紀先生のレッスン#1ジャンプ [Aki's Summer Course on Pigeon Post #1 Jumps] 2015年7月
☞ 2014年全日本選手権事前特集 澤田亜紀先生の全日本便りでは「(ルール変更により)スポーツファンにとってフィギュアスケートがもっとおもしろくなった点」と男子女子の出場選手について解説して頂きました。
☞ 澤田亜紀さん 2013年3月のインタビュー [Aki KEEPs CALM AND PUTs A SMILE ON]